情報システム部門とIT営業の存在意義

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2012-06-30 11:00:00

情報システム部門が、いま大きな転換点を迎えています。「情報システム部門の存在意義が問われている」。そう言い換えてもいいかもしれません。


自らシステムを所有し、システムの構築と保守のサイクルを回す。そして、ユーザーのお問い合わせに応え、トラブルに対応する。もはや情報システムのない経営も業務もありません。当然、何でもシステム対応が求められます。グローバル展開、業務ニーズ、デバイス環境・・・様々な環境の変化に迅速に応えなくてはなりません。おかげで要望は積み上がるばかりです。しかし、そんなに潤沢な要員を抱えているわけではありません。対応は後手に回ります。


現場や経営はそれを情報システム部門の不作為ととらえるかもしれません。そうやって、情報システム部門は現場や経営からの信用を失い、その権威も低下することになります。結果として、予算の配分は頭打ちとなり要員の拡充もままならず、新しいことにもチャレンジできません。ますます、要望に応えられなくなります。


情報システム部門は、そんなスパイラルに陥っているように見えます。事実、JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の調査によれば、情報システム部門の予算は対売り上げ費で見ると10年前に比べて半減しています。情報システム部門の現実を象徴しているかのようです。


1960年代から1980年代にかけてのメインフレームが主役として活躍していた時代、情報システム部門は企業の情報化を牽引してきました。基幹業務がまだまだシステム化されていなかった時代にあっては、情報システム部門のスタッフは業務とシステム技術に精通し、両者の架け橋としての役割を担うプロ集団として、企業内でも高い評価を与えられていました。


しかし、基幹系業務の多くがシステム化されると、今度はできあがったシステムを維持、メンテナンスすることに重点が移り、サブシステムの増殖が始まりました。また、情報システムが業務に広く使われるようになり、その安定稼働の重要性が増し、運用管理業務も増大してゆくことになりました。


維持、メンテナンス、運用管理・・・このような既存システムに関わる業務工数が拡大する一方で、あたらしい業務プロセスに対応したシステム構築は少なくなり、サブシステムという既存システムのコピー・改修の仕事が増えてゆきました。その結果、業務全体を見渡すプロジェクトは少なくなってしまったのです。「業務を知らない情報システム部門」は、こんなところがきっかけだったのかもしれません。


情報システムは業務に不可欠なものになりました。しかし、その一方で情報システム部門のバックログも積み上がり、ユーザーからの要望になかなか応えられないというジレンマも抱えることになったのです。


また、維持・メンテナンスは既存業務システムへの対応であり、情報システム部門が、かつてのようにシステム全体に関わる経験も少なくなって行きました。

1980年代のパーソナル・コンピューターの出現は、このような情報システム部門の権威をさらに失墜させることになりました。


コンピューターが、もはや専門家のものではなく、誰もが使えるようになったのです。これまで何でも情報システム部門に依頼していたユーザー部門も、ちょっとした帳票の集計やレポートの作成ならユーザー自身の手でできるようになったのです。エンドユーザー・コンピューティング(EUC)という言葉が使われるようになったのもこの頃です。またオフコン、ミニコンが普及し、ユーザー部門が独自にコンピューターを購入することも難しくなくなりました。


パーソナル・コンピューターばかりではありません。1980年代は様々なあたらしい技術が普及し始めた時期でもあります。低コストで高性能なUNIXシステム、クライアント・サーバー、リレーショナル・データベースなど、メインフレームの常識とは一線を画す新しい技術が世の中に受け入れられ始めたのです。


これまでメインフレーム=コンピューターであり、その保守や運用管理に大半の労力を割いていた情報システム部門は、このようなあたらしいトレンドに対応することに消極的でした。というより、余裕がなかったのです。その結果、自分たちはこれまで通りメインフレームを主体とした基幹業務システムの維持・保守・運用に専念し、あたらしいトレンドに対応しなければならないときは外部に丸投げすることも普通となっていったのです。もちろん、ユーザー部門もそのことがわかっていましたので、情報システム部門を介すことなく直接ITベンダーと話しをすることも増えてゆきました。その結果、情報システム部門は新しいトレンドに取り残されていったのです。


情報システム資産のユーザー部門への分散、情報システム部門のメインフレームへの引き籠もりは、情報システム部門の権威を一層低下させてゆきました。また、業務全体を見渡す経験の減少は、業務のわからない情報システム部門のスタッフを増やしてゆきました。その結果、「情報システム部門は業務を何も知らない」とユーザーに言わしめることにもなり、ますますユーザー部門からの信頼を失うことになっていったのです。


既存の基幹システムの維持・メンテナンスに専念し、システムの安定運用を維持することは、それ自体大切な仕事です。しかし、あたらしい業務システムを構築するといった前向きな話しではなく、ちょっとした改善や現状維持は必ずしもモチベーションを高めてくれる仕事ではありません。このような状況のなか、情報システム部門は、その権威とやりがいを「技術」にもとめるようになったのではないかと私は考えています。


つまり、ユーザー部門が直接関わることが難しいシステム技術のスペシャリストであることに自らの役割を見出し、そこに存在意義を見出そうという意識です。業務はユーザー部門、情報システム技術は自分たちという壁を自ら築き上げ、それに安住することで、結果として、業務スキル蓄積の機会を遠ざけてきたのかもしれません。


インフラやシステム開発の知識はあっても、業務プロセスを知らない情報システム部門。クラウドの普及は、まさに彼らの存在意義であるインフラと開発の役割を低下させることになります。その一方で、ますます必要性が高まる業務プロセスに役割を果たせない情報システム部門の存在が問われています。


しかし、もうそんなことはいっていられません。情報システム部門は、新たな役割を見いださなくてはならないのです。


クラウドになれば開発の機会は減ってゆくことになるでしょう。また、インフラの維持・運用の必要もなくなります。開発と運用という役割分担も意味を失います。


その一方でITという手段の選択肢は多様化し、複雑化してゆきます。それぞれの業務に最適な組み合わせが求められます。ITが企業や社会のインフラとして存在感を増す中、経営のスピードアップや最適化はITの使い方次第です。つまり、経営のイノベーションをITが牽引する時代です。その戦略的価値に関わることこそ、IT部門の大切な役割となるはずです。


予算に縛られるコスト・センターから投資対効果を意思決定の基準とするプロフィット・センターへの変革にチャレンジせずして、生き残ることはできません。いや、生き残る意味がありません。


IT営業は、そんな情報システム部門の変革に役割を果たしてゆくべきです。情報システム部門のモノとヒトの調達係でいいのでしょうか。お客様である情報システムが変わろうとしています。モノやヒトの仕事から、お客様の変革、つまりイノベーションの提案を、そして、その仕組み作りをお手伝いしてゆくこと。その役割を果たせるかどうかが、今問われています。


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