ソリューション・ベンダーへの正しい仕事の頼み方

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2009-10-18 19:20:40

 経営トップから、よりいっそうのコスト削減を要求された。しかし、もうやることはやりつくした感がある。残るは、システム運用や保守に関わる外注費用を削るしかない。

 仕事は減らすことはできないから、業務量はそのままで、外注先に泣いてもらうしかない。あるいは、外注していた仕事を自分達で引き受けるしかないだろう。ただ、このような対策を講じても、月々のコストを一割減らすことさえ、容易なことではないだろう。 

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 使っていないサーバーやストレージの台数を、減らせないだろうか。そうすれば、保守費用が、削減できる。しかし、一体どれを減らせばいいのか。

 古いシステムは、安定して動いている。新しいシステムに移行するには、リスクが高い。仮想化という手段もある。しかし、運用管理業務の標準化が、徹底していない現状で、仮想化も容易ではない。また、サーバーの仮想化は、I/Oのボトルネックが心配だ。また、仮想マシンに割り当てるシステム資源の見積りを誤るとスループットの低下が心配される。徹底した現状調査をした上でないと効果以上にコストがかかってしまう。これでは、本末転倒ではないか。

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 新しい業務サービスを始めることになった。しかし、期限が決められている。従来の開発プロセスでは、とうてい間に合わない。しかも、こんな時期だから予算にも限りがある。

 クラウドを使えるのではないか。そんな可能性も追求してみたが、稼働率:99.9%、しかも計画停止は、含まれていない。これでは、とても使い物にならない。 

・・・ 

 情報システム部門は、少なからずこのような悩みを抱えている。 

 「何とかしなくてはならない」。しかし、その一方で、「どのような手段を講じるか」が、かわからない。 

 このジレンマを解決するため、「ソリューション・ベンダー」に相談するのも、ひとつの手段だ。では、どのように相談すればいいのだろうか。今日は、この点について、考えてみよう。 

 ポイントは、両者の役割をはっきりと自覚することだろう。 

 まず、われわれ情報システム部門は、「何とかしなくてはならない」ことの専門家集団に徹すること。 

 手段ではなく、「あるべき姿」を明確にする。どのような手段を使いたいかではなく、結果として、どうなっていたいのか。その具体的なイメージを明確に描くことだ。 

 どこまでできればいいのか。何を必達とし、どこは我慢できるのか。その優先順位を明確にする必要がある。「数値目標」も具体化する必要がある。がんばる、できるだけ・・・といったあいまいな「努力目標」ではなく、評価可能な数字も組み入れることが必要だ。 

 その一方で、ソリューション・ベンダーには、「どのような手段を講じるか」の専門家として、その役割を果たしてもらおう。

  彼らに求めるのは、結果だ。どのような手段を講じるかは、まずは任せてみる。もちろん、その手段の合理性と現実性については、厳正に評価する必要はある。しかし、こちらの思い込みや責任のない評論家やメーカーの売り文句に惑わされ、提案内容に枠をはめてしまうのは得策ではない。

  むしろ、できるだけ多くの選択肢を彼らに与え、彼らなりの最適な組み合わせの提示を求めることだ。

  RFPという手段もあるが、これはある意味、情報システム部門にとっては、大きな負担となるし、いきなり最終提案では、リスクが高い。むしろ、ソリューション・ベンダーとの交渉の過程をうまく利用してはどうだろう。 

 相手に最初から最終結論を引き出そうとしても、こちらもはっきりしていないことも多いわけだから、相手の提案に多くを期待することはできない。

  相手にいろいろと提案させることで、こちらもいろいろと気づく事もある。そして、改めて自分達の「課題」や「あるべき姿」を整理し、具体的なものに絞り込んでゆく。その結果としてのRFPのほうが、はるかに確実な成果を期待できるだろう。

  相手からの提案や情報収集を求められる過程で、彼らの力量を推し量ることもできる。 

 もし、彼らが特定の方法論に執着し、そちらに誘導するような態度をとる場合、それは、自分達の製品やサービスを売り込みたいという意向が、働いている証拠だ。こちらのベネフィットではなく、彼ら自身のベネフィットを重視している可能性がある。 

 あるいは、彼等のできることしか提案してこない場合も、結局は同じだ。一見誠実な態度のようにも見えるが、「自分達は、お客様の課題を解決できません。」と宣言しているのも同じ。これでは、大きな効果を期待することはできないだろう。 

 できること、できないことを明確にし、その上で、自分達以外も巻き込んだ「ソリューション」を提案してくれてこそ、ソリューション・ベンダーである。 

 一方、経営や業務の課題、業務プロセスについて、詳しく知りたいという態度を示している場合は、自分達には、気づかないイノベーションを期待できる。 

 彼らは、「あるべき姿」の達成にこだわりを持っている。自分達の商材を売りたいのは、当然の気持ちだが、商材ありきで、選択肢が絞られないので、より大きな価値が、期待できるだろう。 

 自分達がなかなか上司や経営者に言えないことを、彼等の口を借りて言わせてもいいだろう。大きな改革を推し進める、きっかけとなるかもしれない。

  ただし、その前提として、システム部門の当事者が、自分の業務に執着しないことだ。

  ITテクノロジーの進化は、目に見張るものがある。その結果、いままでの非常識が、常識になることもある。だから現行に執着してしまっては、その恩恵を享受できない。 

 「あるべき姿」という軸はぶらさない。しかし、「手段」については、常に柔軟な姿勢を持つ。たとえそれが、自分達の仕事なくし、役割を変えてしまうことになってもである。 

 クラウドの時代になれば、情報システム部門は、ユーザー化する。つまり、インフラ構築やシステム開発、運用に関わる技術的な役割は、相対的に低下し、業務や経営とITの橋渡しをする社内コンサルタントやコーディネーターとしての役割が増すだろう。 

 もちろんこのような役割は、今でも担っているのだが、いままで以上にその役割は大きくなる。というか、そちらの役割を高めてゆかなければ、自分達の存在意義はなくなるのだ。

  このような役割を自覚し、ソリューション・ベンダーと関わることが大切だろう。それができなければ、経営からは、いつまでも、コストセンターとしかみられない。これでは、ITを戦略的に活用し、経営や業務にイノベーションをもたらすことなどできるはずはない。

  ベンダーの窓口ではない。彼らをうまく使い、自らの能力を高めてゆく。ソリューション・ベンダーとは、そんな付き合い方をしてはいかがだろうか。

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