新規顧客が開拓できない本当の理由

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2013-08-03 10:30:00

「最近、新規顧客の開拓について、やたらと言われるようになりましてねぇ。でも、そんな簡単な話じゃないですよ・・・」


お客様の業績も伸び、システムの導入や開発の需要がコンスタントにのびている時代は、新規開拓など必要はありませんでした。リピートだけで十分に仕事があり、お客様の業績とともに自分たちも業績をのばすことができたからです。


この常識が大きく変わる節目はリーマンショックだったように思います。プロジェクトの中止や先送りで、需要が一気に冷え込みました。この事態をなんとかしなければと、新規顧客の開拓が営業の仕事だと、声高に叫ばれるようになりました。


それ以前にも「新規顧客開拓は営業の仕事」と建前上はなっていましたが、営業の予算である売上や利益は既存のお客様からの需要でまかなえましたから、それほど新規顧客開拓に血道を上げる必要もありませんでした。また、経営者もそれを求めてはきませんでした。


既存顧客から需要が先細りする中、今になって「新規顧客は営業の仕事だ。営業なんだから自分の役割を果たせ。」と言われても、そんなスキルも経験もなく、どうすればいいんだというのが本音のところではないでしょうか。もちろん、建前上は昔からその通りなので、それに楯突くこともできません。


じゃあどうすればいいのかです。まずは、そもそも新規顧客とは、どういう存在なのでしょうか。


新規顧客とは、競合他社の顧客です。国内市場に限れば、顧客の絶対数を増やすことはできません。つまり、新規顧客の開拓とは、競合他社の顧客を奪い取ることです。


ではどうやって奪い取るかです。


ひとつは、同じ仕事や製品分野において、価格で優位に立つことです。既に市場はあるわけですから、価格競争で優位に立てば競合他社から顧客は奪えます。もちろん、品質や機能が同等以上であることが前提です。


しかし、これは体力勝負です。改善の努力で最初は優位にたてても、競合他社も努力してくるでしょう。結局は、消耗戦を強いられ、どちらも利益のでない仕事を強いられるだけのことです。


もうひとつは、新規事業の開発です。これまでになかった需要を喚起することです。


例えば、JINS PCというPCの液晶ディスプレイのLED光から目を守るための眼鏡です。この商品は、目の悪くない人が眼鏡をかけるという市場を拓きました。


新規顧客が開拓できない理由は、需要がない、あるいは飽和している市場を相手にしているからです。


新規事業の開発なくして新規顧客の開拓はないと心得るべきです。それにもかかわらず、新規顧客獲得だけをノルマに掲げ、数字の達成を営業の自助努力をよりどころに結果を求めても限界があります。成果が上がらなければモチベーションは下がります。当然、自助努力への意欲は減退です。そんな悪循環を生み出しています。


「新規顧客で売上の2割を獲得する」ではなく「新規事業で売上の2割を獲得する」という目標はどうでしよう。もちろん、営業個人のノルマではなく、事業部門単位での話です。結果として、新規顧客の獲得につながってゆくのではないでしょうか。


このような取り組みのためには、テクノロジーのトレンドやマーケティングにもっと関心を持つべきだと思います。そのための人材の確保や組織づくりも必要です。


かつてのように既存顧客からのリピートで事業が成り立っていた時代なら、その必要はなかったかもしれません。しかし、もはやそれだけでは将来が期待できないとすれば、新たな事業で需要を創造することで新規顧客を獲得するしかありません。


マーケティングは、既にある商品をどうやって売るかの取り組みではありません。今市場にはどんな課題があり、将来どう変わってゆくかを予測し、どこに参入するかを見極めることです。


それに対してイノベーションはこれまでにはなかった需要を喚起し、新たな市場を創造することです。JINS PCはまさにその典型です。




イノベーションは、決して新しい技術を使うことと同じではありません。お客様の需要を喚起できる新しい組み合わせを創造することです。JINS PCも今までになかった新しい技術を使っているわけではありません。眼鏡は目が悪い人のための道具であるという既成概念を破壊し、PCユーザーと既存の技術の新しい組み合わせを提案することで、新たな需要を生み出したのです。


既存の技術やプロセスを新たな価値創造のために組み合わせることです。そこに新しい技術が入るか入らないかは、お客様の価値の拡大に寄与するかどうかであって、必要条件ではありません。


マーケティングとイノベーションを組み合わせ、新規事業を模索することが必要です。


アベノミクスが需要を喚起し、既存のシナリオを延命させてくれる可能性はあります。しかし、そんな表面的な動きとは別の次元でテクノロジーは進化し、顧客のニーズや価値観を変えつつあります。この本質的変化を知り、対応してゆかなければ、この宴が終わったときには、またかつてのような厳しい時代を迎えることになるでしょう。


新規顧客は新規事業からしか生まれません。その取り組みを事業方針や経営方針といったお題目だけで喚起しようとするのではなく、事業施策や業績評価と連動させる必要があります。また、人材の育成にあたってもテクノロジーのトレンドやマーケティングの知識やスキルを重視する必要があるでしょう。


低成長の時代、営業の自助努力だけでは新規顧客は開拓できないのです。


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  • セキュリティやガバナンスの原理原則とクラウド・ファーストに向けた取り組み。
  • システム・インテグレーション崩壊とポストSI時代のビジネス戦略。

・・・など、これからの変化を先読みしつつ、その次の手を考えるヒントを提供したいと考えています。



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