「アウトプット思考」のすすめ

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2011-05-21 09:00:00


 「うちも、そろそろクラウドのことを真剣に検討してみようかと思うんだよ。」

 お客さまである情報システム部長から、こんな話しがあったなら、あなたは、どのように答えるだろうか。
 
 まずその前に、情報システム部長は、何を「クラウド」と言っているのだろうか。仮想化のことだろうか、それともデータセンターにシステムを預けて、ネットワーク越しにシステムを利用すること。いや、salesforce.comのようなアプリケーション・サービスを利用するというのだろうか。
 そもそも、「クラウド」とは、なんだろう。既存のシステムを仮想化し、集約すれば、それで「クラウド」になるのだろうか。データセンターにシステムを預けて利用するホスティングとは、何が違うのだろう。
 
 いやいや、それ以前に、なんのために「クラウド」を検討したいのだろう。コスト削減のため、BCP対応のため、人手不足への対応・・・では、「クラウド」を使えば、その目的は、達成できるのだろうか・・・
 
 「マシンが多すぎて、今使っているデータセンターでは、入りきらなくなっているんだけど、仮想化すれば、どうにかなるだろうか。」
 
 システム運用担当の部長から、こんな相談を持ちかけられた。貴方なら、どんな提案ができるだろうか。
 
 ところで、部長は、「仮想化」といっているのだが、何を「仮想化」すれば、マシンを減らすことができると考えているのだろう。「仮想化」と言えば、当然サーバーのことなのだろうが、この会社では、圧倒的にストレージの数が多い。サーバーを「仮想化」し集約しても、限界がある。とすれば、ストレージはどうすればいいのだろう。ストレージの仮想化も当然考えるべきだろうが、容量を減らすことは容易ではない。なにかいい方法が・・・そういえば、シンプロビジョニングという話を聞いたことがある。それが使えるのだろうか。
 
 ところで、ネットワーク接続はどうなるのだろう。サーバーも目的によって異な
るネットワーク構成の中で運用されているが、それに対応するためには、どうすれば・・・
 
 そもそも、サーバーを仮想化するにしても、Hyper-Vなのか、Xen Server、それともvmware・・・それぞれの違いは?どれが、このお客さまに最適なのだろう。
 
 営業である貴方は、お客さまのこんな「ささやか」な疑問に、応えられるだろうか。それ以前に、お客さまの言っている「クラウド」や「仮想化」とはなにかを理解しているだろうか。これが、理解できていなければ、お客さまの言っていることが、理解できないも同じである。たとえ、「クラウド」や「仮想化」という言葉は知ってはいても、それが、どのような関係にあるのか、分かっていなければ、お客さまに適切な質問などできるはずがない。

 話は変わるが、今年の年初、日本IBMの社長が、「今年はメインフレームにフォーカスする」と宣言した。いったいこれは、どういうことなのだろう。レガシーマイグレーションが、喧伝される中で、いまさら、そんな古くさいメインフレームなどで、ビジネスを牽引することができるのだろうか。日本IBMもついに売るものがなくなって、悪あがきしているだけなのだろうか。
 
 しかし、現実を見てみると、米国でのメインフレームの売れ行きは好調で、米IBMの第4四半期実績でも前年同期比69%増という実績に達している。これは、いったいどういうことなのだろう。
 
 世の中は、大きく動いている。特にIT業界の動きは、実にスピードが速い・・・というが、本当にそうなのだろうか。
 
 世の中には、様々な動きがある。その全てを追いかけることなどで、できるはずはない。しかし、その根底にある大きな流れ、つまり、トレンドというものは、それほど急激に変化しているわけではなく、比較的緩やかに流れている。表面に見える変化、つまり、新製品や新技術といわれるものも、そんなトレンドの変化から、かけ離れてしまうと、決して普及はしない。そんな目線で、表面に出てくる話を聞いていると、それが、決して、突拍子もないものでないことが分かる。
 
 IBMが、「今年はメインフレームにフォーカスする」と聞いて、「なるほど。妥当な話しですね。」と、私は納得した。そして、その方法も自ずと想像がついた。
 
 「そんなことが、どうして理解できるんですか?」と質問されることがある。もちろん、私が、IT業界の全ての事情に精通しているわけではない、世の中の情報の全てを知りうるなど、そんなことなどできるわけがない。それでも、ある程度の常識は、心得ているつもりでいる。

 それを可能にする手段が、「アウトプット思考」である。一言で言えば、「書いてみる、描いてみる」ことで考えるということだ。
 
  例えば、「今、我国のSI事業者は、どんな課題を抱えているのだろうか」と疑問を持ったとしよう。私は、それをノートに殴り書きしながら、頭の中を整理する。分からなければ、ネットで検索して、人の意見を参考にすることも多い。そして、書き上げたのが、この一枚のメモである。


  
 チャートができあがったとき、この芸術的作品に、私は、大いに感動した。「これだよ、これだよ・・・こういうことなんだ!」と。しかし、多分、これを他の人が見ても、何が何だか分からないだろう。そこで、これをパワーポイントで清書したのが、次のチャートだ。
 


 清書をする過程で、またいろいろな気付きがある。「なるほど、こういう単語を使った方が、わかりやすいな。」、「配色は、こちらの方がいいかもしれないなぁ」・・・つまり、自分以外の他人に分かってもらうためには、どうすればいいだろうかを、徹底的に考えるわけである。それで、できあがったのがこのチャートだ。
 
 (1)疑問を持つ
 (2)調べたり考えたりしたことを、とにかく描き出してみる
 (3)自分以外の人に分かってもらえるためには、どう表現すればいいかを試行錯誤しながら、清書する。
 
 これが、「アウトプット思考」だ。
 
 特に、「自分以外の人に分かってもらう」ということを意識して欲しい。自分が分かったつもりでも、自分の考えを他人に正しく伝えられなければ、ビジネスの世界では、なんの役にも立たない。他人に伝えるためには、どうすればいいかを追求することで、ものごとの構造や本質に気付くことも多い。
 
 ちまたには、情報が氾濫している。そんな情報の氾濫の中でも、「えっ、どうして?」、「これはいったいどういうことだろう」と思うことに出会う。そんなときに、この「アウトプット思考」を試みてみる。すると、疑問に思ったそのことが理解できるだけではない。「なるぼど、こういうところにつながっているのか」とか、「なるほど、こういう構造が隠れていたんだ」と気付かされることも多い。
 
 そういう繰り返しが、自分の常識を養ってくれるのだろうと思っている。
 
 新入社員研修で、「どうすれば、こんなことが分かるようになるんですか?」と質問されることがある。そういうときには、迷わず「アウトプット思考」をお勧めしている。是非、お試しあれ。
 

 Facebookで、これ一枚シリーズを公開しています。私が疑問に思ったITに関わる様々なキーワードを自分の理解のために「アウトプット思考」した結果です。もし、「なるほど」とご理解いただければ、私は理解できていると言うことでしょう(笑)。ぜひ、そんな私の知的訓練にご協力いただければ幸いですww・・・

*お知らせ*

 ご案内させていただきました「ITソリューション塾」は、おかげさまで、定員に達しました。有難うございました。いつものように志の高い皆さんにお集まりいただき、こちらも身の引き締まる思いです。徹底した「アウトプット思考」で、私もしっかり勉強させていだこうと思っています(笑)。
 
 次回は、9月の開催を予定しています。改めてご案内いたしますので、その折にはご検討ください。 

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

1件のコメント
  • メインちゃん

    メインフレームで動くものを考えてみると、いいのでは?
    昔のイメージで、いまのメインフレームは語れないので。

    2011年09月11日

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