本物のおじさんになろう。そうすれば若者もついてくる。

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2011-07-09 11:00:00

 新入社員研修の講師をしていると「今年の新人はどうですか?」とよく聞かれます。しかし、本当のところ何が違うのかよく分からないのです。
 研修にもまじめに取り組んでいるし向上心も高い。自分のこと、会社のことをまじめに考えているようです。多分、宇宙人達とどうつきあえばいいのでしょうかという質問なのでしょう。新人を迎える上司や先輩としては、不安であるのも分かりますが、ことの本質はもっと別のところにあるのではないかと思っています。
 
 そう言いながらも、強いて自分の頃との違いを挙げれば、学生と社会人とのギャップの大きさを、とても強く意識しいることかもしれません。
 
 例えば、ビジネス・マナーへの過剰な気遣いです。服装や髪型、礼儀作法や言葉遣い、中には、自分のにおいが気になるので香水をつけた方がいいのかと質問した男性もいました。見た目については、私たちの時代は、お金もなかったしおしゃれの選択肢も少なかったので、そんなことを考えるセンスも余裕もありませんでした。豊かな学生時代を送ってきたからこその意識なのかもしれません。また、言葉遣いも「ファミレス言葉」などと言われ、自分の言葉使いに疑心暗鬼になっている人もいるようです。
 
 また、「OJT期間にやるべきこと」を書かせると、「先輩達と積極的に飲みに行く」とか「職場での人間関係を大切にする」と書く人がとても多いことに驚きます。裏返して考えれば、「そういうことが苦手なので、意識して頑張ります」ということなのでしょう。学生時代の友達や先輩後輩とは違い、会社という未体験の上司部下の人間関係をとても不安に感じているのではないでしょうか。
 
 中には、「同期との絆を大切にする」というものもありました。会社の中で本音で気楽に話し合えるのは同期の人間だけであり、小さなコミュニティから会社や社会という大きなコミュニティへ出て行くことへの不安の表れなのかもしれません。

 いずれにしても、どちらも人間関係をうまくやろうということを、とても強く意識しているように感じます。そういうことが苦手なのか、うがった見方をすれば、よく見られたい、ストレス無く過ごしたいという思いの強さの表れなのかもしれません。
 
 改めて、「人間関係」についての意識の違いを考えてみると、今の若者達には、私たち大人達の時代のような形式的上下関係や礼儀作法の尊重、男尊女卑の思想がまったくありません。先輩としての敬意は払うものの、仕事は仕事、プライベートはプライベートと割り切っている。男でも女でも、性の違いによる能力の差という思い込みはありません。おじさん世代よりも、ずっとドライでオープンなのです。
 
 一方、私たちおじさん世代は、あの辞任したどこかの国の大臣のように、席順や挨拶、座り方など、様々な形式について厳しい躾を受けてきました。また、男が上で女が下という暗黙の了解もありました。それができない若者達をしつけるのは当然と言わんばかりに、厳しく形式を求める。若者達は、よく見られたい、人間関係を大切にしなければと、形の上では従順ですが、その本音は自分の価値観とは大きく異なっているわけですから、それはもう大変なストレスでしょう。
 
 また営業の現場をみると、おじさん世代の上司は、高度成長期の成功により今のポジションを得た人がたくさんいます。彼らの時代は、お客さまに足繁く通えば、なにか仕事がもらえたのです。しかし、バブルの崩壊、リーマンショックと、ITが成長産業ではなくなった今、靴底を減らすだけの営業では仕事を増やすことができなくなりました。もっと戦略的に、もっと知的に頭を使わなくては競合との戦いに勝てない時代になったのです。
 しかし、その方法を知らない上司は、自分の存在証明のため、あるいは威厳を保つために旧泰然とした自分の成功体験を振りかざし、そのやり方を押しつけてくる。そして、うまくできなければ、「なんで俺の言うとおりにやらないんだ!だからうまく行かないんだ!」と部下の責任にする。部下にしてみれば、「あなたの言うとおりにやっていたら、もっと仕事になりませんよ」と思っているのです。
 
 お互いの疑心暗鬼、これもまた、若者にもおやじ世代の上司にも、大きなストレスになっています。そんな人間関係から生まれるストレスの積み重ねが、心の病の原因のひとつになっているのかもしれません。
 
 どうすれば、この問題を解決できるでしょうか。私は、おじさん達は若者達の気質や扱い方で気をもむのではなく、自分たちの置かれているビジネス環境や新しい時代の成長戦略を真剣に考え、それにふさわしい方法について、自分なりの思想をしっかりと持つことだろうと思うのです。自信を持って自分の考えを若者達に伝えること。それが、事態解決の最良の手段だと考えています。
 
 方法論や形式論を強要するのではなく、また、「俺の若い頃はなぁ・・・」と過去の栄光を振りかざし精神論やありがたい訓話を語るのではなく、今のビジネスやお客さまや競合他社への戦略について、自分なりに考えて、それを真摯に伝え、一緒に考えることです。その考えを押しつけるべきではありません。
 
 頭のいい若者達は、ちゃんとそれを理解できます。そして、今の時代にふさわしいやりかたを考えるでしょう。失敗もするでしょう、困難にぶつかることもあるはずです。そんなとき、いつでも聞いてもらえるという安心感を与えること。そして、答えを言う前に彼らの話を真摯に聞き、そして、自分の考えを自信を持って伝える。そんなセーフティ・ネットを作ることが、問題の解決には有効なのだろうと思います。
 
 「若者の気質や意識が変わったから、どうしようという」ではなく「時代が変わったから、だからどうしよう」という発想を持つべきです。それを考えることこそ、おじさん世代の役割です。若者とのつきあい方のテクニックより、本物のおじさんとしての価値を高めること。そうすれば、若者達もついてくるし、人間関係もうまくできるのではないかと思うのですが、いかがでしょう。


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