日本IBMの営業力は、なぜこんなにも弱体化してしまったのでしょうか

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2012-08-04 08:30:00

かつてをご存知の方は、このような感慨を持たれる方も多いのではないでしょうか。


私は、元IBMの営業として、過去の栄光を懐かしみ、昔は良かったと感傷に浸っているわけではありません。私は、この現実にこそ、日本が世界の常識と乖離していること、そして、だからこそ、日本のIT営業は、この違いを理解した上で、その役割を果たすべきだと申し上げたいのです。


IBMの営業パーソンの個々人の能力や志について、語ろうというものでありません。多くの友人や先輩諸氏が、営業の現場で頑張っています。彼等の営業としてのセンスや能力の高さは、憧憬に値するものです。


私が、ここで申し上げたいことは、そういう個々人の話しではなく、組織のメカニズムとして、日本IBMの営業体制が、日本の実情にそぐわないこと、そして、それは一方では、日本のCIOであり、情報システム部門の役割が米国とは大きく異なっていることが、その根底にあると言うことを申し上げたいのです。


現在、日本IBMの営業体制は、一部の戦略的大企業を除けば、実質的なお客様担当営業はおらず、サービスやプロダクトごとに個別に担当営業を配する体制を取っています。つまり、ひとつのお客様に複数の営業担当者がいることになります。


このような営業スタイルは、ユーザー企業のCIOや情報システム部門が、次の役割を果たせる場合、有効に機能します。

  • 技術のトレンドや業界の動向に精通し、しっかりと情報システム戦略を組み立てることができること
  • 各製品やサービスを目利きし、的確に取捨選択できる体制や能力を有していること
  • CIOが意志決定に当たって、経営の立場から強いリーダーシップを発揮できること


つまり、ユーザーがシステム・ベンダーに対して、おんぶにだっこの依存関係ではなく、自らの知性と意志で判断し、ベンダーに対するイニシアティブを発揮できるとが前提です。


ユーザー自身がインテグレーターとしての役割を果たすならば、個々のサービスや製品を目利きし、最適なインテグレーションを考えなくてはなりません。そのとき、今の日本IBMのような個々の製品やサービスについての深い知識を持ち、提案できる営業体制は、たいへん重宝な存在です。


つまり、日本IBMというひとかたまりの存在とらえるのではなく、様々なサービスやプロダクトを提供する個別ベンダーの総体、つまりITプロダクトやサービスのデパート、専門店街としての存在としてとらえれば、今の日本IBMの営業体制の意味も明らかになるのではないでしょうか。


しかし、我が国におけるユーザー企業の実態を鑑みると、CIOや情報システム部門が、自らをインテグレーターと自覚し、その能力を磨き、役割を果たしているところは、必ずしも多くはありません。それにもかかわらず、グローバル・スタンダードを貫くIBM本社の方針に沿う形で日本IBMの営業体制は、作られています。残念ながら、今はその役割を十分に果たすことができず、心ある現場の営業たちが、そのギャップを埋めるべく奮闘しているというのが実態ではないでしょうか。これが、日本IBMの営業力が弱体化している背景にあると考えています。


これを他山の石と見るならば、このような我が国の実態に即した営業体制を構築することが当面は効果的であろうと考えられます。つまり、アカウント営業を前提とした組織体制を構築することです。つまり、お客様を担当する営業が、唯一の窓口となり、お客様の様々な事案のとりまとめ役になり、良き相談相手としての存在感を高めることだろうと思います。そのための能力を磨き、体制を構築することだろうと思います。


プロダクトの販売を専業とする営業についても、この考え方は成り立ちます。つまり、自分のプロダクトを売るために、このようなお客様のさまざまな相談を引き受ける。その上で、自分たちの製品やサービスの位置づけを伝え提案することができれば、お客様は大助かりであり、信頼もされるはずです。


グローバル化を目指す日本の企業は、いずれは、米国型のCIOであり、情報システム部門としての役割を果たすべきだと思います。ユーザー自らがこの変化を受け入れ、自らの能力を高めてゆくべきでしょう。それができなければ、我が国の情報システムはグローバルな時代の流れに取り残され、いずれはIT後進国としての汚名を戴くことになります。


一方、営業は、アカウント・エクゼクティブ(Account Executive)を目指すか、ソリューション・スペシャリスト(Solution Specialist)を目指すか。自分の役割を自覚し、その能力を磨いてゆくべきだろうと思います。そして、どのような時代が来ようとも、それぞれの立場でプロフェッショナリティを活かせる存在になれば、どこででも生きてゆけるはずです。


ここで申しあげたことへのご批判もあるかと思います。ぜひ、そんなご意見をFacebookページで聞かせください。ご意見を交換できればと存じます。 

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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