お客様に行けないあなたへ。お客様が怖いあなたへ。

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-02-28 12:37:56

 先日、あるソリューション・ベンダーの営業オフィースに伺うと、半分以上の営業が、席を暖めているのです。事務処理が忙しいのだろうか・・・営業だから、外に出かけて何ぼのもの・・・なんて、つまらないことを言うつもりもありませんが、それにしても、ちょっと違和感を感じていました。 

 昼食時、リーダー格の営業に、そんな話しをしてみると、驚きの答えが返ってきたのです。 

 「お客様に行くのを遠慮してるんですよ。」 

 対人恐怖症でもなければ、出かけることを面倒だと考えているわけでもない。その証拠に、なにか用件があれば、直ぐにでも出かけてゆき、必要な仕事をこなしてくる。 

 「これといった用事がないときに出かけていって、お客様の仕事を邪魔することが、申し訳ないと遠慮している。そういうことではないでしょうかね。」 

 私のような図々しい営業にとっては、「お客様の仕事を邪魔(?)をするのも仕事のうち。それで、ネタを集めてくるのが営業」といった感覚があります。しかし、彼らには、この常識は、通用しないようです。 

 お客様と顔をつき合わせて、世間話をはじめる。お客様に関心のありそうな話題を提供し、お客様の反応を見ながら、話題を膨らませたり、突っ込んだり。そんな会話のやり取りに、お互いに気付きがある。それは、彼にとっても価値があること。こちらにとっても、ビジネスのきっかけになります。決して、双方にとって、無駄な時間ではないはずなのですが・・・ 

 それができない、あるいは、しようとしない。 

 「お客様のところへ出かけていって、何を話していいのか分らない。話題が広がらない、なんとなく気まずい沈黙。お客様にも無駄な時間をすごさせてしまう。それでは申し訳ない。」・・・ だから、お客様のところに行けない・・・いや、お客様に行くのが怖い。 

 どうも、そういうことのようです。 

 やさしさなのでしょうか。それとも、人とのコミュニケーションを楽しむことができないのでしょうか。なんとも、納得のいかない思いです。 

 怠けているなら、「バカヤロー」と怒鳴れば、多少なりとも効き目があります。しかし、「どうしていいのか分らない」、「怖い」と感じている相手に、「バカヤロー」は、効き目がありません。どうすればいいんだぁ・・という「不安」を与えてしまうことになります。 

 この会社は、大手の企業の子会社です。今まで、仕事は、彼らがまわしてくれました。売り込みは、必要なかったのです。大会社の子会社ですから、信用もあります。景気がいいときは、他のお客様でも、向こうから仕事の相談が来ました。彼らには、「案件を探す」必要などなかったのです。 

 親会社やお客様から与えてもらう仕事を抜かりなくこなすこと。ヒトやモノをスケジュールどおり調達し、事務処理も抜かりなく行うこと。クレームに対応し、社内や関係者を駆け回り、事態を収めること。それが、営業の仕事でした。 

 彼ら営業にとって、課題を探り、提案を仕掛け、関係者を回ってその気にさせて、プロジェクトを立ち上げるといった「売り込み」は、仕事の範疇にはなかったのかもしれません。 

 それを、景気が悪いから、仕事が減ったからという理由で、「営業なんだから、売込みをしてこい!」とマネージャーや経営者に正論を言われる。反論の余地はありません。 

 「じゃあ、どうすればいいんですか。今までやったことがないので、教えてください。」と聞いても、「自分で考えろ」ということになる。特に、ベテランはかわいそうです。プライドがありますから、カッコ悪いところは見せられません。過去の成功体験もあります。なんとかしなければともがくのですが、やり方がわかりません。「不安」がますます募ることになります。 

 教えるべき立場にあるマネージヤーや経営者にも、過去の成功体験しかありません。ですから、教えようがないのです。しかし、プライドがあります。そんなことは、いえません。だから、「オレが若い頃はなぁ・・・」という、自慢話になる。しかし、彼の若い頃と今では時代が違うので役に立たちません。その現実に目を背け、精神論だけを聞かされ、具体的な方法を教えてくれません。 

