提案営業などやめてしまえ!御用聞き営業こそ、最高の営業だ!

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-09-25 09:02:50

 「うちは、提案営業に力を入れています。」という、あるソリューション・ベンダーの営業部長。かなり自信を持っているようだ。

 そんな彼の自慢の部下に、「実際のところどうなの?」と聞いてみると、おもむろにカバンから分厚いバインダーを取り出した。そこには、自分たちの製品やサービスについての説明資料やパンフレットが、ぎっしりと、そして整然と詰まっていた。「お客様に行って、なんでも提案できるように用意しているんですよ。」と自慢げに話してくれた。
 
 後で、他の方に彼の営業成績を聞いてみると、案の定、今ひとつだそうである。どうも、この営業部長も部下の営業も、提案営業の意味を勘違いしているようだ。
 
 まず第一に、お客様は、製品やサービスをほしいなどとは、思っていない。この大前提を忘れているようだ。お客様がほしいものは、自分の抱える課題を解決することであり、製品やサービスは、その手段にすぎない。
 
 お客様の課題を十分に聞き出すことなく、こちらにとって都合のいい製品やサービスを説明したところで、お客様にしてみれば、「いいお話を聞かせていただききました。社内で検討のうえ、後日こちらから連絡をさせていだきます。」と笑顔で応えてくれるだけ。それ以降、待てど暮らせど連絡が来ることはないだろう。
 
 第二に、資料を説明することを提案だと思っていること。提案営業とは、こちらが用意した資料を積極的に説明し、お客様を説得して、ねじ伏せることだと思っている節がある。
 
 彼に同行した新人営業にこっそり話を聞いてみた。すると、かれは、のべつお客様に話し続けていたという。自分から積極的に話すこと=提案営業という図式があるようだ。しかし、お客様にとっては、きっといい迷惑だろうと思う。そうやって、彼は、仕事をしたという充実感に酔いしれているのかもしれない。
 
 自分は、こんなに一生懸命やっている。成果が出ないのは、自分の努力が足りないのではなく、お客様が悪い、製品が悪い、マーケティングが悪い。いや、今は、時期が悪いだけだ。いずれ努力は報われる・・・とかれは信じているのかもしれないが、このままでは、その「時期」は、きっと訪れることはないだろう。
 
 第三に、謙虚さがないようだ。ここが、本質であるように思う。かれは、人の話に耳を傾けない。問題点を指摘しても、どこで仕入れたか知らないが、あるべき論を語り、自分の主張を正当化する。一見、自信ありげで、頼りがいのある人物にも見える。しかし、他人を言いくるめた自己満足に酔いしれ、お客様の不満を見過ごしてしまう典型的なタイプである。
 
 自分のやり方や製品に自信を持つこと。そして、思い込んで邁進することは、称賛されてしかるべきである。しかし、回りやお客様の声に耳を傾け、その考えを他人の目線で客観的に評価し、修正してゆくことができなければ、お客様に受け入れていただける言葉は、生まれてこない。そんな、謙虚さが、ビジネスのチャンスを引き寄せるものだと思う。
 
 私は、研修で常々申し上げているが、「お客様8割、自分2割が、会話の黄金比率」であると。
 
 言うまでもないが、話を聞くより、話すほうが気持ちがいい。だから研修の講師などは、究極のエンターティメントを楽しんでいると申し上げても過言ではない(笑)
 
 お客様に満足していただくためには、お客様の話に100%の時間を割くのが理想かもしれない。しかし、それでは仕事が進まない。そこで、2割という時間使い、お客様に話したい、伝えたいという気持ちを引き出し、彼の伝えたいことを整理してゆくのである。つまり、自分の2割は、錬金術師の治具であり、お客様の8割は、金の鉱石ということになる。
 
 提案とは、「お客様の課題を解決するための手段とその意思の表明」である。その起点にあるお客様の課題を明らかにしないままに、提案などできるはずがない。
 
 自分たちの製品やサービスについての説明資料は、お客様の課題を聞き出すきっかけとして、まずは利用すべきである。買ってもらう商品の説明ではない。
 
 パンフレットを見せながら、「こんなことにお困りではありませんか?」、「こんな機能があれば、仕事が楽になるのではありませんか?」と使う分には、役に立つだろう。
 
 それをきっかけに、「・・・ということは、こういうことへの取り組みはやらなきゃいけないとお考えなのでしょうか?」となるだろう。だんだんと、客様の核心に迫ることができる。
 
 また、お客様について、事前に調べておくことも大切だ。こんな業種業態、業績であり、競合他社は、製品やサービスは・・・じゃあ、きっとこんな課題があるはずだ。そんな仮説を携えて、お客様に赴く。それを一気にひけらかすのではなく、小出しにしながら、お客さの話を引き出してゆくことも大切である。
 
 時には、沈黙の罠(わな)を仕掛けてみてもいいだろう。なるほど・・・といながら、腕組みをして、よくわからいふりをして、黙ってしまう。人は、話したい、教えたい衝動を抑えることは難しい。つい口を滑らせてくれるかもしれない。
 
 とにかく、お客様の話を聞き出すことが全ての起点であると心得るべきである。お客様は、自分の課題を話ながら、自分で課題を整理することになる、そして、お客様自身にもその解決の必要性が、意識に昇る。
 
 こちらが、押し付けた課題ではなく、お客様が、自ら課題の存在を意識し、課題解決の必要性を自覚することこそ、課題を明らかにするということ。この前提なくして、提案は効力を発揮しない。
 
 提案営業とは、究極の御用聞き営業である。まずは、お客様の御用=解決してほしい課題を引き出すことに徹すること。それがあって、初めて提案のチャンスを手に入れることができる。 

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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

4件のコメント
  • み~

     まったくこの方に同感です。
    「お客様8割、自分2割が、会話の黄金比率」、まさにそうだと思います。
    ただ、「沈黙の罠」は、わたしは、使いたい手段ではありません。

    2012年02月20日

  • む〜

    この方・この会社ではない、どなたかどこ社かでまったくおんなじ論評を読んだことあります。
    それもかなり以前に…

    2010年09月29日

  • 田舎おやじ

    しかし、回りの〜は 周りのつまり周囲のという意味ではないのですか?

    2010年09月28日

  • piko

    も一回読み直してみ
    あなたこそズバリ↓

    >人の話に耳を傾けない。問題点を指摘しても、どこで仕入れたか知らないが、あるべき論を語り、自分の主張を正当化する。

    2010年09月28日

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