感性なき営業に、営業力を期待しても無理

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2011-04-30 09:30:00

 先日、ある中堅SI事業者の社長と会食の機会があった。彼は冒頭、「斎藤さん、うちも、やっと4月から営業部を作ることにしました。これで、営業力の強化を図りたいんですよ。」
 
 私は、「やっとですか?」と、つい本音を漏らしてしまった(笑)。
 
 この会社ばかりではないが、ここ数年、営業部門を新設する中小SI事業者が増えたような気がしている。それ以前は、営業などいなくても、デリバリーの責任者やPMがお客さまの窓口となり、仕事を回すことができていた。また、「営業」という役職や組織があっても、事務処理や調達、トラブルへの対応などが、主な仕事であり、新規のお客さまや案件の開拓には、あまり時間をかけることはなかった。まあ、既存のお客さまでも、十分に食べてゆけたこともあり、あまり重視する必要もなかったと言うべきかもしれない。つまり、売り込みなどしなくても、受注はとれていたのである。
 
 しかし、リーマンショックのあたりから、受注は、大幅に減り、危機感を募らせた経営者が、営業力を強化して受注の拡大を図らなくてはと、考えるようになった。
 
 それ以降、「営業部門を作り、営業職を任命した。」という話しをよく聞くようになったが、実態を見ると、単なる看板の掛け替えである場合も多かった。中には、技術部門の余剰人員の受け皿として、営業部門を作ったようなところもある。
 
 まあ、「肩書きは、人を作る」という側面もあるので、最初の一歩という意味はある。しかし、いまだ、この最初の一歩に、踏みとどまっている企業も少なくはないように思う。
 
 ところで、経営者が、まず彼らに期待したのは、「新規顧客の開拓」だ。既存顧客からの受注が、大きく落ち込んでしまった以上、新規顧客でその埋め合わせをしなければと考えるのは、自然な発想だ。しかし、マーケット全体が、縮小している状況で、まったくこれまでに関わりのない新規をとることなど容易なことではない。この当たり前を考えもせず、これができないことで、営業力のなさを嘆き、なんでそんなことができないんだと営業の現場に怒りをぶちまけてみたところで、それは、自業自得と言うべきだろう。
 
 競合優位という武器も持たせず、「営業力」という能力の育成にも投資せず、「おまえはもうベテランなんだから、お客さまのことは、よく分かっているだろう。」という精神論だけを振りかざし、素手で前線に立たせている。唯一武器と言えるものが、「大手より安い」という竹槍みたいな武器であったが、昨今は、オフショアの台頭で、それさえも効き目がなくなりつつあるようだ。
 
 そんな会社から、営業力育成の相談を受けることも多いのだが、閉口するのは、営業力をプレゼンテーションやコミュニケーション、提案書の作成方法などの表面的なスキルであると考えているところである。
 
 中小SI事業者の多くは、経営者、特に社長が、優秀な、そして、唯一の営業職である場合が多い。そして、彼らは、「営業」という言葉の意味がどうかはともかくとして、仕事をとってくることに執念を燃やし、お客さまとの関係作りや交渉に高い意欲や感性を持っている。そして同じものを、自分の部下である営業の現場に期待している。
 
 確かに、そうあればいいのだが、だからあなたは、社長であり、彼らは、部下であるという当たり前の前提が、抜け落ちてしまっている。予めそのような意欲や感性が、備わっているのなら、こんな事態になるはずもない。そんなことを期待すべきではないだろう。
 
 だから、そういう人たちに、いくら表面的な「営業スキル」を学ばせたところで、それだけで、受注の拡大にはつながらない。営業という仕事の感性をたたき込むことなくして、営業力の強化は、あり得ないと思っている。
 
 こんなことを申し上げると、「また、精神論、根性論か」と言われるかもしれないが、そういうことでない。むしろ、感性を鍛えるためには、科学的であり、論理的であり、分析的でなくてはならないと思っている。
 
 どんな仕事にも手順がある。しかし、できる人は、それが体験的、感覚的に、からだに染みついている。しかし、それを因数分解して、ひとつひとつのプロセスに切り出して、説明することができない人が多い。
 
 それができない自分の能力のなさを棚に上げ、「なんで、そんなことが分からないんだ!」と怒鳴ってみても、それは、自分の能力のなさの原因を部下に押しつけているだけであり、なんの解決にもならない。押しつけられた方もたまったものではない。
 
 つまり、感性とは、その構造を体系化でき、プロセス化でき、分析的に整理できてこそ、初めて相手に伝えることができる。営業という仕事の成功体験や自分の描くあるべき姿をプロセスとして要素分解し、その意味や仕事の手順を相手に伝える。相手は、それを「ものさし」として、自分の仕事にあてがってみる。すると、自分には、何ができていて、何ができていないかに、自分で気付くはずである。
 
 できているとこについては、安心できるし、できていないところは、何とかしなければと思うはずである。それが、その人のモチベーションとなり、自発的な改善や成長を引き出すことになる。
 
 それが、感性を伝えることではないかと私は考えている。
 
 残念ながら、このような理性的な伝え方をしても、自分の問題として受けとめようとしない人は、確かにいる。しかし、そういう人は、どんな仕事をしても成果を期待することはできないのだから、はじめからあきらめるしかないのかもしれない。ほんとうに、残念ではあるが・・・
 
 感性とは、人間ひとり独りの個性であり、それを他人が強要することはできない。だからこそ、理性的に、感性を分解し、本人の意志により気付かせ、自発性を引き出し、自らの意志で行動を変化させる。このような取り組み無くして、本物の感性を身につけさせることはできないだろう。
 
 こういう時代だからこそ、経営者は、即効性を期待する。だから、表面的なスキルや知識で何とかしたいと思う気持ちも理解できる。しかし、それだけでは、本物の営業力の強化は、図れない。
 
 即効性のある武器と教育、そして、感性の強化を合わせて行なうべきだ。この両方の施策を重ね合わせて実行できてこそ、真の営業力強化につながるのではないだろうか。
 

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 先日の4/27(水)に第6期の最終講義を終えましたITソリューション塾。25名の志の高い皆さんと共に、相互研鑽の機会をいただきました。ご参加いただきました皆様には、改めて御礼申し上げます。

 さて、引き続き、第7期を下記の要領で開講致します。
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 5月25日(水)より7月27日(水)/6月最終週休講/全9回
 会場 東京・市ヶ谷(アシスト社セミナールーム)
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 詳しくは、このメールへの返信にてお問い合わせいただくか、このホームページをご覧ください。
 
 次回は、今回にはなかった「コミュニケーション&コラボーション」を追加すると共に、各社のビジネス戦略を整理し、自分たちの立ち位置をしっかりと自覚していただけるようにと考えています。また、時事の話題にも触れながら、最新のITトレンドを確実につかんでいただけるようにするつもりです。

 また、お客さまや社内で使えるプレゼンテーション資料の完成度をいっそう高めようと、あれこれ頭を悩ましています。もちろん、説明資料のパワーポイントは、ソフトコピーで提供させていただきます

 さて、次回予定している「コミュニケーション&コラボーション」は、facebookやTwitterに代表されるマイクロブログ、CMSなど、新たな情報活用の手段を体系的に整理してみようというものです。特に、震災以降、ワークスタイルの変化が叫ばれる中、大変注目されている分野でもあり、ビジネスにどうつなげるか
という視点から、整理させていただきます。

【重要】-------------------------------
 なお、会場の制約上、上限を25名とさせていだきます。ご検討という段階
でも、まずは「ご意向表明」だけでも、お送りいただければ幸いです。
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 なにとぞよろしくお願い致します。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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