「営業力」と「人間力」

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-06-26 09:58:14

 先日、こんなメールをいただきました。

 「貴社のホームページを拝見した際に、ITソリューション塾を知りまして、途中からではありますが、ぜひ今週から参加させていただきたく、このたび、メールいたしました。」

 そして、そこには、「わたくし、社会人一年目でXXX(一部上場の大手システムベンダー)の情報・通信システム事業部門に勤務しております。」と書かれていました。つまり、今年入社したばかりの新入社員というわけです。

 私は、「まずは、見学にいらっしゃい」と彼をさそい、水曜日の夜に開催されている「ITソリューション塾」に彼はやってきたのです。

 講義が終わり、私は、「新人君には、ちょっと難しかったかなぁ」と思いつつ、どうだったかと尋ねてみると、「難しかったですが、なんんとかついてゆけるように頑張ります!」とのこと。なんとも、こちらが勇気づけられる思いでした。

 ノーベル文学賞受賞者でアイルランドの詩人であるウィリアム・バトラー・イェーツは、「教育とは、バケツを水で一杯にすることではなく、火をつけて、燃やしてやることだ」と語っています。

 つまり、教育とは、知識を詰め込むことではなく、学びたいという意欲を持たせてあげることだ言うのです。蓋し、名言です。

 先日のソリューション営業モデル研究会でも、「営業力は、人間力」ということが、話題になりました。

 どんなに知識を学ぶ機会を与え、マナーを教えても、本人に探究心や向上心といった「人間力」が備わっていなければ、知識や能力は、営業力には、結びつかない。この人間力をどのように高め、引き出してゆくかが、営業力育成のカギを握っているという議論です。

 しかし、「人間力」なるものは、抽象的で、主観的なものであり、これを評価することは、容易なことではありません。しかし、評価のできないものは、コントロールできず、育成の方法論を議論することができません。このジレンマに議論も行き詰ってしまいました。

 まあ、簡単に出せる答えではありません。ただ、それを考えること、それ自体に、私たちは、改めて「人間力」の大切さに気付かされました。

 では、イェーツが語るように「火をつけて、燃やす」ために、いったい何ができるのでしょうか。それには、3つ原則があるように思います。

1.知らないこと、足りないことに気付かせる

 危機感や不足感を満たそうという欲求は、だれにもあります。自分に何が足りないのか、このままでは、自分は成長できない。その思いが強ければ強いほど、炎は大きく燃え上がるはずです。

 自分の能力を客観的な指標で評価し、他者と比較すること。仕事の手順や業績を見える化し、現状を客観視することなどは、気付きを与える一つの手段となるはずです。

 また、対話することも大切です。話し合う中で、自分が整理でき、客観視できることも少なくありません。

2.やらせてみて、体感させる

 「このままではまずいぞ」と気付いたとしても、それは、限られた知識や経験の中の「想像」でしかありません。本当にそうなのかを検証してみることが必要です。とにかくやってみる。体感し、「想像」を「実感」に変えることで、初めて人はその知識や能力を手に入れるのだろうと思います。当然失敗もあるはずです。その失敗から学ぶことも多いはずです。

3.セーフティ・ネットを用意する

 「失敗して当然」を前提としてチャレンジさせる。それが成長の原動力になるはずです。しかし、最近は、過剰なコンプライアンス意識の高まりの中で、「失敗は許されない。あってはいけない」を前提とした組織も多いようです。確かにコンプライアンスも大切ですが、過剰な抑制は、むしろ成長の芽を摘むことになるでしょう。それよりも、何かあったら誰かが助けてくれる、相談できる、そんな風通しの良い組織を作ることのほうが、はるかに有効だと思うのです。

 このセーフティネットがあれば、失敗も小さなうちに表に出てきます。そして、適切な指導をすれば、それもまた学びの機会になるはずです。

 私たちは、時にして知識やスキルを教え、学ぶことで個人の能力が高まると考えてしまいがちです。しかし、教え、学ぶことは、目的ではなく手段であるということを思い返す必要があります。

 教え、学ぶという手段を通し、自分に何が足りないのかに気付くこと。その不足感と危機感が、「火をつける」ことになるのでしよう。そして、学ぶことによって、成長できる実感を、よろこびとして感じることが、真の目的あることに気付かなければなりません。

 件の彼は、誰に言われたわけではなく、自分で自分に火をつけたのです。なかなかできることではありません。その炎を燃やし続け、さらに大きくしてゆくことをお手伝いすることが、私たち大人の役割なのだろうと思うのです。

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