ソリューションだけのビジネスは、失敗の約束

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2014-03-21 17:00:00

「クラウドで新規事業を立ち上げようと取り組んでいます。」

話を訊くと、サービスの機能やこの金額なら使ってくれるだろうという話ばかりで、どういう価値をお客様に提供しようとしているのかがよく分かりません。同様のサービスと何が違うのか、差別化のポイントも曖昧です。フリーミアムで切っ掛けを掴もうというのはいいのですが、無償で使う人たちを有償で使っていだくための動線も描かれていませんでした。

「年間数千万円のビジネスにしたい。」という意気込みは大いに結構なのですが、残念ながら、あまりにもお粗末なビジネス設計に、「これではムリですよ」と申し上げてしまいました。

新規事業の立ち上げに欠くことのできない概念が「デザイン」です。デザイン(design)の語源は、「計画を記号に表す」という意味のラテン語designareです。日本語では、「設計」という意味や「形態」や「意匠」と訳されますが、本来の意味はそれだけに留まりません。ある目的を達成するための行為をうまく行わせるための「計画」の意味もあります。

アメリカの建築家のルイス・ヘンリー・サリヴァンは、「形態は機能に従う(Form Follows Function)」という言葉を残しています。「何かを実現するための機能を追求すれば、自然にその形は決まる」という意味です。

スティーブ・ジョブスもまた、「デザインとはどう見えるかではなく、どう機能するかである」という名言を残しています。アップルの洗練されたデザインは、美しさを追求したから生まれたわけではなく、目的を達成するために必要な機能を追求した結果として生まれたのだというのです。

「デザイン」という言葉がわかりにくければ、「全体計画」と言い換えれば、少しわかりやすいかもしれません。

コンセプトを実現するためのデザイン、そのデザインを実現する手段がソリューションと見ることもできます。たとえば、Amazonの電子書籍サービスKindleについて考えてみましょう。

コンセプト

「いかなる言語で書かれ、印刷された本であっても60秒で手元に届けること」(Amazon CEO ジェフ・ベゾスの言葉)

 デザイン

中間流通を廃し、高額な印税、低料金での購入を実現するためECサービスと読書のためのデバイスを組み合わせたビジネスのシナリオ、体制づくり、エコシステムなどの全体計画

ソリューション

Amazon ECサービスの利用、電子書籍フォーマットMOBI(AZW)またはTopaz、eインクを使用した電子デバイスKindleなど

これをセットとして作ることが、ビジネス開発です。しかし、現実にはソリューションにのみ関心が向いてしまっているプロジェクトを見かけることも少なくありません。

  • 「クラウドで事業を立ち上げる」
  • 「ビッグデータで新規事業を実現する」
  • 「モバイルビジネスを次の事業の柱にする」

こんな言葉をよく聞くのですが、

  • 「なんのために、何に使うのか=コンセプトがはっきりしない」
  • 「収益を上げるビジネスモデル、対象とするマーケットやユーザーのペルソナ、パートナーとの連携や体制、実現のためのマイルストーンの設定=デザインが描かれていない」

といったことが少なからずあります。それなのに、

  • 「どんなテクノロジーがいいのか」
  • 「他社はどんな製品を使っているのか」
  • 「どれくらいの投資が必要なのか」

といったことを検討しても、成功のシナリオである「デザイン」がなければ、ビジネスにはならないのです。

「クラウドで3年以内に10億円のビジネスを実現する」といったコンセプトを打ち立てていても、お客様のいかなる価値を満たすかをあいまいにし、そこに至る筋道や体制、市場などを組み合わせた物語=デザインを描かないままに、ソリューションだけを検討している。そんな現場にしばしば遭遇します。

中国の地方都市の郊外に巨大な住宅団地が続々と建設されているそうです。しかし、学校や病院、その他の公共施設をあわせて建設するといったことはあまり行われていないのだそうです。その理由を建設業者に訊くと、そんなものを作っても買ってくれる人などいないからだそうです。そんなところに人は住みたいと思うでしょうか。まさに、全体計画=デザインがそこにはありません。

手段であるひとつひとつのテクノロジー要素がどんなに優れていても、プロセスの断片が正しくても、全体として事業目標を達成させるためのデザインがないビジネスは、お客様に魅力を感じてもらえません。新規事業のプロジェクト責任者は「ビジネスデザイナー」でなければならないことをしっかり意識しておく必要があります。

Businessman

「デザイン」は美しく無ければなりません。それは合理性の反映でもあります。それを実行してゆくと、必ずしもその通りに行かないこともあるはずです。そういうときは、「デザイン」を見直し、修正することも必要です。そうすることで、デザインは磨かれ、洗練されてゆくはずです。

「クラウドで新規事業を立ち上げる」ではなく「お客様に新たな価値、魅力的な価値を提供できる新規事業を立ち上げる。そのための手段としてクラウドを活用する」と置き換えてみてはどうでしょうか。クラウドを使うことが目的ではないのです。やらなければいけないことは、いろいろあります。その全体を描くことが、「デザイン」であり、それなくして新しいビジネスの成功は覚束ないでしょう。

 

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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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