崖っぷちのIT部門 = 崖っぷちIT事業者

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2014-01-25 13:00:00

「米国に比べて、日本はレガシーなシステムを使い続けている企業が多く、新しいテクノロジーへの移行がなかなか進まないのはなぜでしょうか。」

こんな質問をいだきました。同様に感じられているかたは多いのではないでしょうか。

ひとつ考えられることは、日米の企業文化や意志決定プロセスの違いがあるように思います。

米国の場合、CIOは、専任の役員として外部から招かれることも少なくありません。彼は、自らの存在感を示すために前任者とは異なる施策をおこない、自分のカラーを浸透させようとします。また意志決定プロセスもシンプルであり、トップダウンで直ちに実行できる環境にあります。

一方、我が国では、組織内の先輩後輩関係や情実によって人事が決まることも多く、前任者を否定しにくい空気があります。また、稟議制度による集団合議制のメカニズムでは、迅速な意志決定は困難です。加えて、先週のブログでも説明の通り、我が国のCIOは、財務や管理部門の役員が兼任し、ITについての正しい理解がないままにIT利用を予算面で牽制する役割を担っている場合も少なくはありません。そのため、新たなIT施策を直ちに実行することは容易なことではありません。

このような違いが、背景にはあるように思っています。

また、このような状況におかれたIT部門は、自分達の組織を守るためにリスクを避け、新しいことへの取り組みに消極的になってしまいます。

例えば、メインフレフレームで構築されてきたシステムをオープン系に移行しても、経営者やユーザーから見れば、これまで同様に使えることが前提となります。リスクを覚悟で苦労して移行しても、新たな価値を提供することはできず、何ら評価されません。そればかりか、これまで通りに使えない、不安定などということになれば、むしろ評価を下げられてしまいます。減点はあっても加点はないのです。

このような組織のメンタリティもレガシーなシステムの移行を阻む理由ではないでしょうか。

お客様の需要に応えることがビジネスの基本であるとすれば、IT部門を顧客とするITベンダーやSI事業者にとって、新しいことを仕掛けることは、得策ではありません。彼等の要求をそのままに、大過なく仕事をこなすことこそが、収益につながります。

かつて、お客様の業績も伸び、ITへの需要もそれと共に拡大していた時代においては、このような仕事のスタイルが事業の拡大に直結していました。しかし、こんな時代は、もはや過去のものです。

ビジネス変化の加速やグローバル化への対応は、待ったなしの状況にあります。これに伴うビジネス・プロセスの変革や競争力の強化に、ITはこれまでにも増して重要な役割を求められています。新しいテクノロジーの活用やレガシーなシステムからの移行は、これからの経営基盤を支える上で、ますます重要なものになってきています。

この要請に応えられないIT部門に存在意義はありません。当然、これに追従するITベンダーやSI事業者も一蓮托生で存在意義を失うことになるでしょう。まさに、そういう瀬戸際に立たされているのです。

「受け身の姿勢」、「ITの専門家集団」、「たこつぼ化」

日経コンピュータ(2014.1.23号)の特集「崖っぷちのIT部門」は、今のIT部門をこのように表現していました。この言葉を、ITベンダーやSI事業者に当てはめてもなんら違和感はありません。

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言われるがままに、その通りのシステムを構築する。求められた人材をそのとおり提供する。そんな「受け身の姿勢」ではこの状況を変えることはできません。変えてゆくには、お客様であるIT部門の変革を促し、その実践を支援することもひつとのやり方です。あるいは、経営者やユーザー部門にアプローチし、ITの可能性を理解させ新たなITの需要を創出することも必要でしょう。また、変革に果敢に取り組んでいる他のIT部門に関わりを拡げてゆくという方法もあります。

「攻めの姿勢」とは、決して強引な押し売りをすることではありません。お客様の要望、市場やテクノロジーの動向を冷静に見極め、自社の強みを整理し、ソリューションとそれを打ち出す言葉を見極めることです。すなわちマーケティングが必要なのです。

ITの専門集団」であることを決定的な武器にすることは難しい時代になりました。技術力や専門知識が不要だというのではありません。ITの専門性は前提条件です。しかし、それだけで差別化することが難しくなってきたということです。ITのコモディティ化やクラウドの普及は、この変化を加速しています。ITの専門性を活かしつつ、ビジネス・プロセスの変革に貢献することができなければ、自らの存在感を示すことはできません。

個別システムを長期にわたり担当し、そのシステムのことしか分からない「たこつぼ化」したITベンダーやSI事業者は、そのシステムの統廃合と共に、一瞬にして存在意義を失ってしまいます。お客様の全社最適の視点を持ち、ビジネスやテクノロジーを先読みして、お客様に新たな気付きを与えられないIT事業者に存在感はありません。コスト競争で疲弊し、いずれは淘汰されるだけです。

「崖っぷちのIT部門」と「崖っぷちIT事業者」は表裏一体の関係にあるのです。

IT部門のあり方が問われる今、IT事業者のあり方もまた問われています。両者は、もはや駆け引きの相手ではなく、お互いに生き残りをかけた同士ではないでしょうか。そんな意識を持ち、議論し合うことも、必要かもしれません。

 

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今、問われるIT部門・SI事業者の存在意義

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サンプルのパワーポイントをダウンロードしてください

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「カタチ」のクオリティを体験いだけるようにと「ITビジネスのキーワード・2014」をパワーポイント形式のファイルでダウンロードできるようにしました。今回の塾もこのようなパワポ形式の資料500ページほどを、ご提供の予定です。

このチャートに掲載させていだきましたキーワードは、塾の中で詳しく解説させていだきます。

ビジネスの実践で使える知識・新しい人のつながり

今回は、前回にも増してテクノロジーとビジネスの関係をしっかりと考えてゆこうと思っています。例えば・・・

  • 「アジャイル型請負開発」で営業利益率4~6割を実現したSIのケース
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については、この分野の第一人者を講師に招き体験に基づく実践的な話をして頂く予定です。こういう方々や参加各社の皆さんとの懇親もこの塾の大きな価値だと考えています。

また、お客様の満足を管理する方法、相手が気持ちよく説得に応じてくれるテクニックなど、お客様応対のスキルについても解説いたします。

まずはご意向だけでもお知らせ頂ければ幸いです

毎回、多くの皆様にお申し込み頂き、お断りしなければならない状況となっております。つきましては、ご検討の段階でも結構ですので、まずはご意向だけ、お知らせ頂ければ、取りあえずの参加枠を確保致します。ご協力頂ければ幸いです。

詳細な内容を掲載したパンフレットもこちらからダウンロードできます。

どうぞ、ご検討のほど、よろしく御願いいたします。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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