お客さまの困ったをメニューにする

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2010-12-18 10:39:35

 「斎藤さん、うちの連中には、危機感が無くてねぇ。どうしたものかと思っているんですよ。」 

 ある中堅SI事業者の社長が、ため息をつきながら、こんな話をしてくれました。 

 「確かに、売り上げは上向いている。でも、結局安い見積もりで受注を支えているにすぎないんですよ。利益なんか、ほとんどでていない。このままでは、いずれは、オフショアに飲み込まれて、ぎりぎりでも受注がとれないかもしれない。現場の連中が、そのことを分かってない訳じゃないと思うが・・・」

  現場の営業担当者と話してみると、彼らなりに「危機感」は持っている。しかし、方策が見いだせない。とはいうものの何もしないわけにもゆかず、がむしゃらに仕事をこなしている。サボっているわけでもなく、これでいいと思っているわけでもないのです。

  経営者も、現場も、共にこのままではいけないと考えています。しかし、どうもその思いが、お互いに通じ合っていないように思います。

  経営者は、何もしない現場を危機感がないと嘆いています。現場は、有効な方策を打ち出せない経営者に不満をいだいています。思いは同じであるにもかかわらず、お互いにそれぞれの対応を期待しているにすぎません。そんな閉塞感が、あるようです。

  では、この閉塞感をどうすれば、打開できるのでしょうか。私は、自分たちの強みを改めて、棚卸しし、再認識してみることだろうと思っています。つまり、自分たちの強みを整理整頓し、しっかりとこれを自覚し、自信を持つ。そして、それを新たな武器にする方策を考えてゆく。そんな取り組みをしてみるべきではないかと思っています。

  いま、いくつかの中堅SI事業者の営業現場で、アカウント・プラン作りのお手伝いをしています。これら企業に共通することは、自分たちには、「これといった強みがない」という思い込みです。

  大手システム・ベンダーのような競争力のある独自の製品を持っているわけでもなく、絶対的な技術力を持っているわけでもない。自分たちには、他社に勝てる武器がない。今までは、大手に比べて安いと言うことで仕事がとれていた。しかし、それとて大手のオフショア拡大で金額面での競争も厳しくなってきた。もはや自分たちには、何の強みもない。

  といった思い込みです。

  確かに、マクロにとらえれば、その通りと言えなくもありませんが、自分たちの担当するお客さまについて、ひとつひとつ見てゆくと、本当にそうだろうかとおもうことがあります。ミクロな目線でとらえてみると、決してそんなことはなのです。そのことに気付くと、「なるほどうちも捨てたものではないなぁ」と自信を持たれることも少なくありません。

  大手ベンダーの下請けとして仕事をしている企業の多くは、特定のシステムやサブシステムの開発、維持・メンテナンスに従事している場合も多いようです。このような場合、システムと人が相互依存の関係にあり、両者が一体として存在しています。従って、そのシステムの使用をやめたり、新しいシステムに統合されてしまうと、それに伴って、人もいらなくなり、仕事が無くなります。このジレンマを断ち切らない限り、お客さまの都合で需要は左右され、ビジネスのイニシアティブをとることはできません。

  そこで、こんな質問を投げかけてみました。

  「ところで、なぜ、みなさんが、このシステムの保守・運用を任されているんですが。なぜ、お客さまは、他社に変えずにみなさんに仕事をまかせているのでしょうか。」

  すると、「開発に関わったので、お客さま以上にシステムや業務をよく知っているから。」、「お客さまの担当者と一緒になって、現場でやっているから。」、「仕事を減らさないためにいろいろと工夫して、改善や効率化の工夫をしているから」・・・様々な答えが返ってきました。現場を支える力になっている自負ががみなぎっています。

  「それが強みじゃないですか。それこそが、みなさんの武器になるんじゃないですか。みなさんは、お客さまのシステムの現場を知っている。現場の困ったに誠実に応えようとしている。ならば、次のようなことをしてみてはどうでしょう。」と3つのステップの提案を投げかけてみました。

  「まず、自分たちに、どのような能力があり、何ができるかは、考えず。お客さまの「困った」、「こんなコトをしてくれたらほんとうに助かる。」を洗い出し、整理してみませんか。自分たちにできることなんか、お客さまは求めていませんよ。お客さまは、自分たちの困ったを解決してほしい。だから、その「困った」をメニューにしてみる。できるできないは、後で考える。まずは、その目線で考えてみてはどうでしょうか。」

  「次に、それをサービスとして整理してみましょう。自分たちができるかできないかは、考える必要はありません。まずは、お客さまの「困った」を解決するサービスはなにかを客観的に考えることです。」

  「最後に、それをわかりやすい図表に体系的に整理してみることです。何となく、当たり前にやってきたことです。これを体系的な整理整頓する。それは、そのお客さまがしてほしいことのサービス・メニューだから、必ず真剣に聞いてくれるはず。間違えなく、ビジネス・チャンスを見いだすきっかけになるはずです。」

  「こうやって整理してみると、改めて、自分たちのできることできないこと、強み弱みが整理できます。そのできないこと、弱みを補完する方策を考える。新たに人を採用するもよし、外部から調達するのもいい。仕事になるんですから、それが商品になるのですから、心配する必要はありません。大切なことは、お客さまがしてほしいことを整理し、その対応のリーダー・シップを握ることです。そうすれば、お客さまは、みなさんを必要な存在として認めてくれるでしょう。ビジネス・チャンスも広げることができるはずです。」

  お客さまの「困った」を整理する。そうすると、特定のシステムに対してだけだと思っていた自分たちの価値が、それから切り離され、他でも使える価値として見えてきます。

  このような取り組みをいくつもの担当顧客について行なっていくと、多くのお客さまで共通した「困った」や「してほしい」が見えてくるものです。それを会社全体で改めて整理してみると、立派なサービス・メニューになるようです。

  これは、大手ベンダーにはできません。現場に入り、現場を知っているからこそ、できること。その現場力こそが、武器になるのです。

  こんな取り組みを続けていると、「そうか、自分たちにもこんな強みがあったんだ!」と気付くことになります。これを武器に、自信を持って、大手にはできない強みを発揮できるのではないかと思っています。

  漠然と「危機感」を意識しているだけでは、なんの進歩もありません。かといって、新たなスキルや製品で勝負をすることも容易なことではありません。大手ベンダーと同じものがないからと言って、自分たちに強みがないと考える必要はないように思います。

  どうでしょう。改めて、自分たちの足元をしっかり見つめ直してみては。つまり、自分たちの持っているスキルや製品を資産としてとらえるのではなく、長年、お客さまに関わってきた現場力と信頼関係を資産と考えてみるのです。これを改めて、掘り起こし、整理してみる。自分たちができることの目線ではなく、お客さまの「困った」の目線で考えてみる。思わぬ強みが見えてくるかもしれませんよ。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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