売れないことのいいわけ:「営業力不足」

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-10-17 09:16:32

 「営業は、新規のお客様を見つけてくればいいんですよ。その後は、私たちデリバリー部門が引き受けますから。うちの問題は、その営業が、お客様を引っ張ってこれないことにあるんですよ。営業力不足。そこに問題があるんです。」

 ある中堅SI事業者のデリバリー部隊を統括する役員のコメントです。私は、彼にこんな質問をしました。
 
 私 :「ところで、既存のお客様の深掘りは、だれの責任なんでしょうか?」
 
 役員:「それは、私たちの責任です。マネージャーやリーダーが、その責任を担っています。」
 
 私 :「なるほど・・・ところで、それはうまくいっていますか?」
 
 役員:「・・・。実は、こちらも必ずしもうまくいっていません。以前は、そんなことはなかったんですが・・・。」
 
 営業が新規顧客開拓に責任を持つ、そして、事業部が、既存顧客の深掘りに責任を持つ。この役割分担は、多くのSI事業者で、昔から採用されています。どうも、この仕組が、最近うまく機能していないように感じています。
 
 お客様の業績が伸び、それに軌を一にしてSI事業者の仕事も増えていった時代。デリバリー部門のマネージャーやリーダーは、デリバリーを確実に仕上げることで、お客様の信頼を得る。するとお客様は、社内の事情も、気心も知れた同じ会社(=人)に任せた方が楽です。頼むべき仕事もたくさんあります。それではと云うことで、リピートする。SI事業者は、そうやって仕事を継続し、拡大することができました。
 
 この時代の案件獲得の手段は、「デリバリー業務において、QCDを確実に達成すること」だったわけです。つまり、デリバリー部門のマネージャーやリーダーの本来の業務と一致しているわけで、余計な仕事(=営業活動?)は、しなくても、自分の仕事をきちんとこなすことで、既存顧客からの案件獲得/拡大は、可能な時代でした。
 
 しかし、今はどうでしょうか?お客様の業績が伸び悩み、ITもそこそこ行き渡りました。そんな中で、SI事業者にお願いする仕事が、かつてのようには増えません。また、景気動向に神経質になっている企業は、内部留保を拡大する経営施策をとり、新規開発案件を押さえています。また、コスト削減は、リーマンショック以来、我が国企業の基本に位置する意志決定基準となり、経営の意志として、競合によるコスト競争を当然と考えるようになりました。情報システム部門の現場にしてみれば、これは面倒な話です。「よろしく!」−「はいわかりました!」以上・・・ですまなくなったのです。
 
 また、お客様は、恒常的に低コストで運用できるシステムを模索しています。これには、「これしかない」という答えが用意されていないです。お客様もどうすればいいのか、答えを探しているのです。
 
 このような現実を考えてみると、既存顧客から案件を継続的に増加させるためには、目の前にあるデリバリーを成功させるだけは、不十分なのです。競合に勝つための方法を考え、提案しなくてはなりません。しかし、単金だけに着目しても、クラウドやオフショアという新たな競合の出現に対抗しなければなりません。
 
 もはや、「デリバリー業務において、QCDを確実に達成すること」だけでは、リピート案件の獲得/拡大は、容易なことではなくなったのです。
 
 「営業が新規顧客開拓に責任を持つ、そして、事業部が、既存顧客の深掘りに責任を持つ。」は、お客様の業績も右肩上がりで、それにうまく対応することで、業績を上げることができた時代は、効果的な体制だったように思います。
 
 しかし、時代は変わりました。今となっては、この方法は、必ずしもうまく機能しないように思います。
 
 このブログでもたびたび取り上げていることですが、営業職と技術職、あるいは、営業部門と技術部門の役割を、この時代の変化に即した仕組に変えることを考えてみてはどうでしょうか?
 
 「営業力強化は、営業職の能力強化」という、単純思考を捨てるべきです。会社の文化や風土、組織の役割分担まで踏み込んで、営業という仕事をとらえ直す時期にきているのではないでしょうか。技術者も技術力やプロジェクト管理能力を高めることだけではなく、広い意味での営業力を身につけさせるべきではないでしょうか。
 
 確かに、今までのやり方のほうが、経験的にわかっていることですから居心地がいいのはよくわかります。しかし、過去の栄光は、遠い昔の輝きであり、そのときの「常識」は、もはや「非常識」となっているということ。そういう時代になったということを謙虚に受け止めるべきでしょう。
 
■ iSUC新潟大会で話をさせていただきます。
 
 以上のような変化の中で、私たちは、どうすればいいのでしょうか。そんなこれからの営業のあるべき姿を考えようと、私たちは、「ソリューション営業モデル研究会」を立ち上げました。
 
 この研究会は、いまだ定まらない「ソリューション・ビジネス」の正体をまずは、きちんと定義しようとしています。そして、お客様に認められ、感謝されるソリューション営業活動とは、どのようなものなのかを体系化して、モデル化しようという取り組みを始めました。また、営業現場の実践に使える「ソリューション営業実践マニュアル」も作ろうと思っています。
 
 既に30社を超える大小のソリューション・ベンダーの皆さんが、ボランティアとして、名前を連ねています。

 「営業の仕事とは、お客様の価値を最大化することを、最大のコストパフォーマンスで実現すること」と、私たちは考えています。

 そんな営業の仕事の「あるべき姿」とそれを実践するための具体的な方法を「個人の能力」、「組織の成熟度」、「営業活動のプロセス」という切り口から体系的に整理しようと考えています。
 
 ご興味があれば、どうぞお問い合わせください。また、10月20日(水)(15:15-16:15)に新潟で開催されるiSUC(IBMユーザーの研修会)にて紹介させていただきます。よろしければ、おいでください。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

1件のコメント
  • 元エンジニア

    はっきりいって、甘いですね。
    もともとたいした技術もないのに食えて会社が拡大したことが間違いだったのです。
    建設業と同じです。業者が多すぎ。
    プライベートクラウドなんて、嘘をついてでもお客に売りつける芸当は遅かれ早かれ
    バレます。
    30社以上集まって傷の舐め合いしてもなにも出ません。
    業界淘汰、技術のない会社は倒産する前に清算するべきです。

    2010年10月17日

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