リーダーシップが、あなたの部下を潰している

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-02-11 09:58:15

 100名ほどの営業を擁するあるソリューション・ベンダーで、その一割に当たる10名ほどが、メンタルな問題を抱え会社を休んでいるという話しを聞いた。この数が多いか少ないかは、なんともいえないが、昨今の営業の現場を見ていると、どこも似たり寄ったりのような気がする。むしろ、そういう人たちをしっかりと把握できているということは、立派なことだと思う。 

 「恥ずかしいこと」、「あってはいけない」が、まかり通っている多くの会社では、このような事実を埋もれさせ、分っていても分っていない振りをする。結果として、組織の活力を奪い、大きなリスクを知らず知らずのうちに溜め込んでしまっている。 

 しかし、改めて考えてみると、組織の一割が、戦力外という営業組織は、どう見てもまともとは思えない。私は、その理由のひとつに、「リーダーシップ神話」が、あるのではないかと考えている。 

 景気が上向いているときは、お客様に足を運べば、担当営業の能力に関わらず、仕事をとることができた。マネージャーは、彼らを鼓舞し、お客様に向かわせる。それが結果として数字になる。マネージャーも率先垂範を心がけ、部下の先頭に立って、商談をまとめる。リーダーとして、範を示し、部下に指示し、部下を鼓舞し、ぐいぐいと引っ張ってゆく「リーダーシップ」こそが、マネージャーに求められる能力だった。そして、それが、ちゃんと結果を伴っていた。 

 売るものが、単純だったということも、リーダーシップには、向いていた。モノが、それ自身で競争力を持ち、そのアドバンテージをしっかりと売り込む。それに関わる事務処理も、関係するヒトや組織も少なければ、営業はそれを自分だけでこなすこともできた。 

 営業の役割は、シンプルだったので、自分で何をすべきか、見える範囲にすべて収まっていた。あとは、上司の励ましと、ありがたい彼の成功体験を聞かされ、よぉーしと踏ん張ればよかったのである。 

 しかし、今はそうはゆかない。なんだかよく分らない「ソリューション」を売れといわれる。モノによる差別化が難しくなる中、モノだけではなく、サービスやサポートをお客様個別に組み合わせてゆかなければならない。その組み合わせに差別化を見出さなければ、もはや競合に勝つことはできない。 

 関わる人や組織、製品やサービスの種類も増える。関わる人や組織が増えれば、彼らとの調整や意思疎通に多くの時間を費やさなければならない。そのオーバーヘッドは、モノを売っているときとは、くらべものにならない。自分で処理できる情報量が、限界を超え、判断も容易にできないといった状況を抱えているのが、今の営業の現場であろう。彼らは、「不安」なのだ。 

 そこに今まで同様に、「リーダーシップ」を持ち出され、鼓舞されても、どうすればいいのか分らないのだから、がんばりようがない。がんばらなければ・・・でも、どうすればがんばることができるのか、それが分らない。誰も教えてくれない。そんな不安が、心を蝕んでいる。 

 また、マネージャーも過去の成功体験しかないわけだから、率先垂範もできない。彼らもリーダーシップを発揮しなければという今までの通念に支配されている。しかし、それが結果を伴わない。どうすればいいのかと、彼らもまた「不安」を抱えているのである。 

 過度な「コンプライアンス」もこの不安を増長している。「あっはならない」、「問題を起こしてはいけない」が前提のコンプライアンスは、チャレンジ精神を封印する。そして、小さな問題があっても、それを露見させず、何とか自分で始末してしまおうと、余計な心のエネルギーを消費する。それが解決できればいいのだが、そうならなければ、不安はますます大きくなり、押しつぶされてしまうほどに膨らんでしまう。当然、会社としてのビジネス・リスクも拡大する。 

 「リーダーシップ神話を捨てること。」今の時代には、それがふさわしい。リーダーシップという過去の神様を捨てて、新しい神様に乗り換えなければ、この現実を変えることはできないのではないかと思う。 

 では、その新しい神様とは何者か。「スポンサーシップ」というのは、どうだろう。 

 指示、命令、模範で部下をひっぱてゆくのではなく、「一緒になって、困り、考え、役割分担を考えてゆく」そんなスタイルである。 

 自分だけではできない、がんばっても無理、問題はあって当然。「スポンサーシップ」は、この当たり前を共有することから始まる。 

 自分だけではできない、がんばっても無理なのだから、一緒にやろう。あなたには何ができて、自分は何ができるのか。誰を巻き込み、どのように動いてもらえばいいのか。 

 「なぜやらないんだ!」ではなく、「どうすればできるだろうか?」に変えてゆくことである。 

 問題はあって当然なのだから、問題が発生したら、いや、その兆しが見えたなら、いつでも聞く耳を持つことであろう。「あってはならないから、規則や手続きでがんじがらめにする」のではなく、「問題が小さなうちに、話しがあがってくる、相談ができる部下と上司の関係」を築くことが、コンプライアンス対策のあるべき姿ではないかと思う。 

 これができなければ、気持ちは萎縮し、だれもチャレンジなどしない。いわれたことだけをやる。自主的、自発的な行動を期待しても無駄であろう。 

 ソリューション・ビジネスとは、「スポンサーシップ」という考え方なくしてうまく機能しないだろうと思う。 

 ソリューションというお客様の課題に対処する方策が多様化し、複雑化し、お客様も、その最適解が分らない。これしかないという解決策がないのである。 

 その答えを提供することが、ソリューション・ビジネスであるとすれば、売る側にも、新しいモノへのチャレンジであり、既存の能力の限界を超えるために潜在力を最大限に引き出して、新しい答えを創造しなければならない。それができなければ、お客様の満足は得られないだろうし、競合に勝つことはできない。 

 「スポンサーシップ」とは、そういう力を引き出すための基盤となるだろう。 

 「リーダーシップ」から「スポンサーシップ」へ。そろそろ、過去の常識と決別すべきではないだろうか。

  ■ 不幸な現実を真正面から受け止める勇気が必要だと思うのです

  エンジニアとして現場を歩んできた方が、「営業マネージメント」を任される。最近、そんなケースが増えているようだ。デリバリーが減りつつある中、少しでも「売り子」を増やしたい。そんな、経営者の思惑を反映してのことだろう。

 しかし、「営業という仕事」が何かを、何も教えられないままに、「営業」という仕事を任されても、どうしようもない。「お前はもうベテランだし、営業と仕事もしてきているんだから、そんなことぐらい、分っているだろう」。たぶん経営者は、そんな暗黙の了解を押し付けてくる。

 当然、 「営業マネージメント」を任された人も自負ある。そんなこと分りませんとはいえない、カッコが悪い。

 それで、つぶれてしまった人を少なからず見てきた。本当に不幸なことだと思う。 真剣に考えてみるべきではないだろうか。

 「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」は、そんな現実にも真正面から答えてゆきたいと考えています。

 詳しくは、こちらをご覧ください。  

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

1件のコメント
  • どらごん

    「問題が小さなうちに、話しがあがってくる、相談ができる部下と上司の関係」
    すごく言い考え方だと思います。リーダーシップからスポンサーシップ共感できます。
    自分は部下にそんな小さな事(問題)自分で何とか解決してみろと何度も思ってしまいます。自分はエンジニアのときそう教えられましたし、乗り越えてきました。
    でも正直しんどかったですね!本当小さな事でも相談できる上司がいれば、
    仕事って楽しくなるなと思いました。おなじ事を繰り返しては行けないと、この文章を見て気づかされました!

    2010年12月09日

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