結局俺とさくらは須藤さんにセカンドライフのヒントを受けたばかりではなく、美味しい昼食までご馳走になったのだ。
「夜は予約がなかなか取れないのよ」
何もかもを知っていたさくらは嬉しそうに笑い、俺と肩を並べてオフィスへと戻る道を歩いていた。
こんな心も晴れるような真っ青な空の下、俺はさくらと2人で秘密(と言ってもプロジェクトだけど)を共有している。
それだけでも心躍ること出来事だか、俺は先ほどの須藤さんとの会話を反芻し、興奮が沸きあがっていた。
結局、どうすれば人に来てもらえるのかは、どんなターゲットに来て欲しいか。先ずはターゲット像を絞りあげることだ。
その中でどういうビジネスモデルを作り、売り上げにつなげていくか。という問いになる。
単純に来てもらうだけであれば、それほど難しくはない。
そのSIMでアルバイトを募集して、お金を払えばいいことだ。
そうすれば20人、30人はすぐに集まる。
しかし、そんなことをしても意味かない。
成功するのは最初のプロモーションだけで、今に行き詰る。
大切なのは自社のビジネスモデルとコアコンビタンス(強み)を、どうセカンドライフと融合させるか……
「強み……か」
一人ゴチる俺の腕に、突然さくらは手をまわしてきた。
「……ッ?!」
腕を組むような形で俺の顔を見上げ、さくらは俺に問う。
「ねぇ、週末空いてる?」
「週末?」
魅惑気なさくら黒目が俺の視界30cmと近づき、気持ちとは裏腹に俺はさくらから身を引いてしまった。さくらは小さく笑い、スキップをするような形で俺から離れた。
あぁ…俺って。
「ディズニーランドに行きたいの、匠君って嫌い?ああいうところ」
「まさか!いいよ。行こう、うん。空けとくよ、うん」
まさかのデートの誘いに、俺はさくらに分からないようにと、さりげなく約束を受けた。不自然じゃないよな?なんて、降って沸いたかのような話しだが俺は嬉しさを密かに噛み締める。と、
「じゃあ、次はマーケティングの勉強ね。ディズニーランドはセカンドライフにとっていい教材なのよ」
俺はさくらの言葉に、瞬時に複雑な気分になった。
教材…ね…。
クルリと、さくらの漆黒の瞳が悪戯に光る。
「了解です!」
俺は何処までも青く高く抜ける空を仰ぎ、この俺の淡い恋心とプロジェクトの行方を案じていた。
まるで、セカンドライフの青空へと思いを馳せるように―――。
(このブログの著者でもある大槻透世二さんがSecond Lifeでの「ものづくり」を紹介する「Second Life 新世界的ものづくりのススメ」。第26回は、『テクスチャアニメーション応用3』。こちらもご覧ください)
※このエントリはZDNETブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNET編集部の見解・意向を示すものではありません。