「プレーイング・マネージャー」という言い訳

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-01-09 13:21:46

 「あれだけ言っても、できないんですよ。だから、自分がやらなきゃならない。ほんとうに、どうしようもありません。」

 ある中堅ソリューション・ベンダーの営業課長の愚痴です。「ああ、またか・・・」と暗い気持ちになります。

 「自分がやらなければ、仕事が進まない。自分が、この会社を支えているんだ。俺がいなければ、取引はなくなる。だからプレーヤーとしてがんばらなきゃならないんです。」

 彼は、そういいたいのだと思います。

 しかし、彼の部下に言わせると、「私が担当なのに、なんでも自分で決めてきてしまって、事務処理やこまごまとした交渉ごとだけをやらせるんですよ。これじゃあ、やる気もおきませんよ。」

 そんな声も聞こえてきます。

 ひと昔前までは、「マネージャー」は、専業の管理職でよかったのです。しかし、バブルが崩壊し、リストラと称した人員整理と共に、管理職ポストも激減、組織のフラット化がすすみました。「プレーイング・マネージャー」という言葉は、そんな時代背景の中から、生まれてきたように思います。

 一方、経営側にすれば、売上げに貢献しない専業の管理職よりも、売上を上げてくれるプレーヤーのほうがありがたいわけです。だから、「プレーイング・マネージャー」という、かっこいい名称を与え、プレーヤーとして活躍してもらい、同時に「あなたは、管理職なんですよ。」と、持ち上げておく。そのほうが、都合がいいという思惑もありました。

 彼らは、営業担当者としての役割を担いつつ、管理職としての仕事も期待される。経営者にとっては、とても都合がいい。しかし、本人にとっては、実に複雑な立場に立たされているともいえるのかもしれません。 

 本来、「プレーイング・マネージャー」になるような人は、プレーヤーとして優秀だからこそ、その役を任せられるわけです。そんな彼らから部下を見ると、「どうして、そんな簡単なことができないんだ」と思えてしまう。そして、「ああ、見ていられない・・・自分がやったほうが早い」と、部下を押しのけてプレーヤーをやってしまう。そうなると、ますますプレーヤーとしての仕事が忙しくなって、部下のモチベーションを下げる。当然、部下の面倒を見る時間も、なくなってしまうのです。

 そんな悪循環を抱え込んでしまっているのが、プレーイング・マネージャーなのかもしれません。

 彼等の不幸は、マネージャーとは、何をすべきかを教えられていないことです。そもそも、マネージャーなのか、プレーヤーなのか、はっきりしないポジションですから、経営者もはっきりと、そのあたりを認識していないのかもしれません。

 確かにプレーヤーとしては、優秀だったかもしれません。しかし、マネージャーとして優秀になるための能力は、プレーヤーのそれとは違うのです。

 本人にしてみれば、マネージャーとして役割を果たしたい。それに反して、どうすればいいのか分らない。プレーイング・マネージャーは、そんなジレンマを抱えているように思います。

 「立場が、人を作る、能力を磨くものです。」。その会社の経営者は、そういうのですが、これは、しょせんきれいごとです。自分は何もせず、マネージメントの能力は、自助努力で獲得しなさいといっているに過ぎません。その一方で、数字のノルマは、「もう、マネージャーなんだから」ということで、一層厳しく求められます。

 しかし、これは、プレーイング・マネージャーにとっては、ある意味大きな救いでもあるのです。数字を達成するためには、部下に任せていられない。自分がやるしかないんですよ・・・と言い訳ができる。経営者も数字が大切ですから、それを受け入れざるを得ないのです。

 ここに両者の暗黙の了解が、出来上がります。

 人は、誰しも楽しいことをやっているほうが、気持ちがいいものです。私もそうですが、お客様と話しをし、商談を進めることは、楽しいものです。自分で、作戦を立て、提案し、交渉して契約を取る。そして、適度に息抜きもできます。

