どうすればコモディティを武器にできるか

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2012-12-08 11:00:00

「御社の新しいデータセンターは、首都圏近郊では最もハイスペックです。しかし、ここからわずか数キロ離れたところにも同様にハイスペックなデータセンターがあります。この両者の違いと、なぜ御社のデータセンターが優れているかをご説明いだけるでしょうか?」


先日、あるITソリューション・ベンダーでの講演でこんな問いかけをしてみました。しかし、明確な回答を頂くことはできませんでした。


PCサーバーの違いを説明することはもっと難しいかもしれません。

HPIBMDELNECと・・・どこが違うのでしょうか。プロセッサーはどこもIntelOSWindows、データベースはOracle・・・、違いを出そうと各社努力はしているものの、ユーザーからみれば甲乙つけがたく、「どれを買っても同じ」という状況です。


クラウド・サービスもIaaSについては、数年前までは、まだまだ進化の途上にありました。そのため、特徴や機能の違いは明確でした。しかし、今となっては、その違いは曖昧なものとなりつつあります。


これは、決して技術的に退化したわけではありません。それぞれが切磋琢磨し、高い完成度を目指した結果、技術的に飽和してきたこと、そして、普及が進むことで規格化がすすみ、どれも個性を失い、差別化できない状況になってきたのです。


例えて言えば、粟・稗などの「雑穀」と「白米」の違いから、どれも美味しい白米となり、「コシヒカリ」か「あきたこまち」程度の違いへと変わってきたのです。


しかし、その一方で、PCサーバーやクラウドの存在感は高まり、ビジネスや生活において無くてはならない存在となりました。


どれを買っても同じ、しかし、無くてはならない存在。これが、「コモディティ(Commodity)」です。


「コモディティをどう売るか」。ここにITソリューション・ベンダーの大きな課題があります。





まず、前提として、コモディティを使いこなす高い技術力が必要です。テクノロジーを理解し、そのトレンドを見極め、最適なものを選択できる目利き力や構築力が求められます。この技術力を基盤とすれば、3つの戦略を考えることができます。


まず、最初は、「コモディティ・イニシアティブ戦略」です。

コスト・パフォーマンスを徹底追求して、コモディティにおける競合優位を確保する戦略です。これは相当に覚悟のいる戦略かもしれません。それでも、この戦略に成功すれば、例えばAmazonのように、大きな市場を確保し、自らをデファクト・スタンダードとすることが可能になります。


次は、「コモディティ・ソリューション戦略」です。

お客様の業務や経営の視点からお客様に最適化されたコモディティの利活用を提案し、それを利用してアプリケーション・システムやIT基盤を高いコスト・パフォーマンスで構築することで競合優位を確保する戦略です。 

例えば、AmazonGoogleを基盤として利用し、お客様に個別最適化されたアプリケーション・システムを構築します。場合によっては、その運用まで含めて受託するアプローチです。もし、自社で提供するクラウド・サービスやマネージドサービスなどのITO基盤があれば、そのITO基盤そのものを売るのではなく、お客様の個別の経営目標の達成や課題解決の方法を提案し、結果としてITO基盤が売れるというシナリオを描くことです。 

コモディティ化したものは、それ自身で明確な競争優位を見出すことは困難です。ですから、上流からアプローチして、結果としてコモディティを売るというシナリオを描くしかありません。ただしこれには、お客様の業務や経営、あるいは、システム全体の企画や戦略を描ける能力が必要となるでしょう。


最後は、「コモディティ・サービス戦略」です。

コモディティを積極的に活用し、蓄積した業務ノウハウやシステム・ノウハウを先鋭化して、魅力的なサービスを自ら提供することで競合優位を確保する戦略です。 

例えば、ERPの業務ノウハウを駆使し、AmazonIaaSであるEC2上にERP SaaSを構築、これを自社のサービスとして提供するアプローチです。 

IT基盤は従量課金で手に入りますので初期投資リスクを抑えることがてきます。業務ノウハウが十分にあれば、そこで差別化することができるはずです。また、グローバルに標準化された基盤であれば、これまでの国内をお客様とするだけではなく、広く世界にお客様を拡大することが可能となるでしょう。飽和した国内市場に頼るだけではなく、グローバル・ビジネスを展開する術を手に入れることもできるわけです。


コモディティ化の流れを避けることはできはません。たとえ今はコモディティではなくても、それが「無くてはならない存在」となれば、いずれはコモディティ化します。


コモディティは、必要があるからこそ存在します。つまり、市場は確実にそこに存在するのです。問題は、その中で自らの立ち位置を明確にすることです。


コモディティ同士をぶつけ合い、価格競争を強いられる状況から脱却するには、コモディティをどのようにすれば武器にできるかを考えなくてはなりません。ここに掲げた3つの戦略は、そんなシナリオを考える切り口とならないでしょうか?



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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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