新規事業がうまくゆかない理由・組織的メカニズムなきほったらかし

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2014-02-15 07:00:00

「新規事業開発のためのプロジェクト・チームをつくりやっています。」

そういう会社は、決して少なくありません。しかし、組織的なメカニズムをもって継続的に取り組んでいる会社となると、決して多くはないでしょう。

「新規事業を立ち上げなさい」と言い渡され、後は自助努力に任せるだけになっていないでしょうか。あるいは、専任者が誰もいないプロジェクトということはないでしょうか。任されている本人にしてみれば、具体的な成果を求められる本業を優先させようとするのは、当然の心理です。例え結果が出なくても、本業が忙しいからと言い訳もできます。こんなことでは、成果を期待することはできません。

「そんな簡単にできることではありませんよ。」

その通りかもしれません。ならば、次のような取り組みを始めてみてはどうでしょう。

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新規事業の専任者を経営者あるいは事業責任者が任命する。営業企画や事業企画、マーケティングなどの部門に所属し、新規事業立ち上げプロジェクトの責任者として機能させる。KPIは、プロジェクトの成功とマイルストーンの達成。

  1. 彼はプロジェクトの起ち上げにあたり、成功と見做す条件、例えば、売上金額、市場シェア、顧客数などの目標を決め、同時にその期間と四半期毎のマイルストーンを設定する。
  2. プロジェクトには、営業や技術、マーケティングなどの他の部門の関係者を兼任で参加させる。各部門は、このプロジェクトのスポンサーとして予算を提供する。
  3. 専任のプロジェクト責任者の下、役割分担をおこない作業を進める。また、彼等と定期的な打ち合わせをおこない、PDCAを回す。
  4. 四半期単位毎に設定したマイルストーンを、経営者あるいは事業責任者が、進捗状況を評価。成果が上がれば組織を拡大し、独立した専任部隊に格上げする。うまくいかなければ、プロジェクトを終わらせる。

このようなプロセスを同時並行的に実施し、繰り返してゆくことで、成功の芽を育ててゆくというのはどうでしょう。

「そんなことができる人材がいたら苦労しませんよ」

こんな決まり文句がかえってきそうです。しかし、決断をしなければ、いつまで経ってもそういう人材を育てる切っ掛けは生まれません。私は、いろいろな活動で、多くのITベンダーやSI事業者の人たちと付き合うことも多いのですが、そういうチャンスを与えてくれないことに不満を持っている「できる人」たちが多いことも事実です。しかし、現場のマネージャーは彼等が引き抜かれてしまうことに抵抗するでしょう。そんなことが、できる人材を埋もれさせているのかもしれません。我が国における人材の流動性という足かせも社内であれば、少しは自由度があるはずです。

専任を置いて取り組んでも、成果がなかなか上がらなければ、積極的に外部のリソースを取り込むことをお勧めします。成果が上がらないのは、彼等の努力不足とは限りません。これまでの職場の経験から培われた価値観や既成概念、あるいは、染みついた通念が、新しい発想を妨げていることも少なくありません。

志の高いベンチャー企業も決して少なくはありません。内部で解決することを当たり前と考えず、出資も含めた協業を積極的に模索すべきです。彼等は、常識にとらわれない新しい発想やスキルを持っています。一方でビジネス化のノウハウや資金、人脈に乏しいことも少なくありません。彼等を取り込んでしまうのではなく、彼等の不足を補うことで、新しいビジネスの萌芽を育てることが大切です。

IntelやGoogle、Ciscoなどのテクノロジー企業が取り組んでいるCVC( Corporate Venture Capital )は、参考になるでしょう。彼等は、単にベンチャー企業に投資するだけではなく、事業化や事業拡大のノウハウを提供し、彼等の成功を支援しています。彼等の成功によるキャピタル・ゲインを期待するだけではなく、むしろ、彼等とのシナジー効果や、M&Aにより自分達の事業ポートフォリオに組み入れることで、有望な新たな事業を立ち上げようとしているのです。自前主義での限界を突破する有効な手段となっています。

また、スタートアップ段階のベンチャーに対しては、シード・アクセラレーションといって、数十万円、あるいは数百万円程度の少額の出資をおこない、あわせてビジネスのノウハウを提供して、彼等の事業化を支援する活動を行う企業もあります。事業化の段階が進むごとに出資金額を増やしてゆくことで、投資リスクを抑えることもできます。特にITベンチャーのスタートアップは、クラウドの普及により、かつてのような大金を必要としなくなり、少額であってもチャンスを提供できるようになったのです。

このような取り組みを業績が伸びているとき、あるいは、キャッシュのストックがあるうちに行うことが大切です。業績が低迷し、資金余力がなくなってしまってからでは、すぐになんとかしなければと短期間で成果を求められます。

「イノベーションのジレンマ」の著者クリスチャンセンの言葉にもあるように「新事業が成功する条件は、成功するまで試行錯誤を繰り返す資金余力があること」であり、この原則を実践できなければ、新規事業の成功はおぼつきません。

新規事業に人とお金の投資する決断、組織的メカニズム、社外との連携をうまく組み合わせてゆくことで、新しいビジネスの成功を惹き寄せてはどうでしょう。

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