 このような話は、この会社だけのことではないようです。 

 「営業力の強化が、喫緊の課題」という、経営者は、この不景気になって、ますます増えているように思います。では、何か手を打っているのかというと、会社の現状とこれを乗り切ることの重要性を説き、あるべき姿、精神論を語り聞かせる。そして、「がんばりましょう、エイエイ・オー!」で終わるのです。 

 その話しを聞いて、現場の営業は、「そうかぁ、よーし、がんばるぞ・・・」ということになるのですが、「じゃあ、どうすれば・・・?」となる。しかし、「できないのは、自分のがんばりが足りないせいだ。もっと、がんばらなくては・・・」とこちらも精神論の域を出ない。しかし、成果は上がらない、不安になる。それが、心の問題を増やしているようにも思います。 

 どこの会社でも同じだなどと申し上げるつもりはありません。ただ、もし、あなたに心当たりがあれば、このような事実はないのかを冷静に見つめ、それを受け入れることが、必要ではないでしょうか。 

 心構えや精神力だけを頼りにするのではなく、お客様の経営や業務の内容とプロセス、ITやビジネスのトレンドや常識を学ぶ努力をしているでしょうか。お客様の心の動きを正しく理解し、話題を発展させ、課題を探る方法を身に着けなければなりません。そのためにできることは、何かを真剣に考えているでしょうか。 

 KKDという言葉があります。経験と勘と度胸です。KKDも大切ですが、それだけでは、もはや仕事にはなりません。また、過去のKKDは、今の時代には通用しないのです。 

 知識やスキルとともに、もっと大切なことを学ぶ必要があります。それは、人とコミュニケーションし、楽しむ方法です。これは、決して、相手を邪魔することではなく、信頼をはぐくみ、新たな知識や気付きを得る、お互いに価値ある時間だということです。自分は、こんな価値ある仕事をしているという自覚が必要なのです。 

 もちろん、準備は、必要です。業界やお客様の会社のこと、世間の話題や常識、自社のサービスや製品・・・しっかりと勉強するのは当たり前。そして、お客様の関心がありそうなことに当たりをつけて、話題を用意しておくことです。

  たとえ、口下手であっても、準備をすれば、何とかなるもの。そんな楽観論も、コミュニケーションを楽しむためには、必要な心構えです。 

 お客様と顔を合わせ、ただニコニコし、相槌を打つ。これでは、「いい人」だけで終わってしまいます。 

 お客様に行けないあなたへ。お客様が怖いあなたへ。自分の現実を冷静に見つめなおしてみませんか。それが、現状を変える、きっかけになるかもしれませんよ。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

4件のコメント
  • セールスマンです

    konbuさんのコメントに同感です。言いたいことはわかりますが、結局、打開策は何ですか?具体的意見が乏しいですね。私もセールス業ですが、反面教師的に見させていただきました。口先三寸にならないように私自身気づかされました^^

    2013年11月27日

  • 斎藤昌義

    konbuさん、コメント感謝します。

    例えば、お客様の業界の動向やそれに関わる御客様の直面する課題、それにどのように対処すべきかを自分なりに整理して、お客様に説明し、ご意見をいただくというのはどうでしょう。

    クラウドとは何か、それが、お客様の業務にどのように影響するのかを整理して、説明してみてはどうでしょうか。

    国際会計基準について、お客様はどのような取り組みをすべきか、資料を整理し、自分なりの意見を伝えてみてはどうでしょうか。

    それが完全に正しいかどうかは、あまり重要なことではありません。あなたが、お客様になりかわり、お客様が知りたいこと、考えなくてはならないことを、整理して情報を提供する。きっと、お客様は、そんなあなたを「役に立つ」と感じてくれるはずです。

    そんな、ささやかな努力、といっても、時間はかかりますが、それが売り込みなのだと私は思います。

    とおりすがりさん、ご指摘感謝します。まだまだ、修行が足りないようです。

    2010年02月28日

  • konbu

    まさにこの件、私も該当し変な遠慮からストレスを溜め込むという悪循環の最中にします。
    ただ、記事では第三者的な指摘に留まっていて「私ならこうする」という所に欠けていると思います。
    文中で述べられているとおりに精神論の域を出ません。結局、読み終えた後に、ストレスが緩和された訳でも無く、自慢話に終始する嫌な上司と話し後と同じ気持ちになりました。

    2010年02月28日

  • とおりすがり

    誤字が多いように思います。途中で断念しました。

    2010年02月28日