相談される営業になるための条件: 組織や臓器の知識

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2011-10-29 00:00:00


「仮想化について、どうしようかと思っているんだけど、相談に乗ってくれないだろうか?」


お客様である情報システム部長から、このようなご相談を頂いたとしましょう。あなたなら、どのように対応されますか?


まず、「仮想化」と言うキーワードから思い浮かぶことは、「何の仮想化だろうか?」という疑問です。仮想化には、6つの仮想化があります。サーバーの仮想化、ストレージの仮想化、デスクトップの仮想化、クライアントの仮想化、アプリケーションの仮想化、ネットワークの仮想化です。


お客様にそのことを確認しますと、「デスクトップの仮想化」であることがわかりました。では、このお客様にとって、最適な方式はなんでしょうか。画面転送方式でしょうか、ネットブート方式でしょうか。


お客様がデスクトップの仮想化に関心を持たれた理由を伺ってみると、「既存のWindows XPをそろそろWindows 7にしたい。しかし、運用コストを考えるとデスクトップの仮想化もひとつの選択しかもしれない」と考えたからだそうです。


モバイルでの使用も想定しているとのこと。また、既存のXPマシンのリース満了のタイミングもまちまちです。そう考えると、シンクライアントを前提としたネットブート方式にすることは現実的ではないかもしれません。画面転送方式がいいかもしれません。となると、どのような製品を選択すべきでしょうか。


CitrixのXen DesktopとMicrosoftのHyper-vの組み合わせでしょうか。それともVMwareのvSphereとVMware Viewの組み合わせがいいでしょうか。それとも・・・


「情報システムのBCPについて、社長から計画を立てるように指示が出たんだけど、何から手をつけてゆけばいいだろうか?」


「情報システム+BCP」というキーワードから思い浮かぶ言葉は、「災害強度を高めるための取り組み」と「リモート・オフィースの実現」。


前者については次世代データセンター、拠点分散、クラウド、マネージド・サービスなどのキーワードが思い浮かびます。後者については、デスクトップの仮想化、認証基盤、安否確認、BYODなどとなるでしょう。では、次世代データーセンターについては・・・


案件獲得のきっかけは、こんなお客様との会話から始まることも少なくありません。しかし、「仮想化」といわれて、それを体系立てて頭に浮かべることができなければ、お客様に適切な質問をすることはできません。それ以前に、何を言っているかわからなければ、お客様との会話はこれで途切れてしまいます。


また、デスクトップの仮想化にいくつかの方式があり、各社様々な製品があり、金額も違えば、機能や性能も一長一短があります。詳細はわからなくても、要点がわかっていなければ、選択肢を絞り込むことができません。


仕事が早い、誠実に仕事をしてくれる、お願いしたことは確実にこなしてくれる。いい営業ですよね。でも、それだけでは、大切なことを相談できる相手にはなれません。


また、自社の製品には詳しくても、世の中の常識やその中での自社製品の位置づけを説明できなければ、お客様もがっかりでしょう。そういう相手は交渉相手にはなり得ても、相談相手にはなりません。


ならば、「私は詳しいことがわかりませんので技術に詳しいエンジニアを連れてきます。」と開き直ることもできるでしょう。しかし、どういうスキルのエンジニアをお客様に紹介すればいいのでしょうか。お客様の期待や要件を絞り込むこともできず、とんちんかんな説明でエンジニアを引きづり出したのはいいが、その人の専門とは全く関係のない話だったとすれば、お客様にとってもエンジニアにとっても、いい迷惑です。


キーワードとは「細胞」です。「細胞」はけっして単独では機能しません。役割の異なる様々な細胞が組み合わさり「組織」になり「臓器」になって初めて、その細胞の機能や役割、位置づけが明らかになります。


エンジニアは、この細胞を作り、それを組み立て組織や臓器にしあげなくてはなりません。そのためにプログラム言語やパラメーター駆使します。


営業は、どんな組織や臓器を作るかを描かなくてはなりません。お客様が知りたいのは細胞の細かな仕組みや機能、性能ではないのです。まずは、組織や臓器の仕組みや機能が知りたいのです。その中でひとつひとつの細胞=あなたの商品がどう機能するかを知りたいのではないでしょうか。


プログラム言語やパラメーターを知らなくても、それぞれの細胞がどうつながっているかの関係や構造がわからなければ、お客様の期待を整理することはできません。お客様の相談相手にもなれません。もちろん、提案の戦略を立てることもできません。


クラウドという言葉を知っていても、仮想化とどう違うかを説明できなくてはクラウドを知っているとはいえないでしょう。クラウドとHTML5の関係を説明できなければ、たとえそれぞれの「音」や「綴り」を知っていても、お客様に知っているといえるでしょうか。SOAとBPMはこれからの情報システムにとって重要なキーワードですが、それがなぜかを説明できなければ、お客様はそのことで、あなたに相談などしないはずです。


以前、このブログで「アウトプット思考」という話を書いたことがあります。「お客様にわかりやすいアウトプットとはどういうものかをイメージしながら考える」。そんな思考方法が、営業には必要だという話しでした。


下の図はそんなアウトプット思考の一例です。HTML5とは何だろう? CSSとJavaScriptとはどんな関係にあるのだろうか?これをどのように表現すれば自分は納得できるだろうか。お客様にすんなりと理解していだけるだろうか。そんな思考の結果が下の一枚です。





私は、営業にとって必要な知識とは、このような知識なのだろうと思います。つまり、「組織の知識」、「臓器の知識」です。言語でもなければパラメーターでもありません。そして、知っているとは、「わかりやすく説明できる」ことどたと思います。


細胞の知識ではなく、組織や臓器の知識を持つこと。それをわかりやすく説明できること。それがお客様に相談される営業になるための大切な要件ではないかと思います。




Facebookで、コミュニティ・ページを開設しています。

先週は、コレ一枚シリーズに上記の「HTML5」以外に「オープン化の歴史」も追加しています。


よろしければ、ご覧ください。


 

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

1件のコメント
  • FAE

    >エンジニアは、この細胞を作り、それを組み立て組織や臓器にしあげなくてはなりません。そのためにプログラム言語やパラメーター駆使します。
    ん〜、細胞を作るんですか?今日のプログラミング手法はレゴブロックの様に出来合の物を組上げるだけですよね?作るというと料理の様に食材に様々な加工を施して行くという事ではないですか?PC−8001+BASICの世代から云わせるとあれはプログラミングではなくスクリプトですね。立方体のブロックを使っている限りは曲面を持った形状は作成出来ません。
    >プログラム言語やパラメーターを知らなくても、それぞれの細胞がどうつながっているかの関係や構造がわからなければ、お客様の期待を整理することもできなければ、提案の戦略を立てることもできません。
    その前に、「お客様が何をしなければならないのか」の把握、共有が必要ではありませんか?曖昧なご相談を頂いた段階では、それを元に提案を組み立てたのでは土台がしっかりしないいい加減な家を建ててしまうことになりませんか?お客様はそれで良いと思っていても、他のお客様事例では失敗していたというようなことはないでしょうか?
    お客様の期待にお答え出来ても、そのときはお客様も助かった!と感じて頂けるでしょうが、長い目で見たとき、本当にそれで良いのでしょうか?単に流行に遅れずに済んだだけでいいのでしょうか?
    お金が頂ければそれで良し。ならそれもいいかもしれませんが。

    2011年10月29日