ソリューション営業の終焉、営業3.0の時代

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2013-05-25 13:00:00

個々のお客様のニーズや課題を掘り下げ、解決策を提供する営業活動「ソリューション営業」は、そろそろ終わりを迎えようとしています。


ソリューション営業は、お客様にとって未知の解決策、あるいは、想定外の解決策を提示することができて、はじめてその本領を発揮します。しかし、情報が様々な手段で手に入るようになった今、お客様は自分たちの力で解決策を探すことが容易になりました。このような時代に、未知で想定外の解決策を提供することが、どれほど可能なのでしょうか。


ITはコモディティ化が進み、これまでになく身近なものになりました。IT部門は、テクノロジーの専門家としての役割から、テクノロジーとビジネスの橋渡しをするプロデューサーとしての役割を担いつつあります。言うなれば、お客様自身がソリューションの専門家になろうとしているのです。また、経営戦略や事業戦略は、ITと一体で考えることは、もはや常識になりつつあります。事業の現場は、これまでにも増してITの知識を深め、テクノロジーに関わる予算の決定に影響力を強めつつあります。


かつて「ソリューション」であったものは知れ渡り、何をどのように手に入れればいいか、優位性や差別化の視点を第三者にゆだねる必要はなくなりつつあります。「ソリューション」もまたコモディティ化が進みつつあるのです。そうなれば、あとは、価格や技術力を値踏みし、自分たちにとって最適なベンダーを選択し、組み合わせればいいだけの話です。


そろそろ、ソリューション営業で差別化できるステージは終わったのかもしれません。次のステージに移らなければ、営業はその役割を果たせなくなります。


イノベーション営業」、私は次のステージをそのように名付けてみました。もはや、「お客様の課題やニーズ」を起点にした「ソリューション営業」では、営業としての存在価値を認めてもらうことは、難しくなりました。ならば、「お客様の変化」を起点にしてみてはどうかと考えています。


変わろうとしている、変わらなくてはいけない、しかし、そのプロセスを模索しているお客様に、新しい気付きやビジョンを提供することで、一緒になって変革のプロセスを推進する。そんな役割を担うことができれば、営業は存在価値を持つようになるはずです。


イノベーション営業も、変革という課題を解決するのだから、ソリューション営業と変わらないのでは、という意見もあるかもしれません。確かに、広く解釈すれば、間違えはないでしょう。ただ、両者の本質的な違いは、ニーズや課題が、既知か未知かということです。


ソリューション営業は、お客様自身が意識している顕在化されている課題やニーズ、あるいは、こちらが指摘すれば、確かにそこが課題なんだと、気づかせることができる潜在的な課題やニーズが存在していることを前提としています。


しかし、変革を進めようとするお客様には、変革への意志や問題意識はあっても、解決すべき対象となる課題やニーズを明らかにできてはいません。また、それ以前の問題として、どのような方向に変革を進めてゆけばいいかのビジョンが描けていないのです。


そこでは、他社の「ソリューション事例」など役にはたちません。なぜなら、自分たち自身がどうしたいかといったビジョンが明らかになっていないわけですから、何が自分たちにとってのソリューションなのかを決めることができないのです。


イノベーション営業の営業活動は、そんなお客様について、お客様以上に深く考察し、お客様から新しい気付きを引き出し、お客様自身が自らのビジョンに確信が持てるように支援することです。そこに役割を果たすことができて、営業はお客様にとって存在価値を持つようになります。


ビジネスのあらゆるセグメントが、IT抜きに語れない今、変革は、すなわちITの新たな需要を産み出します。つまり、変革のプロセスに関わることが、営業活動なのです。


イノベーション営業は、変革の推進者をカウンターパートとしなければなりません。彼等は、必ずしも役職は高くはないかもしれませんが、変革に人一倍情熱を持ち、リスクを負ってでも推進しようとする存在です。


変革の推進者を見分ける方法は、さほど難しくはありません。まず、彼の言動を注意深く耳を傾けることです。次のような発言が相次ぐようでは、たぶん彼は改革の推進者ではありません。


「私は何度も言ったんだが分かってくれないし、変わろうとしてくれないんですよ。」

「変わらなくちゃいけないけど、まずは足下を何とかしなければいけないからね。」

「会社は変わらなきゃいけないと思っている。このままじゃいずれ厳しくなる。ただ、私の役割を超える話だし、上の人が動かなきゃ、どうにもならないよ。」


間違ってはいないし、彼は役割を果たしている人に違いありません。しかし、抵抗に遭っても変革を推進する意志を持っているかどうかは疑問です。


これに対して、変革プロセスやビジョンに関わる提案の機会を求め、ぜひキーパーソンを同席させて欲しいと依頼すると、彼等を説得し、その場を作ってくれる人ならば、その人は紛れもなく、変革の推進者です。


彼は、自分の能力や役割を理解し、人や組織をつなげ、巻き込むことが変革に重要であることを理解しています。彼が声をかければ、しかるべき立場の人が集まるとすれば、彼には人望があり、信頼され期待されていることが分かります。


このような変革の推進者をパートナートとして、彼の志や取り組みに貢献することが、イノベーション営業の営業活動なのです。


プロダクト営業、ソリューション営業、イノベーション営業の違いを整理してみました。ご意見をお聞かせいただければ幸いです。



※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

3件のコメント
  • 鴨川

    結構前の記事ですが、良い記事ですね。
    コンサルの仕事?・・・いえいえ、時代は進化、、、というかコモディティ化して営業がある程度のところまでできるようになる、もしくはリソースを活用して提供する時代になっていますよね。コンサルの仕事、と言っていると、コンサルの仕事がなくなりますよ、そのうち。
    待てない?営業の仕事の第一項目は一緒にビジネスできる人を探す、人探しでしょ?モチベーションと行動が伴っている人と会えるようにすることが営業の仕事の基本ではないんですかね?

    2015年02月06日

  • しろくま

    誰に向けて発信しているのかわかってないのですが、まずは、ここでいうソリューション営業と思います。
    他社の事例は役に立たないと切り捨ててますが、事例から、思考や動機を取りだして加工して提示すれば役に立ちます。 
    イノベーション営業について分かりますが、そんなにモチベーションと行動が伴っている人が目の前に現れると限りませんし、待てません。 

    2013年06月22日

  • fzero

    コンサルタントが普段やっている業務を指しているだけに見えます。
    ソリューション営業でもステークホルダーを同席させて提案を行うのは
    至極あたりまえの話で3.0と呼ぶほどのものを感じません。

    2013年05月28日

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