大騒ぎの「国際会計基準(IFRS)」とどう向き合うか

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2009-10-27 10:20:04

 いま世間では、「国際会計基準(IFRS)」という言葉が、流行である。「それは、会計システムの話しでしょ・・・」と言う人は、もはや少ないとは思うが、ならば、これにどう付き合えばいいのかとなると、諮りかねている人も、少なからずいるだろう。

 今日は、この点について、考えてみようと思う。

 「IFRSとは、何か」という話しは、別の専門家にお任せするが、以下の5点については、基本的なことなので、確認しておきたい。

  1. 国際的に用いられる会計基準であり、企業の経済実態を測る世界標準のものさし。既に世界100ヶ国で採用され、先進国では、日本と米国だけが、いまだ採用していない。
  2. 上場企業の連結決算を対象とする会計基準。単独決算や非上場企業の決算は、直接の対象にはならない。
  3. 企業活動や資産の実態について、今まで以上に高い透明性が求められる。特に利益についての考え方が、大きく変わることから、企業業績についての評価が、大きく変わることになる。
  4. 2015〜16に、日本でも適用される予定。2015年に適用されると想定すると2013には、システム対応ができていなければならない
  5. 会計基準が変わることから、社内の業務ルールも変更される。従って、会計システム以外の他の業務システムの変更は、不可避。また、会計システムについては、単独会計ならびに税務会計は、日本基準が維持されることから、IFRSのものと複数帳簿を持たなければならないなど、大幅な変更や機能の追加が求められる。

 ひとつだけ補足しておきたい。「IFRS」の狙いは、世界共通のものさしで企業の実態を公正に比較できるようにすることである。つまり、国際的な投資やM&Aといった資本の流動性を高めることに狙いがある。従って、各国の税務とは、直接には切り離されている。従って、国際比較用の「IFRS」対応帳簿と税務に対応する「国内会計基準」対応帳簿の両方を持つ必要が生じている。

 さて、予備知識は、ここまでとして、情報システム部門は、これにどう対応すべきか。

 上記に述べたとおり、「IFRS」の適用は、会計システムの変更だけでは済まされない。業務ルールの変更が、必要となるから、それに関わる他の業務システムも対応が求められる。

 例えば、売上計上は、出荷基準が認められないため、検収基準となる。そうなると、販売システムや物流システムへの入力タイミングや管理方法が変わってくるだろう。

 また、包括利益という概念が、適用される。これは、現行の純利益に加え、資産の期首、期末の損益を純利益と合算しなければならない。つまり、期首、期末の資産を時価で評価し、そのデータを管理する必要がある。そうなると、資産管理システムの管理項目や運用が、大きく変わることになるだろう。また、減価償却のルールも複雑になり、その対応も求められ。

 非上場企業であっても、親会社が、適応対象企業であれば、対応は必要だ。また、適用企業と取引のある非上場企業であっても、取引に関わるルールの変更に対応しなければならないだろう。

 下記の図をご覧いただきたい。この「IFRS」が、情報システムとどう関わるのかをまとめたものである。詳細はともかくとして、大変多岐にわたることがお分かりいただけるのではないかと思う。

 さて、これに情報システムは、どう関わるか。

 確かに、個々のシステム対応も重要である。そうでなくては、業務が回らない。しかし、それだけではなく、情報システム部門の役割を改めて見直し、「情報システムによる経営戦略への貢献」という役割を、いっそう強めてゆく機会と捉えてみてはいかがだろう。

 「IFRS」の適用は、「JSOX」以上に、影響の深さや広がりが大きい。簡単に言えば、JSOXは、いままでのルールの精緻化、厳密化であり、既存の延長線上にあった。しかし、IFRSは、いままでとは、異なるルールの適用であって、思想や戦略の転換が求められている。

 これを機会に、改めて社内の業務プロセスを見直し、IFRSの適用と共に、将来の変化にも柔軟に対応しうる戦略的な情報システムへと進化させてゆく基盤づくりに取り組んでみてはいかがだろう。こんな好機は、そうめったにおとづれるものではない。

 BPMやEAなどと、ITベンダーが、騒いでみても、それはその通りであるが、情報システム部門単独で、できることなど限られている。しかし、IFRSは、JSOX同様に、外部の強制力が働き、会社として対応せざるを得ない。

 ならば、CIOがその旗振り役となり、既存の会計システムや業務システムの対応だけにととどまらず、情報システムの戦略的な活用基盤構築の機会として、取り組んでみてはいかがだろう。

 これは、たやすいことではない。人材も育てる必要がある。しかし、じっと待っていても、人は育たない。しかし、受身の対応にとどまるのなら、求められたシステムの改修に忙殺されるだけで、戦略的な情報システム基盤という、あるべき姿への道は、遠のいてしまうだろう。

 クラウドのところで話しをしたが、情報システム部門は、いま大きな変革の時期を迎えている。その本質は、情報システム部門の戦略組織としての役割の強化だ。IFRSへの対応は、この変革を推し進める好機といえるのではないだろうか。

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