競合に対処する3つの方法

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2011-02-26 20:00:00

 IT業界にも、やっと明るい兆しが見え始めたようです。リーマンショックをきっかけとした受注の劇的な落ち込みも、お客さまの投資意欲の回復で、あちこちで人手が足りないという声が聞こえてきます。
 
 しかし、その一方で単金を値上げすることは未だ難しく、仕事量は増えたが、売上げや利益が伴わないと言った嘆きも聞こえてきます。

 この背景には、ニューノーマル(新しい常識)の定着があるように思います。
 
 リーマンショックをきっかけに、お客さまの値引き要求に応えることで仕事をつないできたSI事業者に対し、「同じ仕事がこの単金できるなら引き続きこのままで・・・」という新しい常識が、お客さまの意識の底にはあるように思います。
 
 加えて、グループ内製を優先する大手事業者の動きです。リーマンショックをきっかけに大手事業者は、中堅中小の買収や合弁を進めました。その結果、コスト削減の手段として、グループ内製を積極的に活用し始めています。また、オフショア利用の拡大も単金の頭を押さえつけています。
 
 もうひとつ、単金を押さえている大きな要因として考えられるのは、競合の常態化です。
 
 お客さまの業績が伸び、需要が供給を上回っている時代にあっては、お客さまは、競合を避け、各社に業務を棲み分けさせることで供給の安定確保を図ってきました。しかし、需要の激減で、もはやこの構図は、成り立たなくなってしまったのです。つまり、積極的に競合させることで、業者を減らすと共にコスト削減を図っているのです。景気が回復しつつある中でも、この常識だけは、お客さまにしっかりと根付いてしまった感があります。
 
 競合は、今に始まったわけではありませんが、ITのコモディティが進む中、機器やサービスで絶対的な競合優位を打ち出すことは、従来にも増して難しくなってきました。また、クラウドの普及は、ITリソースやサービス調達のコストを引き下げる要因となり、新たな競合として、その存在感を高めつつあります。
 
 このような競合が当たり前の時代に、どうすれば、勝ち残ることができるのでしょうか。今日は、そんな競合の時代を勝ち抜くための方法を考えてみようと思います。

1.案件に関心を持つのではなく、お客さまに関心を持つ

 先日、あるSI事業者で、失注の原因を考える検討会が立ち上がりました。確実にとれると考えていた案件が、たて続けに何件も失注してしまいました。なぜそんなことになったのかを明らかにし、今後の教訓にしようということで、はじまったものでした。
 それら失注案件の受注の経緯を見ていて、ある共通点があることに気がつきました。どれも、お客さま側から、「これを御願いしたいので、提案と見積もりを御願いしたい」という要請やRFPが、案件を認識したきっかけとなっていることでした。
 
 つまり、お客さまは、依頼すべき仕事の内容や範囲を決定事項とし、依頼してきていたのです。このようなケースの場合、まず間違えなく、競合他社にも同じ話が行っているはずです。これはもう、はじめから競合前提の話しであり、結局は金額や要員手配などの諸条件での競合に競り勝たなければならない状況にあったのです。残念ながら、こちらが、内容で差別化できる余地は、極めて限られていたのです。
 
 もちろん、これだけが失注の原因と申し上げるつもりはありません。ただ、お客さまから提示された案件が起点となって始まるビジネスは、競合優位を発揮する余地は極めて限られています。当然、厳しい競合に晒されることも避けられません。
 
 このような事態を回避するためには、案件を創ることに積極的に関与することだと思います。つまり案件ではなく、お客さまの経営や業務に関心を持ち、案件作りに自ら積極的に関与することです。お客さまは、今どのような状況にあり、どのような課題を抱えているのだろうかと調べ、考えることです。
 
 なるほど、このような課題があるのならば、きっとこのようなニーズがあるあるに違いない。ならば、こんな取り組みを始めるべきではないかと、お客さまに持ちかけてみる。そうやって、お客さまの「困った」や「何とかしなくては」を解決するための方法をお客さまと一緒に考えてゆくのです。
 
 決ってしまった案件に対処するのではなく、案件を創ることそのものに関与すれば、ビジネスのイニシアティブをとることができるようになるはずです。そうなれば、競合を回避できるかもしれません。また、仮に競合となっても、常に優位な立ち位置を確保できるようになるはずです。

