経営者によるIT部門への根深い不信感・なぜそんなことに

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2014-01-18 12:00:00

「全ての予算はIT予算になってゆく」

2012年10月にガートナーは、こんなレポートを公開しています。これは、経営や業務はIT無しには今後考えられず、業務のための予算はITを活用するための予算になってゆくだろうという予測です。

「CEOは、自社に影響を及ぼす外部要因のうち、テクノロジーを最も重要な要因だと考えている」

2013年にIBMが世界のCEOにインタビューしたレポート「CEO Study」の冒頭で語られています。

これらレポートにもあるように、世界を見れば経営にとってITの存在感は益々高まっています。また、競争力を高める武器としてITを戦略的に活用していこう意欲も高まっています。

その一方で、我が国においては、ITの戦略的な活用には及び腰で「必要ではあるが最低限の投資ですませたい」、言葉を換えれば、「必要悪としてのIT」との意識に留まっている企業も少なくありません。

なぜ、我が国では、このような事態を招いてしまったのでしょうか。その理由として、私は、経営者によるIT部門への根深い不信感があるものと考えています。

「他社ではITを使ってこんな事をやっています」、「ITを使えば、我が社の業務が改革できます」、「ITを使わなければ時代遅れで生き残りも難しくなります」。かつて、IT部門は、ビジネス・プロセスの革新やイノベーションのためとの大義名分を掲げ大きなプロジェクトを起ち上げてきました。しかし、十分な成果を見せられないままに、経営者の不信感を募らせてしまいました。経営者は、「自分達の存在感を高めるためだけにやったのではなかったのか」と受け取ったかもしれません。「それをそそのかしたのはITベンダー」という想いもあるのではないでしょうか。

その結果、IT投資に厳しい目を向けるようになったというのは、すこし考えすぎでしょうか。

JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)のレポートを見ると2013年度の売上高に占めるIT予算の比率は単純平均で1.2%、IT装置産業である金融を除けば、1%未満という現実です。この数字は過去10年間に半減しています。この原因を「IT部門への積もり積もった不信感」と言い切ってしまうことは言い過ぎかもしれませんが、少なからざる要因ではないかと考えています。

結果として、IT部門は守りの姿勢に入ってしまいました。裏方に徹し、システム基盤やオフィス系アプリケーション、既存の基幹業務系システムの保守や運用に自らの役割を絞り込み、競争力の源泉であるビジネス・プロセスの革新やイノベーションを自分達の役割から遠ざけてしまったように見えます。

「おまえ達は業務に口出ししなくていいから、しっかり安定稼働させてくれ!」

あるユーザー企業の情報システム部門長が、この現状に憂い業務効率の改善のために業務プロセスの変更とそれにあわせたシステムの刷新を業務部門の担当役員に提案に行ったところ、こんなことを言われてしまったと嘆いていました。

また、このような事態を打開するにしても、本来の役割を果たせるCIOがなかなかいないことも、大きな課題といえるでしょう。

本来CIOの役割は、経営者に対してIT活用の可能性や戦略的価値を理解させ、ITを使ってビジネス・プロセスの革新やイノベーションを実現させることにあります。しかし、現実をみれば、CIOとは名ばかりに総務や財務などの管理部門担当の役員が兼任している場合も少なくありません。ITについての正しい理解もなく、むしろIT部門を予算的に牽制することを役割としているようにも見えます。このような状況で、本来のCIOとしての役割を果たせるわけはありません。

「経営者によるIT部門への根深い不信感」と「本来の役割を果たせない名ばかりのCIO」という現実を抱えたままでは、ガートナーやIBMの言うようなITの戦略的活用は望むべくもありません。

この現状を変えてゆくためには、どうすればいいのでしょうか。簡単に解決できることではないでしょう。しかし、この現実を真摯に受け止め、IT部門もベンダーも、現状を変えてゆくことに取り組んでゆかなければ、共に自らの存在意義を失ってゆくことだけは確かです。

ベンダーやSI事業者として取り組むべきことについて、私なりの考えをご紹介したいと思います。

「お客様(経営者)に対してIT活用の可能性や戦略的価値を理解させ、その実践をマネージメントできる人材を育成すること」

言葉を換えれば、お客様のCIOの役割を果たし、経営者の良き相談相手となれる人材を育てていくことです。具体的には、以下の3つのことができる人材です。

  • テクノロジーと経営について正しく理解し、ITを組み入れたビジネス・プロセスの改革やイノベーションを実現するための施策を組み立てることができる。
  • IT活用の可能性や価値を経営者に理解させ、上記施策を提案し実行についてのネゴシエーションや説得ができる。
  • 施策を実施するためのチームを組織し、その運営をマネージメントできる。

このような人材は、以下の特性を持てなくてはならない。

  • テクノロジーや経営についての飽くなき好奇心
  • お客様の価値向上に対する意識の高さと実現への情熱
  • 様々な助言や新しい知識への素直さ

「そんなことは理想論だ。簡単にできる話じゃない。ましてやうちにはそんなことができる人材はいない」

そんな言葉が返ってきそうですね。でも、本当にそうでしょうか。

まず、ここに掲げたような「あるべき姿」を明確にしたことはありますか。そういう人材を育てようと真剣に考え、そのための取り組みを模索されたでしょうか。そんな人材はいないと決めてかかってはいないでしょうか。

簡単にできるとは思いませんが、明確なビジョンを持ち、そのための施策を積み上げればやがてはそういう人材も育ち、その魅力に惹かれて外からも集まってくるかもしれません。

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こういう人材が、IT部門の責任者を支え、また経営者の良き相談相手になるならば、我が国のビジネス・カルチャーを変えてゆけるかもしれません。当然のことではありますが、しっかりとお客様を囲い込み、確実で安定したビジネスにつながることは言うまでもありません。

「できない」と決めてかかる前に、まずは、そのための一歩を踏み出すことだと思います。

 

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今さら聞けないITの最新トレンドを、体系的に整理してわかりやすく解説します。お客様に頼りにされ相談される存在になるための常識力を、すぐに使える「カタチ」で手に入れて頂ければと準備を進めています。

サンプルのパワーポイントをダウンロードしてください

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「カタチ」のクオリティを体験いだけるようにと「ITビジネスのキーワード・2014」をパワーポイント形式のファイルでダウンロードできるようにしました。今回の塾もこのようなパワポ形式の資料500ページほどを、ご提供の予定です。

このチャートに掲載させていだきましたキーワードは、塾の中で詳しく解説させていだきます。

ビジネスの実践で使える知識・新しい人のつながり

今回は、前回にも増してテクノロジーとビジネスの関係をしっかりと考えてゆこうと思っています。例えば・・・

  • 「アジャイル型請負開発」で営業利益率4~6割を実現したSIのケース
  • セキュリティをビジネスにつなげる勘所

については、この分野の第一人者を講師に招き体験に基づく実践的な話をして頂く予定です。こういう方々や参加各社の皆さんとの懇親もこの塾の大きな価値だと考えています。

また、お客様の満足を管理する方法、相手が気持ちよく説得に応じてくれるテクニックなど、お客様応対のスキルについても解説いたします。

まずはご意向だけでもお知らせ頂ければ幸いです

毎回、多くの皆様にお申し込み頂き、お断りしなければならない状況となっております。つきましては、ご検討の段階でも結構ですので、まずはご意向だけ、お知らせ頂ければ、取りあえずの参加枠を確保致します。ご協力頂ければ幸いです。

詳細な内容を掲載したパンフレットもこちらからダウンロードできます。

どうぞ、ご検討のほど、よろしく御願いいたします。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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