iPhoneは、なぜ最初のクラウド端末といわれるのか?

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2009-12-02 09:58:38

 「Android端末はもはや電話機ではなく「クラウド・デバイス」」という記事が、掲載されていた。一瞬「そうだよな」とも思うのだが、では、その根拠はということになると、明快に書かれていない。

 実は、クラウド・コンピューティングを知る上で、この「根拠」が、実は重要な鍵を握っている。今日は、この点を掘り下げてみよう。

 さて、答えは、とてもシンプル。「JavaScriptが快速に動くブラウザーを搭載しているから」である。プロセッサーの能力やメモリー容量が、大きくなったからだけではない。

 グーグルのCEOのエリック・シュミットが、2006年8月に、次のような話しをしている。

 「新しいコンピューティング・サービスは、どこかの雲の中にあるサーバーから始まる。PC、Mac、携帯電話など、どのようなデバイスからでも適切なアクセス手段があれば利用できる。」

 この適切なアクセス手段というのが、ブラウザーだ。つまり、ブラウザーが動くものであれば、デバイスの種類を問わないとになる。

 もうひとつ、付け加えれば、JavaScriptが、軽快に動くことが重要になる。

 グーグルは、マイクロソフトと異なり、自らクライアント・プラットフォームを持っていなかった。また、そこで動作するアプリケーションもない。従って、彼等のサービス提供手段は、ブラウザーの中に閉じ込められていた。

 ただ、ブラウザーだけとなると、その表現手段に限界がある。マイクロソフトのofficeのように、クライアントで軽快に動かすことができない。そこで、かれらが目をつけたのが、JavaScripだ。ブラウザーで動くJavaScriptを利用し、クライアント・アプリと遜色のない使い勝手を実現する。これが、Ajaxである。

 2004年、このAjaxを利用したWebアプリケーション「Google Map」をリリースした。その使い勝手の良さに驚いたのは、私だけではないだろう。

 この成功をきっかけに、グーグルは、多くのサービス、例えば、Gmail、Google Docs、Google Carenderなど、Ajaxを利用したサービスの拡大を図ってきたのである。

 JavaScripを利用したWebアプリケーションが、ローカルPCで動作するアプリケーションと勝負するとなると、JavaScriptのスピードが重要な鍵を握る。

 しかし、当時ブラウザー・シェアの90%を握るIEは、JavaScriptのスピード向上には、意欲がない。業を煮やしたグーグルは、それならばということで、JavaScriptのスピードにのみ焦点をしぼった、自前のブラウザー「Google Chrome」を2008年リリースしたのである。

 これに追従するように多くのブラウザー・ベンダーが、JavaScriptの高速さを競って、次々に最新のブラウザーをリリース。その結果、IEのシェアは、今年の9月時点で、65%程度にまで落ち込んでいる

 つまり、JavaScriptが、高速で動くブラウザーを搭載しているデバイスが、クラウド端末の条件となったのである。

 この点で見てゆくと、iPhoneは、まさに最初のモバイル・クラウド端末ということができる。

 PCで動作するブラウザーと遜色のない機能を持ち、かつJavaScriptが高速に動くSafariを搭載している。その結果、グーグルの提供するクラウド・サービス(SaaS)を快適に利用することができる。

 このアプローチは、見事に成功した。iPhoneのシェアは、スマートフォンの台数シェアでは、10%程度であるにもかかわらず、Safari on iPoneの利用シェアは、実に6割を超えているのである。

 グーグルは、この戦略をさらに推し進めようとしている。それが、Androidであり、Chrome OSである。このふたつは、JavaScriptが高速で動くChromeブラウザーに最適化されたOSである。Chrome OSにいたっては、他のアプリケーションは動かず、Chromeブラウザーしか動かない。その代わり、起動も、処理も高速である。

 「Android端末はもはや電話機ではなく「クラウド・デバイス」」という記事のタイトルは、ここに「根拠」を置いている。

 このように、インターネットにつながり、JavaScriptが快速に動くブラウザーを搭載しているデバイスがあれば、Webアプリーケションであっても、ローカル・アプリケーションと遜色のない操作感を提供できる。それは、携帯電話でも、テレビでも、PCでも、クラウド端末としての役割を果たすことになる。

 クラウドということばが、喧伝されている。しかし、その多くが、コストの削減をアピールしている。しかし、コストの削減だけが情報システム部門の仕事ではない。ユーザーのサービス・レベルを向上させることこそ、もっとも重要な役割であろう。

 クラウド・クライアントをこのような視点で捉えてみる。クラウド化を進める上で、ひとつの要件と考えてみてはいかがだろう。

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 クラウドとその周辺にある言葉の断片を拾い集めても本質は見えてきません。そこで、これらを関連付け、体系的に整理します。また、クラウド・ビジネスを考える上で、関係の深い周辺技術の動向についても詳しく解説します。
・クラウド・コンピューティング体系: 定義と課題
・クラウド時代のリッチクライアント(クラウドとAjaxの不可分な関係)
・クラウドとSOAの組み合わせがSIの今後を変える
・クラウドのアキレス腱、セキュリティ問題とは

2.ビジネスに与える影響と事業戦略について考える

 クラウドの普及が、お客様の意思決定にどのような影響を与えるのか。これに対し、私たちは、どのような対策をとるべきかを検討します。また、クラウドプレーヤー各社の動きや各種統計についても検討します。
・クラウド・ビジネスの動向を整理する
・ITビジネスへの影響と課題
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3.自社のビジネス戦略のアイデアを整理する

 1,2の知識を参考に、クラウドへの今後の取り組みや戦略について、各自、整理してみます。
・整理するためのフォームを提供
・個別のアドバイス

------- どうぞ、ご検討ください。

 

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

1件のコメント
  • foo

    iPone JavaSclipなど、綴りミスではないのかな?

    2009年12月17日

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