商談に行き詰まりを感じている方へ

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-03-14 15:01:27

 「お客様は、1000万円程度の予算を考えているのですが、こちらの提案は、3000万円。あまりにも開きがありすぎて、話しになりません。どうすればいいのでしょうか?」

  あるソリューション・ベンダーの営業から、こんな相談を受けた。

  金額だけ見ると、国産コンパクト・カーを買いたいというお客様に、高級外車を提案しているようなもので、そもそも、そんな案件が成り立つとも思えない。しかし、話しを聞いてみると、そうともいえないようだ。

  「お客様は、うちの製品の機能が、これからやろうとしていることに必須と考えていらっしゃるようです。他社製品や自分たちの開発では、できないとおっしゃってるんです。」

  私は、彼に次のような質問をした。

  「ところで、お客様は、その機能をつかって、何をしたいんだろう。」

  さらに続けた。

  「確かに、その機能が優れていること、他社の製品にはないこと、自分達で作ることも容易ではないこと。それは良く分るけど、所詮その機能は、何かを実現するための手段に過ぎない。それを使って、お客様は、何を実現したいのだろうか?コストを下げたいのか、売上を伸ばしたいのか、どちらなんですか?」

  かれは、よく分らないという。窓口となっているシステム担当の方もはっきりしていないようだという。そこで次のような話しをした。

  「もし、コスト削減を考えているとすれば、いくらをいくらに削減したいのですか?それが明確でなければ、1000万円が妥当なのか、3000万円が妥当なのか、お客様にもあなたも判断できないじゃないですか。」

  彼は、なるほどと納得し、顔がパッと明るくなった。「確認してみます!」と力強い返事。そんな彼に、次のような質問をした。

  「どうやって確認するんですか?あなたが売り込んでいる相手であるシステム担当者も知らないのなら、聞いても答えは期待できないですよ。」

  再び暗い顔になった。

  「そもそも、このシステムを必要としている事業部門の責任者は、効果目標を明確に設定しているのだろうか。もし、はっまりさせていないとすれば、「どれほどの効果を期待されているのか」と聞いたところで、答えてはもらえないでしょう。」

  では、どうすれば、いいのでしょうかという話しになった。

  「お客様の業務の流れは分っている。今のシステムの使われ方も分っている。ならば、あなたが提案している製品を使ったら、業務の流れがどのように変わり、どの程度の効果が期待できるかをこちらで考えて、相手に確認してもらったらどうだろう。」

  彼は、正確な情報をつかめていないから、無理だという。それに対して、

 「完全な正解を出す必要なんかありません。大切なことは、お客様とあなたとの間で、この製品を利用することの価値をどのように確認するか、そのための基準や考えの枠組みを共通にすること。そうすれば、お客様は、何に答えればいいのか分るし、わかっていなければ、そのことに気付かれるはずです。彼もまた、何をすべきか、理解できる。お客様にとっても、価値のある話ですよ。」

  「もし、あなたの窓口となっている人が分らなければ、分る人を紹介してもらったらどうですか。そして、彼に何を求めているかを確認する。この金額の差が、埋められないものなのかどうかは、それが明らかにならない限り、なんともいえないと思いますよ。」

  再び、納得した顔で、「やってみます」という返事が返ってきた。さあ、結果が楽しみである。

 

 私たち営業の役割は、「結果としてこうなっていたい」という「あるべき姿」へ、お客様を導く仕事である。どのような手段を使うのか、それにいくらの費用がかかるのかは、その「あるべき姿」次第である。

 お客様が、「あるべき姿」を明確に描けていないとすれば、それを描く事を手伝うのも営業の仕事だろう。そこがはっきりしなければ、何が適正な手段であり、費用なのかが分からない。ましてや提案などできるはずがない。

 営業活動は、「あるべき姿」を明らかにし、それをお客様と合意することが起点である。

 たとえ費用や手段が、お客様の想定の範囲内であったとしても、それが「あるべき姿」の実現にとって、本当に最適な手段と言えるのだろうか。

 「あるべき姿」がわからないのだから、自分の知識と経験の範囲で、なんとなくの答えを無理やり出したに過ぎない。そのような結論は、のちのち、「そんなはずではなかった」、「なんで、こんなことができないの」・・・といった、不満や混乱を引きずることになる。

 営業の仕事とは、お客様の期待する「あるべき姿」を最大のコストパフォーマンスで実現することである。その起点は、お客様の「あるべき姿」を確認し、合意すること。

 お客様との交渉に行き詰まりを感じたときは、この原点に立ち返ってみてはどうだろう。さらに進むか、やり方を変えるか、ここで撤退するか。その判断も、はっきりとしてくるはずだ。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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