「ソリューション」という言葉に抵抗感を持つあなたへ

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-06-19 11:05:33

 ソリューションという言葉をつかうことに抵抗があるとか、あえて使わないようにしているという方が、いらっしゃるようです。先日も、Twitterで、「ソリューションという言葉を安易につかわないほうがいい」という呟きを見かけました。

 このような意識の背景には、「他人の課題を解決できるなどと偉そうなことを言うべきではない」という正義感とでもいうか、倫理観とでもいうか、そんな意識があるようです。また、「ソリューションという言葉の意味が、あいまいで、自分で自信を持って使えない」という方もいらっしゃるでしょう。

 どちらにしても、「ソリューション」という言葉を十分に納得できないままに、使うことに抵抗があるという、きわめて真摯な思いが、背景にはあります。

 確かに、IT業界では、この「ソリューション」という言葉が、安易に使われているようです。

 本来、「ソリューション」とは、「お客様の課題を解決すること、あるいは、その解決の手段」です。しかし、実態は、「わが社のソリューションは・・・」と称して、自社の商材を「ソリューション」という言葉に読み替えているだけの人も少なくありません。

 それでは、どう考えても、「お客様の課題」の解決ではなく、「自分たちのノルマを達成し、売り上げを上げる」ための「自分の課題」を解決する行為に過ぎません。「ソリューション」という言葉が、このような安易な使われ方をされることにも、抵抗感を感じる方は、いらっしゃると思います。 

 では、IT業界の中で使われる「ソリューション」とは、いったいどういう意味なのか。歴史的な背景をも振り返りながら、私なりの解釈をご説明したいと思います。 

 「ソリューション」の字義は、「解決または、解決策」です。では、何を解決するかといえば、お客様の課題を解決することです。ならば、解決すべき対象である「課題」とは、なんでしょうか。

 「課題とは、お客様がこうありたいと"望んでいる姿(あるべき姿)"と"現状"との"ギャップ"」です。

 たとえば、"あるべき姿"が、「売上高を100億円にする」と考えているお客様がいらっしゃったとしましょう。しかし、このお客様の"現状"は、「売上高が80億円」です。とすると、「20億円足りない」という"キャップ"が存在します。すなわちこれが、「課題」となるわけです。もし、あるべき姿と現状が一致しており、ギャップがなければ、当然ながら、課題は存在しないことになります。

 このギャップを解消することが「課題を解決する」ことであり、その手段を「解決策=ソリューション」と考えれば、課題とソリューションの関係をすっきりとご理解いただけるのではないでしょうか。

 ですから、「ソリューション」を提供するためには、まずお客様の望んでいるあるべき姿と現状を明確にする必要があります。お客様とこれらについての話もせずに、冒頭「わが社のソリューションは・・・」と演説することが、いかにソリューションという言葉からは、程遠いものであるかは、いうまでもありません。

 プロダクトやサービスなどの商材は、「お客様の課題を解決(=ソリューション)するための手段であって、目的ではないのです。

 お客様は、プロダクトやサービスをほしいわけではありません。また、あなたの会社を採用したいわけではありません。自分たちの課題を解決したいのです。その課題を解決してくれる確実な手段を提供してくれるのであれば、結果として、あなたの会社を採用してくれるはずです。この順序がひっくり返っては、いないでしょうか。

 ところで、IT業界でソリューションという言葉が使われるようになったのは、1980年代頃ではないでしょうか。このころのソリューションは、プロダクトより上等なもの、あるいは、「わが社は、他社とは違いますよ」というキャッチフレーズとして、「ネットワーク・ソリューション・カンパニー」とか、「トータル・ソリューションをお届けします」というような使われ方をしていました。

 それ自体、何も間違えではありませんが、なんとなくあいまいなままに、使われていたように思います。そのひとつの転機になったのが、1990年代の半ば、IBMの定義したソリューションの意味です。

 ご存知のように、IBMは、メインフレームが事業の柱でした。しかし、ダウンサイジングが始まり、世の中が、メインフレームからミニコンやオフコンへと関心が移る中、IBMは、メインフレームのアーキテクチャの一貫性をウリに、プロセッサーから端末、ソフトウェアを含むすべてのコンポーネント、そして、開発、保守にいたるまで、IBM一社に任していれば、その組み合わせを一切保証し、安定的な運用をお約束しますといって、ダウンサイジングに対抗していました。

 確かに、デファクト・スタンダードやオフープン・スタンダードというものは、怪しいものでした。多くのベンダーが、わが社の製品は、これらにすべてに準拠して作られていますというのですが、いざ組み合わせてみると、うまくつながらないこともしばしばです。そんなことをクレームすると、「どうも、相性が悪いようです」となんだかよくわからない答えしか返ってきません。しかし、コストの安さと自由度の高さは如何ともしがたく、ダンサイジングは、ますます広がっていったのです。

 しかし、組み合わせの一切をメーカーに任せることができたメインフレームと違い、ミニコンやオフコンの組み合わせは、ユーザー自身が、責任を持たなければなりません。

 確かに、TCA(Total Cost of Acquisition = 取得のコスト)は、大幅に下がりました。そして、各部門の裁量で、部門マシンが増殖してゆきました。しかし、その結果として、組み合わせや運用にかかわるユーザーの負担やTCO(Total Cost of Ownership)は、むしろ増えてゆきました。

 そんなころ、IBMのCEOになったのが、ガースナーです。彼は、IBMとしては、初めての社外からのCEOで、コンピューターの常識を知らない人物だと、ささやかれたものです。

 そんな彼は、このお客様の現状をみて、「お客様の課題」を解決しないのは、おかしいと考え、「IBMだけではなく他社の製品も含め一切の組み合わせに責任を持つ」と宣言し、それをソリューションといい始めたのです。そして、このソリューションを実現するサービス事業を「システム・インテグレーション」と定義したのです。

 いま、IT業界で使われている「ソリューション」という言葉には、このような歴史的な背景もあるように思います。

 「ソリューション」という言葉をどう解釈するかは、人それぞれです。どれが、絶対的な正解であるとはいえません。ただ、「お客様の課題を解決する」という本質に変わりはありません。

 それは、単一の商品を意味するものでもなければ、プロダクトより上等なものというキャッチフレーズでもありません。

 「お客様毎の個別の課題を起点として、これを解決するための手段(プロダクトやサービス)の組み合わせを提供すること」となることだけは、間違えないように思います。

 どうでしょうか、このように考えてみると、プロダクトを売るにしても、SIを売るにしても、それは、ともにソリューションを実現するための取り組みであることが、お分かりいただけると思います。

 「ソリューション」という言葉に、抵抗を感じたり、拒否反応を示す必要は、どこにもありません。自信を持って、「ソリューション」を語ればいいのです。

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  * 座席に限りがございます。お早めにお申し込み下さい。 *

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うちめしネット まいにちの食事を、もっとやさしく。 

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2件のコメント
  • 僭称二代目人生幸明

    文章の途中から、急にカタカナ語と横文字が溢れてきましたので、後半は読み飛ばしました。あしからず。なお、もちろん、私も「ソリューション」大嫌い人間です。〈我が社の「サービス」「商品」「提案」〉と言えば済むところを、いかにも「ハイカラ」に言い換えているに過ぎませんから。

    2010年06月22日

  • 虫眼鏡

    IT業界で使われている「ソリューション」という語は、99%が「製品」という日本語で置き換えてなんら差し支えない。カタカナ語として「エクスペリエンスよりは、まだまし」という程度である。ただし、ここで言われている提案営業の姿勢は間違ってはいない。

    2010年06月22日

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