「研修でなんとかなるだろう」とは、経営者やマネージメントの責任放棄

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-05-22 09:06:04

 研修に意欲や気力の向上を求める方が、少なくありません。研修講師が、自らこんなことを言うのも、少々はばかられるのですが、それは、無理です。 

 まあ、「営業研修では」と、お断りしておきましょう。

  確かに、私の研修に参加され、営業という仕事の楽しさがわかった、自分のやるべきことがわかったと、意欲満々のコメントをいただくことも少なくありません。

  「上司からこの研修に出ろといわれて仕方なく来ました。この研修が終わったら、会社を辞めようと思っていたのですが、今は、早く戻って、営業をすることが楽しみです」といううれしいコメントをいただいたこともあります。

  しかし、冷静に考えれば、研修でこの程度の価値をご提供できなければ、プロとしては失格です。わざわざお金をお支払いいただきおいでいだく以上、それに見合う以上のものをお届けできなければ、意味がありません。問題は、この後なのです。

  「高い意欲を維持しつづける仕組み」が、なければ、たとえ研修で意欲を高めても、個人の自助努力だけでは限界があるのです。

  私は、研修の目的を「自分の営業活動の健康診断」であり、「営業という仕事の地図を手に入れる」ことと説明しています。

  「自分の営業活動の健康診断」とは、自分なりに試行錯誤しながら積み上げてきた営業としての仕事のやり方が、本当にこれでよかったのかと、冷静に振る機会を提供することです。

 自分のスタイルとは、自分の性格や得意を活かしながら、時間をかけて築き上げてきたものです。それを変える必要もなければ、たぶんそのやり方が、一番自分にしっくりとなじんでいるはずです。そこに、ひとつの外部基準を当てはめ、外部の目線で冷静に評価してみる。すると、これでいいという確信も持てるし、もっとここを伸ばしたほうがいいということにも気づきます。それが、自分の今後の成長の目標になるはずです。

  「営業という仕事の地図を手に入れる」とは、実際の現場に出れば、前後不覚の事態になることも少なくありません。そのとき、自分のいる場所と向かう方向が描かれた地図が手元にあれば、何と心強いでしょうか。営業活動プロセスの体系的理解やそれに準じたチェックシートは、大いに助けになるはずです。

  しかし、残念ながら、意欲や気力は、この外側にあるのです。つまり、経営者や営業マネージメントの責任だと思っています。

  営業の現場に出れは、思わぬ事態に出くわすことは、しばしばです。また、ソリューションが求められる世の中で、解決策はお客様ごとに異なり、一律ではありません。営業は、このような営業現場で、自ら創意工夫し、臨機応変に事態に対処します。

  当然迷いもあり、助けも必要です。そのとき、助けを差し伸べることができるセーフティネットを提供する。それが、経営者や営業マネージメントの役割であり、これが、現場の意欲や気力を支えて行くのだろうと思います。

  コンプライアンは、大切なことです。しかし、それが「やってはいけない」、「あってはいけない」意識を必要以上に植えつけてしまうと、人は、チャレンジをやめてしまいます。チャレンジのないところに意欲は生まれません。人は、成長できるから楽しいし、意欲もわくのです。

  むしろ、思いっきり冒険をさせ、きちんと報告ができる仕組みや空気を作り、問題が小さなうちに表に出てくる仕組みを作ることが、真のコンプライアンス対策といえるでしょう。

  押さえ込んでしまえば、チャレンジはなくなります。「やってはいけない」、「あってはいけない」は、小さな問題を抱え込ませてしまい、自分で何とかしようとする。その結果、問題はどんどんと大きくなり、取り返しもつかない事態に発展するリスクを持っているのです。これは、会社にとってもそうですが、優秀であり、まじめといわれる営業ほど、不幸な事態を招くことが多いようです。

  経営者は、夢を語り、ビジョンを示します。営業マネージメントは、風通しのいい組織を作ります。もちろん、給与や制度面での施策も必要でしょう。やったことを正当に評価されることほど、意欲の向上につながることはありません。

  しかし、営業経験の少ない管理者やスタッフが作る評価制度は、時に営業の不満を高めているようです。営業という仕事は、エンジニアや事務職のようにきちんと仕事の内容が決まっていません。「それ以外のすべて」が、営業の仕事ということもできるかもしれません。また、見えるものは「数字がすべて」なので、金額だけではなく、ケースごとの数字の重さが、評価されにくいという傾向もあります。営業経験者の意見を反映した評価制度を作ることも、重要だろうと思います。

  そういう支えを与えてこそ、営業の意欲や気力は、維持できるのです。

  「研修でなんとかなるだろう/なんとかしよう」とは、経営者やマネージメントの責任放棄です。

 経営者や営業マネージメントに意欲を高め、それを維持することは自分の仕事であるという自覚がないままに部下を研修に参加させる。これは、むしろ、研修で学んだ理想と現実とのギャップで、参加者を苦しめることにもなりかねません。

  研修とは、そんな役割であることを理解して、うまく使っていだきたいものです。

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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

3件のコメント
  • 斎藤昌義

    CoActive_Kei
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    上司に、ご指摘の自覚を持ってもらう研修が必要なのでは?
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    研修が効果をあげるためには、トップを含むマネージメント研修やエグゼクティブ・セミナーなどを組み合わせることが必要ですね。ただ、いつもつらいのは、こういう話をしても、なかなか、ファローアップまで、お手伝いできないことです。

    やま
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    Pointは研修を受ける人を将来どのような人材に育成するかの計画をきちんと立てることです。
    その計画の下にその都度、その人の状況と研修の内容を把握して、タイムリーな研修を行う必要があります。
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    育成のための設計図を描くことは、大切だと思います。ただそれ以上に、組織の風通しや助けや支えを与えられる組織を作ることのほうが、はるかに重要かもしれません。人は、意欲が出れば、学ぼうという気持ちになります。その気持ちこそが、研修の効果を高めてくれるのです。

    2010年05月24日

  • CoActive_Kei

    上司に、ご指摘の自覚を持ってもらう研修が必要なのでは?研修やワークショップは、社長から下に向かって実施されると効果的です。下からの意識改革には限界があります。

    2010年05月23日

  • やま

    確かにその場しのぎの研修では効果はありません。
    講師は研修を受ける人を自分の得意分野に目覚めさせようと努力しますので、それなりの効果はあります。
    しかし、研修とその後の業務や次の研修の組み合わせが悪いと、せっかく研修でつかんだ前向きの気持ちが逆効果になることもあります。
    Pointは研修を受ける人を将来どのような人材に育成するかの計画をきちんと立てることです。
    その計画の下にその都度、その人の状況と研修の内容を把握して、タイムリーな研修を行う必要があります。
    これが無いと、研修はその場しのぎのものにしかなりません。

    2010年05月23日

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