「世の中が変わったから」という言訳

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2011-09-03 07:30:00

 「ビジネスの環境が大きく変わってしまいました。どうもこれまでのようにはゆきません。」。

 「世の中が変わった」誰もが口にする言葉です。だからどうしたというのでしょうか。
 
 「最近の新入社員はこれまでとは違う」という話しもよく聞きます。じゃあ、昔はそうではなかったのでしょうか。
 
 これまでの歴史を振り返れば、変わらない時代などありません。変わるのが当たり前なのです。

 あたかも今が特別な時代かのように、「世の中が変わってしまった」からうまくいかない、理解できないと言うのは、なんともおかしな話しです。確かに、そう言訳をすれば、その場を取り繕うことはできます。また自分の精神の安定には役立つかもしれません。しかし、いったいそれが何の解決をもたらすというのでしょう。
 
 そんな言訳をする暇があれば、何が変わったかを冷静に理解することに時間を割くべきではないかと思います。いままでは当たり前と考えていたことが、もはや当たり前でないとすれば、何をどうすればいいかを考えるべきです。
 
 ITビジネスについてゆえば、明らかにこれまでのゼネコン型産業構造が変わろうとしています。日本国内の経済成長が開発や運用の需要を支えていた時代は終わりました。クラウド、オフショアなどのリソース調達の多様化は、大手システム・ベンダーの下請け仕事を支えていた企業にとっては、大きな試練になっています。

 また、これまでの「強み」が、必ずしも訴求力を発揮できなくなりました。例えば円高や新興国の台頭は、調達手段のグローバル化を促進し、グローバルな視点での「同一スキル=同一賃金」という基準をお客様に植え付けるようになるでしょう。また、クラウドに代表されるシステム・リソース調達手段のサービス化や仮想化、自動化などによるテクノロジーのコモディティ化は、「技術力」という武器の威力を弱めつつあります。
 
 当然、営業力への期待も変わりはじめています。
 
 かつては、お客様が欲しいというモノやヒトを確実、迅速、適正価格でお届けすることこそ、売上に貢献できる営業力でした。この時代は、お客様もお売る側も、何を調達すべきかをお互いに理解し合えていたのです。
 すこし古い話ですが、私の現役時代は、メインフレームだけが商品でした。ミドルウェアもデバイスもメインフレーム・メーカーが一括して提供していました。ですからお客様も売る側もその組み合わせで苦労することはなかったのです。インターネットもない時代です。ビジネスも今ほどグローバルではありません。ビジネス・プロセスも比較的単純であり、営業の売るものは、今に比べれはかなりシンプルだったのです。
 
 しかし、今はどうでしょうか。インターネットの普及は、情報流通の手段を多様化しています。ビジネスはグローバルに広がりビジネス・プロセスを複雑なものにしています。また、システム・リソース調達の手段は機器を購入することだけではありません。クラウドやアウトソーシングを利用すれば、グローバルにしかも安く調達が可能です。
 また、様々なメーカーがサーバーやデバイス、ミドルウェアを提供しています。確かにひとつひとつの完成度は高いかもしれませんが、それらの組み合わせを一貫して保証してくれる仕組みはありません。複雑に組み合わされる機器やソフトウェアの組み合わせに誰も責任を持てずにいます。
 
 ビジネス・プロセスの多様化は課題の定義を難しくしています。また、解決手段の多様化とその組み合わせの複雑化は、お客様もベンダーもこれしかないという最適解を作れなくなってしまいました。お客様は、この最適解を一緒に考え、その組み合わせを実現してくれるプロデュース力を営業に期待しているのです。
 
 「世の中の変わった」をこれだけで語り尽くすことなどできません。ただ、「何なが変わったのだろう」、「なぜ変わったのだろう」、「じゃあどうすればいいのだろう」という問題意識を持ち続けることで、私達は「変化」という歴史の常識にうまく適応できるようになります。
 
 変化のない時代は、これまでに一度もありませんでした。「世の中が変わった」といってため息をついたところで、この歴史の必然を変えることなどできません。ましてや、それを言訳に自分の責任を放棄するなど、何とも情けない話しです。それよりも、その変化に関心を持ち「ならばこうしよう」と考え続けること。そんな考え方を持つ方が、ずっと楽しいように思います。

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 この塾を始めたきっかけは、営業活動に関わる皆さんに自信を持って欲しかったからです。

 お客様と話していてもその話が理解できない、整理できない、中には、話のネタがないので出かけてゆくのも気が重い・・・という人もいました。

 もちろんそんな人ばかりではありません。知識はあるがうまく整理して説明できない、提案に結びつけて考えることができないという声もありました。

 私達は、ITビジネスのプロフェッショナルです。お客様もそうあってほしいと期待しています。だから自分たちの商品のことだけではなく、世の中のことを整理し、その上で自分たちに最適な解決策を提示して欲しいと願っています。

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   毎週水曜日 18:30~20:00
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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

2件のコメント
  • 斎藤昌義

    FAEさん コメントありがとうございます。
    普遍と流行という言葉があります。普遍とは時代を経ても変わらないもの。FAEさんのおっしゃる本質に近いかもしれません。また、時代と共に変わるものが流行です。
    私は、この二つを見極めることが大切だと思っています。
    流行に惑わされ、普遍=本質を見失ってしまうようでは本末転倒です。だからこそ、「変化に惑わされるなということです」。

    この記事で私が申し上げたいことは、「変化を言訳にするな」ということです。流行と普遍を見極め、それぞれに冷静に対処することこそ、大切な心構えではないかと思っています。

    2011年09月17日

  • FAE

    >「世の中の変わった」をこれだけで語り尽くすことなどできません。...うまく適応できるようになります。
    結局、世の中が変わったことをベースにした考え方を持つということになり、本当の適応はできないのではないでしょうか?
    それよりも、世の中が変わったという発想を持たない様にして行く事こそ本質的な解決策になるのではないでしょうか?現状を基準として置いてみて将来の対応策を練っていたのでは間に合わないのではないでしょか?基準を未来に置く、つまり、何が来ても大丈夫。もっと進めれば、こちらから将来を作ってしまう。こうすれば「変わった」訳ではないですよね?
    ”そんなことができれば誰も苦労はしない”と云われるとは思います。しかし、このくらいの事をしない限り世の中に追いかけられるという状況から抜けることはできないのではないでしょうか?

    2011年09月13日

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