これ一枚で分るマーケティングとセールスの違い

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-03-27 12:32:53

 「これ一枚で分る」シリーズの第二弾。マーケティングとセールスの役割の違いについて、考えてみました。

 ITビジネスに携わる営業にとって、「マーケティング」と「セールス(営業)」というふたつの言葉は、はっきりと切り分けられることなく曖昧に使われていることも多いのではないでしょうか。

 だから良い悪いのはなしではありませんが、夫々の違いや機能を定義しておけば、自分の役割をはっきりと認識できます。そうすれば、何を目標とすべきかも明らかになります。ということで、「この一枚」にまとめてみました。


 
 さて、今回は、いかがでしょうか?

 この資料は、前回も紹介させていただいた「ソリューション営業モデル研究会」のメンバーであるキヤノンITソリューションズ・事業企画本部の永田さんが、まとめてくれた資料を基に、一枚のチャートに整理したものです。

 永田さんは、長年ITソリューション・ビジネスの第一線で、マーケターとして活躍されてきたエキスパートです。マーケターの視点から、ソリューション営業のあるべき姿を考えようということで、この研究会にて、ご見識を賜っております。

 さて、このチャート眺め、改めて「マーケティング」と「セールス」の違いをひと言で語るとすれば、次のようになるでしょう。

 まず、目的については、

 ● マーケティング:お客様に買いたいという気持ちを起こさせること。
 ● セールス:お客様に買う決心をさせること。

 となるでしょうか。

 マーケティングは、お客様に商品や課題の存在を知らせ、自分に必要なことである事を気付かせ、それを手に入れたい、課題を解決したいという気持ちを起こさせることです。

 セールスは、そんなお客様の気持ちを引き継ぎ、この商品を買う、この課題を解決するという決心を与えることです。

 次に、達成目標については、

 ● マーケティング:個人を特定し、その個人情報を獲得すること。
 ● セールス:獲得した個人情報を使って、その個人から成約、受注すること。

 となります。ただし、セールスに代金回収までの責任を負わせる会社もあのます。

 また、「法人ビジネスでは、個人ではなく、会社だろう」というご意見もあるかもしれませんが、これは、私の個人的な意見ですが、法人ビジネスであっても、決心をさせる相手は、個人であると考えています。

 ただし、法人の場合は、その個人は一人ではありません。夫々に役割や決裁範囲の異なるステークホルダー(意思決定に関与する人)に、夫々の立場で満足と信頼を与える必要があります。

 手続きとして、稟議という会社の決定は引き出すことになりますが、結局は、その手続きを起案し、承認・捺印をしてくれるのは、個人です。その個人が動いてくれなければ、成約に至らないのです。

 さて、話を元に戻しますが、マーケティングは、お客様を「買っていいかも」という気持ちにさせ、その気持ちを持っているお客様の名前や連絡先を特定することまでが、仕事となります。

 しかし、「買っていいかも」という気持ちは、必ずしも確固たる決心ではありません。「よし買うぞ」という決心に変える必要があります。また、「よし買うぞ」という決心をしても、あなたから、あるいはあなたの会社の商品を買ってくれる保証はどこにもありません。

 そこで、セールスは、マーケティングから渡された個人情報を使って、お客様と個別に連絡を取り、面会の約束を取り付けます。
 そして、お客様が、買いたいと思っている商品、あるいは、解決したいと思っている課題について、お客様と話しをします。それを手に入れたとき、あるいは、解決したとき、どのような満足があるのかを具体的なイメージとして思い描かせるのです。
 そして、提供しようとしている商品や解決策が、間違えなく、その通りの結果をもたらしてくれるという、確信、信頼感、安心感を、お客様に抱かせる活動を行います。これが、「提案」です。その結果として、商品の購入や成約に結びつけるのです。

 このチャートでもお分かりのように、左から右へ、つまりより成約へ向かうほど、対象となるお客様の数は、絞り込まれ、少なくなります。この左から右への一連の顧客絞込みの過程を、段階を区切り、夫々の成果を管理しなくてはなりません。これを「パイプライン・マネージメント」といいます。

