こんなマネージメントは、とっとと辞めてしまいなさい

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2011-09-17 07:30:00

「お客様に信頼される。そんな営業になりたいと思っています。」


先日の営業研修の折、「自分の描く理想の営業とは」という質問に、40代半ばの営業課長から、このような答えが返ってきました。


「ではどうすれば、信頼される営業になれるでしょうか?」とさらに質問すると・・・


「お客様のご要望にすぐに応えること。お客様の相談に親身になってお応えすること。そういう日々の誠実な態度が、お客様からの信頼につながるのだと思います。」。


この気持ち・・・とてもよくわかります。・・・感覚的には(笑)。私は、この方はとても誠実でいい人だと思いました。気負いもなく、とてもまじめな方だと思いました。でも・・・残念。いい人なんです。それだけなんです。


どうも、この方は人間としての信頼と営業としての信頼を同じものだと考えていらっしゃるようです。もちろん、人間として信頼できないような相手を営業として受け入れることはできません。だからといって、それが頼りになる営業かというと必ずしもそうではありません。


かつて景気のいい時代は、需要が供給を上回っていました。ですから、こちららの要望するものをすぐに手配してくれたり、問題かあれば誠実に対処してくれる営業は、頼りになりました。供給が足りない以上、お客様にとってこういう営業はありがたい存在です。当然、優れた営業成績を残すことができました。


しかし、もはや競合が常識の時代です。お客様の要望に応えられるだけの営業では、優秀になれない時代になったのです。供給は需要を上回り、課題解決の選択肢は、昔ほど単純なものではありません。同じような課題に対して様々な選択肢があり、しかもその組み合わせは複雑です。ですから、お客様も「要望」を明確に伝えることができません。何が最適解なのかをお客様も私達もわからないままに、お客様の課題解決に取り組まなくてはならないのです。しかも、「棲み分け」などていう天国は期待できない時代です。


優秀な営業の定義が変わったのです。「要望に応えられる営業」から「解決策をお客様と一緒に考えられる営業」へと、お客様の期待が変わったのです。


こんな見方もできます。


かつてITはイノベーションでした。ITがまだまだ企業に浸透していなかった時代、ITの活用は企業に目に見える形でのイノベーションをもたらしていたのです。しかし、いつしかITは企業のインフラとして当たり前になり、ITがないことが考えられない時代となりました。もはやITはコモディティとなってしまいました。


IT企業もその多くが、このコモディティ化したITの保守や運営を任され、それで稼ぐことが本業になってゆきました。それ自体は、何も悪いことではありませんが、それは労働力であり、イノベーションを生み出す存在ではなくなってしまいました。つまり、ITベンダーは、「イノベーションを生み出す会社」から「労働力を提供する会社」へと変わってしまったのです。


幸いにも、景気のいい時代は、保守や運用に関わる労働力としての需要が右肩上がりで伸び、それにつられて多くのIT企業が業績を伸ばしていったのです。しかし、そんな時代は終わりました。景気の減速と共に、ITが成長産業であった時代は終わり成熟産業へと軸足を移し始めたのです。また、クラウド、オフショア、スマートデバイス、SNS、Webアプリケーションなど、労働力だけではない様々な解決策の選択肢が存在する時代になりました。もはや「労働力X単金」の延長線上だけでは、最適解を示すことはできないのです。


こういう時代だからこそ、お客様は、今改めてITにイノベーションを求めるようになったのではないでしょうか。


では、今イノベーションを求められているITベンダーはどうなっているのでしょうか。かつての成功体験を抱えた人たちが営業管理者となっています。残念なことに、そんな彼らの中には、担当営業が業績を上げられないのは、お客様の要望をしっかりと聞き取る誠実さが足りないためてあり、その結果、個人的な信頼関係が築けないことに問題があると思い込んでいる人がいるようです。


こういう人には、コモディティへ対応する時代の成功体験と、イノベーションを求める時代の成功法則は違うものであるという自覚がありません。だから、未だ旧泰然としたやり方を押しつける。現場の営業はいい迷惑です。それがわかっていないというのは、本当に困ったものです。


「うちにできない話しを持ってきてどうするんだ。それよりもうちにできることやスキルのある仕事を取ってくるのが営業の仕事だろう。」と言ってはばからない人がいるとすれば、まさにそういう人なのだろうと思います。 


  •  これまで売れたものが今でも売れるという勘違い。
  •  仕事がとれないのは単金が高いからと言う単純思考。
  •  ありものにしがみつく頑なさ。 


この言葉には、コモディティ時代の成功体験が今でも通用するという時代錯誤を感じてしまいます。確かに、日銭を稼ぐためには、既存のビジネス資産を活かさなければならないことはよくわかります。しかし、その先を示さないままに、今までのやり方を押し通そうとしてもいずれは尻すぼみになってしまいます。


お客様がITにコモディティを求めている時は需要は安定し、人は時間を掛けて丁寧に育てることができました。しかし、イノベーションは走りながら考え、走りながらスキルを身につけなれば、競合に蹴落とされ、お客様に見向きもされなくなってしまうのです。この違いを理解すべきです。


今、マネージメントに求められることは、解決策を示すことでありません。ビジョンを示し、現場の意欲を高め、それを管理することです。「このままではいけない」は、現場もよく理解しています。だからこそ、彼らに任せ、考えさせ、答えを見つけさせることです。


「何でできないんだ。とにかく俺が言うとおりやりなさい。」、「そのやり方じゃあだめだ、このやり方でやりなさい。」、「ええい、もういい、俺がやる。」・・・


自分の成功体験=過去の成功体験は通用しないという事実を受け入れるべきです。彼らと同じ目線で「今」を考えるべきです。彼らの考えを尊重すべきです。彼らを信頼し同時に責任を負わせる。そんな謙虚さと厳しさこそ、彼らの意欲を高めてくれます。そして、イノベーションにふさわしい行動を実行してくれるのではないでしょうか。




自社製品の性能や機能については話せとも、世の中の常識と自社製品の関係は話せません。


そんな営業をお客様は、信頼するでしょうか?


では、どうすればいいのでしょうか。よろしければ、こちらをご覧ください。


場所:東京・市ヶ谷

期間:10月5日から12月7日 

毎週水曜日 18:30~20:00

全10回

費用:9万4千5百円/一括


内容はこちらをご覧ください。



Facebookで、コミュニティ・ページを開設しています。よろしければ、ご参加ください。


※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

1件のコメント
  • FAE

    「解決策をお客様と一緒に考えられる営業」って実在出来るんでしょうか?
    全てのお客様に共通の命題があります。如何に製品、サービスを安く購入するかです。この命題を一緒に、つまり自分の命題であると位置づけて考えられる営業マンって?
    まるで右手と左手でババ抜きをやる様な物ではないですか?
    営業ですから自社の製品の販売価格はもちろん、原価も、どの程度の利益率を設定しているかも承知しているはずです。お客様へ少しでもお安く製品をお届けする為には利益を削るしかありません。(原価を削る事は税法上の犯罪ですよね?)お客様には有難い話かもしれませんが、自分の会社に取っては良い話ではありません。もちろん、”肉を切らせて骨を切る!”という発想でどこかで挽回させる事ができるのであれば良い様に感じますが、これが高じると「1円入札」というような商習慣上疑問を投げかける様な方法に陥る事になります。
    一歩間違うと業界を荒れ野原にしてしまう事になりはしないでしょうか?おっと、過去にどこの会社がした事とは云いませんが。

    細かいことですが、最後の段落の「自分の成功体験を過去の成功体験は通用しないという事実を」は推敲途中のものとお見受けしましたが...。


    2011年09月17日

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