営業力を強化すればなんとかなるという幻想

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-06-05 09:10:04

 「営業力強化」を謳う本が、数多く書店に並んでいる。それだけ、関心も高いのだろうが、中をのぞいてみると、応対術や交渉術、提案書の書き方など、技能に的を絞ったものが多いように見える。

 お客様に受け入れられるためには、どんな心遣いが必要か、そのためには、どんな行動をとるべきかを語ったものも少なくない。

 どちらにしても、「営業力」というものは、世間では、個人の技能や意欲、精神性の問題であると捉えている向きがあるようだ。

 これもまた「営業力」のひとつの側面であることに違いはない。しかし、こと、SIerにあっては、もっと本質的な「営業力」の強化を優先しなければ、この先仕事はなくなってしまう。それは、「強化」というよりも、「質的転換」と言うほうが、ふさわしいかもしれない。 

 日本のSI業界は、長年、一部の大手ゼネコンSIerの配下に、多数の中小下請けSIerがつらなり、そこからの下される仕事をこなすことで、成り立っていた。

 しかし、ここ数年の不況に加え、オフショア開発やクラウドの普及が、今までの産業構造を成り立たせていた前提を大きく崩し始めている。

 まず、不況については、いうまでもなく、仕事の絶対量の減少である。これは、大手ゼネコンSIerも、その下で働く中小SIerも一律に影響を受けてきた。

 しかし、オフショア開発やクラウドの普及は、まったく次元の違う話である。

 不況からの脱却が進むとともに、新規開発案件は、増えている。しかし、それが、かつてのように、下請けのSIerに回らない。

 不況によるお客様企業のコスト意識の高まりは、同じレベルの仕事であっても、もっと安く仕上げてほしいという要求を強めている。大手ゼネコンは、その要求に応えなければ、競合に負けてしまう。その解決策が、オフショアやクラウドというわけである。

 今までのように、国内のSIerに開発を任せるのではなく、単金安い中国やインドを使う。開発しなくてもいい、クラウドを使う。

 上流を押さえている大手SIerの仕事がなくなるわけではない。お客様のSIerへの要求が、ビジネス・モデルや業務プロセス、システム全体の企画や設計にシフトする中、それに答える余力はある。また、海外開発会社の買収や提携、クラウド事業への進出により、新たな収益構造を築き始めている。

 その一方で、大手SIerからの受託開発や要員の派遣を仕事の柱に据えていた多くのSIerは、単金の低下圧力、受託案件の減少に耐えなければならない。

 これは、彼らの開発者としての能力や品質が、低下したからではない。いうなれば、SIビジネスのグローバル化、あるいは、クラウドを含めたシステム開発、運用環境の大きなパラダイム・シフトによってもたらされた、構造的問題なのである。 

 従来、中小SIerの営業は、大手SIerとのしっかりとした人脈を保ち、彼らからの要求を確実にこなしてゆく。その管理能力と開発要員の調達能力が、求められてきた。トラブルへの対応、理不尽な要求に対しても、うまく対応できてこそ、営業は、その真価を発揮できたのである。そのためには、この仕事での豊富な経験、つまり年の功は、営業力を支えるものでもあった。

 しかし、もはやその時代は、過去のものである。お客様は、まったく違ったものに、価値を見出し始めている。

 このような業界構造の大きなパラダイム・シフトの中で、「営業力」を応対の技能や精神力の強化で乗り切ろうという考えは、的外れといわざるを得ない。

 その能力の不要を申し上げている訳ではない。もっと、本質的な「営業力」、つまり、他社にはまねのできない戦略的思考や、これを確実に売り込んでゆく企画力や提案力が、「営業力」の本質といえるだろう。 これは、個人の技能や精神力の問題ではない。企業が、組織的に取り組むべきものである。

 では、それは、技術力や商品力を高めることであるかというと、必ずしもそうではない。確かに、このような努力は、すべきである。しかし、クラウドになれば、高度なデータベース・スキーマを設計するような技能の出番は、減少する。商品も、圧倒的な差別化ができればいいか、競合優位を維持し続けることは、容易なことではない。 

 このような現実の中で、海外にはできないものがあるのではないか。また、クラウドに内在するリスクや課題ゆえに、本格的な採用をためらう企業は、少なくない。それを補完し、克服できる手立ては、あるはずである。

 お客様の現場に入り込み、お客様の業務を間近に見てきたからこそわかることは、多い。そこから、お客様の課題を明らかにし、かゆいところに手が届く解決策があるはずだ。そんな、きめ細かな対応をオフショアやクラウドに求めることはできない。 

 今必要なのは、それを見出し、提案の戦略を組み立て、大手SIerやエンドユーザー企業に、仕掛けてゆく、そんな「営業力」なのだと思う。 

■ [無料]クラウド時代に勝つ!ソリューション営業力育成セミナ

http://www.ices.co.jp/news/news_1.php?id=404 

 営業力は、「強化」から「質的な転換」へと変わりつつあります。クラウドは、IT業界にどんな変革をもたらそうとしているのか、それに応えるために、営業にはどのような能力が、求められるのか。そんなことを考えてみようと思います。 

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  日時 6月22日(火)15:00−17:00

  場所 東京・九段下

  申込 http://www.ices.co.jp/news/news_1.php?id=404 

  * 座席に限りがございます。お早めにお申し込み下さい。 *

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