 さて、最後に、マーケティングとセールスの違いを理解するうえで、参考になるP.F.ドラッカーの有名な言葉をご紹介しましょう。

 「マーケティングの究極の目的は、セリングを不要にすることである」

 マーケティングを突き詰めてゆけば、お客様は、ほしくてほしくてたまらなくなる。個別にお客様を訪問し、こちら売り込まなくても、お客様から売ってくださいと来るようになります。つまり、それがマーケティングの目指す究極の目的であると、彼は言っています。

 ただ、ITソリューション・ビジネスの現場では、必ずしもこの理想は、成立しません。なぜならば、お客様が解決したい課題は、ひとつひとつ違うものです。また、課題そのものが、単純なものではなく、お客様も気付いていない、整理できていない場合も少なくないからです。

 従って、このチャートにもあるように、「課題を解決したいという意欲」を起こさせるところで、セールスは、マーケティングと協力することが必要です。これが、「課題の発掘」という仕事になります。

 いかがでしょうか、「マーケティングとセールスの役割分担」については、整理していただけましたか。

 しかし、きっとこんなフラストレーションを感じられるかもしれませんね。

 「でも、どうやって実行するの・・・?」。

 これを体系的に整理し、実践マニュアルを作ろうという取り組みが、「ソリューション営業モデル研究会」です。よろしければ、どうぞ、メールにてお問い合わせください。
 
*** 「ドラッガー」を「ドラッカー」に訂正いたしました。  

ブログをご覧いただいた方から、以下のご指摘を頂きました。

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「ドラッガー」というのでは、アマゾンなどで本を探す方が困ってしまうと思いますので、やはり「ドラッカー」が良いかと僭越ながらお伝えしたく、メールを差し上げた次第です。

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ご指摘を感謝申し上げます。改めて確認いたしましたところ、ご指摘どおりです。本文の記述を訂正させていただきました。大変失礼致しました。 

正しくは、「ピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)」です。  

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 余談ですが、私の友人が、特許翻訳や海外出願の仕事をしています。彼女が言うには、

「これらは、法律文書です。「英語が分る」程度では、確実な権利の確保や将来の訴訟に対応することはできません。夫々の専門分野とともに特許の実務経験と専門知識がなければ、安心できる翻訳は出来ないんです。」

とのこと。だから、徹底してその条件にかなう翻訳者を独自の基準で選抜して、仕事を請けているのだそうです。

 「だから、ご依頼をいただいても、直ぐにお応えできない場合もあります。お客様に申し訳なく、ビジネス的にも苦しいところなんです。」とのこと。

 前回、「顧客との同盟」という話しをしました。「お客様の目線」を持ち、お客様の必要とする最高の結果をお届けする。この「当たり前」は、どの業界にもいえることだと改めて感じました。

 この会社は、株式会社ヴァンビー(VanBee)といいます。技術論文の翻訳など、専門性の高い翻訳を得意としています。彼女のブログもなかな「痛く」感動させてくれます。良かったら、併せてご覧ください。

 

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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

2件のコメント
  • 斎藤昌義

    BERBATOVさん
    ご質問有難うございます。この取組には、大手、中小にかかわらずソリューション・ベンダーの営業に関わる皆さんが、ボランティアで参加されています。経営者、営業、マーケティング、事業企画など、立場は様々です。ここでは、営業という仕事を、営業職の仕事として捉えるのではなく、会社や組織としての営業の取組と位置づけています。参加することで、結果として勉強の機会になりますが、目的は、夫々が自分達の体験を通して得た見識を持ち寄り、ソリューション営業という仕事の価値を再定義し、その実践モデルを作り上げてゆこうというものです。
    マーケティングと営業の違いについてもこの研究活動の成果のひとつです。

    2010年03月31日

  • BERBATOV

    「ソリューション営業モデル研究会」が取り組んでいるテーマである、マーケティングとセールスの役割分担の「体系的な整理」と「実践マニュアル作り」へはどういった方々が参加されているのでしょうか。6ヶ月前に営業からマーケティングへ転属となり、仕事の進め方やマネジメントで試行錯誤しています。

    2010年03月30日