相談される営業になるための条件: ネガティブトーク

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2011-11-05 08:30:00


あなた「我が社のパッケージはA社のものに比べて、3倍の処理能力があります。しかも、業界ではもっとも機能が豊富で、御社の必要は十分に満たしています。」

お客様「ところで、いくらなんですか?A社に比べてどの程度差があるのでしょう。そんなに機能豊富だと高いんでしょう?」

あなた「そうですね・・・3割ほどライセンス費用は高くなりますが、それに見合うだけの機能はあると断言できます。」


「余計なお世話」という言葉があります。我が社の商品やサービスがすばらしい機能や性能を持っていたとしても、このお客様にとって、そこまでの機能や性能が必要ないとすれば、それを進められるというのは、「余計なお世話」です。


自動車を単なる移動の手段と考えている人に、BMWやポルシェは売れません。値段が安く、燃費が良くて、丈夫で安全であればいいわけです。ツイン・パワー・ターボも水平対向型のエンジンも必要ありません。


お客様が知りたいのは、自分の期待を満たしくれることです。お客様の満足はそこにあります。「過ぎたるは及ばざるが如し」であり、「大は小を兼ねる」は少なくともビジネスの世界では成り立ちません。ですから、お客様の期待が何かを正しく理解しない限り、期待に応えることなどできるはずはありません。


ところで、お客様の期待とは何かを少し掘り下げてみましょう。お客様は、ホンダのフィットが欲しいという話しをされました。それは、「ホンダのフィット」そのものを気に入っていて、それ以外は欲しくないと言うことでしょうか。それとも、「値段が安く、燃費が良くて、丈夫で安全」な車が欲しいということを、自分の知っている車の名前で表現されたのでしょうか?


この違いを理解しなければ、お客様の期待を満たすことはできません。もし「ホンダのフィット」しかいやだというのなら、それを提案すること以外にお客様の満足を得ることはできません。しかし、もしお客様の期待が後者ならば、他にも様々な選択肢を提示することができるはずです。


営業がお客様の良き相談相手であるためには、この違いをしっかりと見極めることが必要です。そして後者であれば、専門家として、お客様の期待を満たすためにもっとも最も優れた選択肢は何かを示す必要があります。そのための知識は、自社製品に詳しいだけでは不十分でしょう。世の中の常識、ITのトレンドを体系的に理解しておくことも必要です。


しかし、そうなると選択肢の数は限りなく増えて行きます。組み合わせも複雑になるでしょう。ならばそれを整理整頓し、わかりやすく伝えることが大切です。そうやって、お客様の価値が最大化できる選択肢を具体的に示しながら、お客様と一緒になって最適解を創り出して行くことです。


主客一体という言葉があります。おもてなしの席で、主人も客人も一緒になって、その場を作り上げてゆくという茶道の精神を表現した言葉です。営業という仕事に置き換えて考えるならば、こちらの一方的な話しではなく、お客様の期待に応えるためにはどうすればいいのかを考え、そのお膳立てをし、お客様と一緒に最適解を創りあげて行くアプローチといえるかもしれません。


お客様の期待に応えるためには、このような場作りが必要なのです。


さて、もう一つ、「ネガティブ・トーク」ができるかどうかも、お客様の期待に応えるためには重要です。お客様は完全な商品やサービスなど世の中に存在しないことくらい十分にご存知です。ですから、私達の商品やサービスがどれほど優れているかという以前に、それらが世の中の常識に照らし合わせて、どこが良くて、どこに弱点があるかを知りたいはずです。


しかし、この期待に応えることはなかなか大変です。私もそうですが、自分のこと、自分たちの商品のことをよく見せたいという気持ちが先行し、自分たちについてのいいことばかりを話してしまいます。ただ、そのような態度をとれば、お客様はあなたを相談相手とは考えず、交渉相手として受止めることになるでしょう。


お客様と会話するときに、次の3つを自問自答してみてはいかがでしょう。

  • 良い点ばかりではなく、自分たちの限界、他社との違いや弱点を客観的に説明できるだろうか。
  • お客様はどのようなメリットを享受するかは語れるが、どんな課題やリスクがあるかも同時に語れるだろうか。
  • お客様が得をすることは語れるが、自分たちがどれだけ儲かり、得をするかも同時に語れるだろうか。

簡単なことではありません。しかし、そういう自分への冷静な目を持つこと、そしてその謙虚さが、相談される営業になるための一つの条件であることは、間違えないと思います。



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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

1件のコメント
  • FAE

    >お客様が得をすることは語れるが、自分たちがどれだけ儲かり、得をするかも同時に語れるだろうか。
    裸の付き合いができる様じゃぁなきゃ本当の付き合いじゃないってことですか?プライベートならいざ知らず、会社として利益追求をしてるところで幾ら儲かるって話をしてしまっては自分の会社の問題だけではなく、業界全体にマイナスになりませんか?

    2011年11月10日