 優秀なプレーヤーであればあるほど、やり方は心得ているわけですから、マネージャーとしての仕事をするよりは、プレイヤーとして、動き回るほうが気持ちが楽なのです。
  
 一方、マネージャーは、部下が抱える案件の進捗把握、フォーキャスティング、組織としての予算達成、管理資料の作成や疲れる会議への出席、できない部下の育成などなど、なれない仕事を任されます。その結果、自分の仕事(=プレーヤーとしての仕事?)ができないという気持ちになるのでしょう。

 ますます、マネージャーとしての仕事から、気持ちが遠のいていくのです。

 自分が、マネージャーとして、育成されてないのに、何が部下の育成かと思うのですが、こんな現実は多いようです。

 こういう会社の多くが、次のような問題を抱えています。

 ・若手が、なかなか育たない。
 ・大きな数字は、特定の個人(優秀といわれるベテラン営業)に依存している。
 ・社内のローテーションがうまく進まない。

 つまり、ひとりひとりの営業力の底上げや、組織として力を発揮することができないのです。
 
 プレーイング・マネージャーが、ダメだというつもりはありません。しかし、彼に何を期待し、何をしてもらいたいのでしょうか?

 プレーヤーが優先なのでしょうか、それともマネージャーとしての仕事を優先してほしいのでしょうか?そのことをはっきりしないまま、あるときは、プレーヤーを期待し、あるときは、マネージャーを期待する。これでは、自分はどうすればいいのか不安になるばかりです。

 このような状況では、まじめな人ほど、両方を何とかしなければとがんばる。その結果、どっちつかずになり、「自分は、なんてダメなんだ・・・マネージャーとしてやっていけるんだろうか?」という不安が募る。それが、きっかけとなって、心を病む人も多いように思います。

 これは、マネージャー本人の資質ややる気の問題ではありません。多くは、経営者の責任だと思うのです。

 ・マネージャーとしての役割や心構えを徹底できていない。
 ・マネージャーとして必要な能力の育成をないがしろにしている。
 ・マネージャーの評価基準が、プレーヤーの延長線上にしかない。

 まず、第一点目は、マネージャーのあるべき姿が、示されていない、共有できていないということです。これでは、何を目標にすればいいのかがわかりません。
 
 第二点目は、育成の仕組みです。エンジニアのための技術研修は、どこも熱心です。しかし、営業や営業マネージャーの研修というものは、意外とないがしろにされている。営業マネージャーは、事務職や技術職とは、違う能力が求められます。それにもかかわらず、この点に関心を示さず、育成に関心を示さない経営者も少なくありません。

 最後は、マネージャーの評価基準を予算の達成に重きをおいている企業が少なくないということです。もちろん、数字目標の達成は、不可避ではありますが、それだけでは、不十分なのです。部下の育成や組織力の向上について、明確な達成目標を示し、それを昇進や昇給に連動させているでしょうか。

 マネージャーとして、やってもらいたいこと。例えば、数値目標が達成できる部下の能力育成。また、組織力としてチームを運営するためのプロデュース能力、顧客トップとの良好な関係の維持、効率的なリソース運用・・・そういう、マネージャーに求められる能力とでも言うか、態度とでも言うか、そういうものを明確に定義し、評価する仕組みを持つことは、とても大切なことだと思うのです。

 どうでしょうか、プレーイング・マネージャーという言葉の意味を真剣に考えてみては・・・。

 本当に力を発揮できるプレーイング・マネージャーとは、どのような人材なのでしょうか。彼らは、どんな能力を備え、コンピテンシーを持つべきなのか。

 IT業界が、大きな転換期を迎える中、マネージャーも売上げの貢献にがんばってもらいたいものです。しかし、その役割は、担当営業と同じでいいはずはありません。そこのところをちゃんと考え、彼らに示してあげることは、経営者の大切な役割だと思います。

 また、プレーイング・マネージャーも、自分の役割について考えなくてはいけません。マネージャーとして、自分は何ができて、何が足りないのか。不安を抱え込むのではなく、冷静に、客観的に自分を内省してみることが必要です。

 プレーイング・マネージャーという言い分けで、やるべきことをごまかさない。経営者も、自分自身も、その自覚を持つことが、大切ではないでしょうか。

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