2.ウエットな情報で、競合優位を拡大させる

 お客さまの情報には、二つのタイプがあります。ひとつは、公開情報、または、ドライな情報と言われるもので、ネットや新聞などで、自らあるいはニュース記事などで公開されてい情報です。もうひとつは、非公開情報、または、ウエットな情報です。公にはされていない、検討途中の情報やキーパーソンの個人的意見などが、これに当たります。
 なぜ、このような情報をウエットというかというと、人間関係が、ウエットになる、つまり、気楽に個人のことなどが話せるような間柄らにならないと聞き出せない情報という意味で、そうではなくても、誰もが手に入れられるドライな情報と区別しています。

 表現を変えれば、お客さまが口を滑らせた情報や貴方に専門的な知識や見識があり、自分の意見をまとめるために相談をされるようなときに得られる情報がこれに当たります。
 
 公にされない情報は、それが事実であればと言う条件はつきますが、あまり知られたくない重要な情報である場合が多く、何らかの新しいプロジェクトの発足や戦略的な意志決定に関わるものよくあります。このような情報を競合他社に先駆けて、いち早く手に入れることができれば、先んじて有利なシナリオを描き、キーパーソンへのアプローチや提案活動を行なうことができます。
 
 そうなれば、競合他社に気付かれないうちに案件を手に入れることができるかもしれません。また、仮に競合になっても、競合が知らないお客さまの手の内が分かっていれば、こちらに有利な提案ができることになります。
 
 ウエットな情報を手に入れるためには、お客さまのキーパーソンと日頃からの信頼関係を構築しておくことが必要です。加えて、貴方が相談されるに値する知識や見識を持っていれば、ますますチャンスは広がるはずで。それ以外にもいくつかのテクニックが役に立つのですが、これについては、いずれどこかで話しをさせていだこうと思います。

3.わかりやすさやきめの細かさで勝負する

 同じ商品を複数の企業で販売していることはよくあります。ところで、この多数の選択肢の中から、お客さまは、どうやって特定の一社を選定し、発注するのでしょうか。もちろん、その要因は、決してひとつではありません。しかし、他社に比べてきめ細かく、丁寧に、わかりやすく説明してくれたり、相談に乗ってくれる会社の評価が、高くなることは間違えないと思います。
 
 競合状況にあっては、このような事態はむしろ避けられず、機能や性能、サービス内容や価格では、なかなか明確な差別化のポイントを見つけることができません。このような時に、競合優位を発揮するためには、お客さまにとって、かゆいところに手が届くように、きめ細かく、丁寧に、美しく、わかりやすい説明や資料が提供することが、有効な場合があります。
 
 内容が同等であるとすれば、このような気配りは、お客さまに親しみと安心感を与えることになります。当然、お客さまの意志決定は、こちらにとって有利な方向に働くはずです。
 
 もちろん、本来は、中身で勝負すべきであり、中身に魅力が無くて、これだけで勝負しようとしても、それは本末転倒な話しです。しかし、内容で差別化が難しいとすれば、このあたりが、勝敗の分かれ目になることもあるでしょう。
 
 以上3つの方法の中で、強いてどれかひとつだけを選べと問われれば、わたしは迷わず、最初の「案件に関心を持つのではなく、お客さまに関心を持つ」を上げさせていただきます。その理由は、このようなことは、お客さまを成功させたい、困ったを解決してあげたいという、お客さまへの愛情や思いやりがなければ、できない行為だからです。案件は、結果としてついてきます。
 
 このような取り組みは、お客さまも多いに助かるはずです。お客さまは、貴方に感謝し、信頼も深まるはずです。そうなれば、ウエットな情報も手に入りやすくなります。さらに、お客さまの目線も理解できることになれば、こちらのお仕着せではなく、お客さまに納得感を与えられるきめ細かさも演出できるようになるはずです。
 
 競合に打ち勝つというよりも競合を回避する方法と言うべきかもしれませんね。見方を変えれば、このような関係が構築できれば、お客さまから見た貴方は、単なる出入り業者ではなく、信頼し相談できるビジネス・パートナーとなっているのではないでしょうか。



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