「BtoOビジネスならユーザーにとってメリットを考える必要性があるけれど、それって本当かしら?BtoBビジネスだったら別に自社の製品やその使い方をデモンストレーションしてもいいんじゃない?ウチの製品はなんて言ったって近未来的なんだし。面白いと思う」
さくらの案に俺も大きな問題点に気づいた。
企業相手と個人相手じゃ売り込み方は違う。現実の世界では各専門の営業がスペシャリストにどんな顧客に対応できる。
でもこのセカンドライフでは島に訪れるユーザーに一目で分かる世界を見せなければならない。どっちつかずは、どちらのユーザーも逃してしまう。二兎を追うものは一兎も得ず。なのだ。
「そうだよな。ウチの会社はどっちもやっているから、先ずはどちらかに決めないとセカンドライフの中で何をやるかが決まらない。更にあの頭の固い上司を納得させるには、決めたある程度の事業プランを作って置く必要性もあるし」
さくらの言葉で俺の頭が一つクリアーになった。
「そうよね、ましてや会社のブランドイメージに関わる事ならなおさらよね。私たちの行動しかりでセカンドライフというこの世界の、我がドリームインターフェイス社のイメージが決まるのよ」
「そうだ。なんて言ったって、セカンドライフ支店っていうくらいだから」
俺は須藤さんの言葉を思い出す。
仮想現実という『現実』。
つまり、札幌支店、大阪支店、福岡支店といった我が社の支店と同じ支店が、このセカンドライフという土地(世界)に出来る。
それは現状の世界での事業展開となんら違わない。セカンドライフ特有の枷があるだけで、これは現実の世界なのだ。
「そう、先ずはビジネスモデルをはっきりさせることだ。それがはっきりすると来て欲しい人物も、テーマも全て浮かび上がってくる。その逆もしかり。そしてそのテーマを今度は追求していくんだ。何処までも深くね。さて匠君、次は君の頭の中を拝見させてもらおう。メーカーとしてどう参入すべきか、先ずはデザートでも食べながらゆっくりと聞かせてもらおうか?」
その須藤さんの言葉が合図かのように、俺たちの前に次々とデザートが並べられた。
作り置きとは思えない手の込みよう。ソースと小さなカッティングされたフルーツか大きな皿に品よく彩られ、目にも口にも期待か膨らむ。
「凄い…セットメニューのデザートとは思えない」
「でしょ?ランチが終わるとここはカフェに変わるの。その時このデザートは800円位かしら。ドリンクとセットで1200円ってとこ」
「それって高くないか?」
俺は即座に問い正す。
あと数百円足すとこのパスタセットが頂けてしまう。この金額設定には疑問だ。
「でも、ランチタイム以外でもいつも人が絶えないのよ」
なぜ?と俺が問う前に、須藤さんは楽しそうに口を挟んだ、
「その答えは、まさにセカンドライフ参入と繋がるんだよ」
(このブログの著者でもある大槻透世二さんがSecond Lifeでの「ものづくり」を紹介する「Second Life 新世界的ものづくりのススメ」。第23回は、『スクリプトの構造--テクスチャアニメーション4』。こちらもご覧ください)
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