クリエイターとユーザーの違い

secondlife 2007-11-08 08:00:00

翌日、俺はケリーとの約束の時間にずいぶんと早く、その場所にログインしていた。

海岸線に沈む夕陽は昨日と同じで、波音が優しく俺の身体に染み入ってくる。

「待った?」

そういって、ケリーは俺に駆け寄る。

昨日とは違う、清楚なワンピースまとい、長い髪を緩やかに結っていた。

ケリーはまるで俺とのデートを楽しみにしていたかの様に、また違う彼女一面を俺に見せてくれた。

仮想世界の女性が、こんなにも華やかに変わることが出来るとは、リアルの世界の女性にも引けを取らない。

俺とケリーは海岸線を昨日と同じ様に歩いた。

そして俺はケリーの更に意外な一面を知る事になる。

「日本人なの?」

「そうよ、アメリカ在住の」

俺はたぶん間抜けで、そして嬉しそうな表情をしていただろう。

ケリーはアメリカ、サンフランシスコの大学に在学中の日系2世のアメリカ人。22歳の女性で西洋美術史を専攻している大学院生だった。

それを聞いただけで俺は彼女に対して惹かれる理由が分かった。同じ日本人の血。さらに俺は案外と知的でインテリな女性が好きなのだ。

「ところで……」

ケリーは一通りの自分の素性を話した後、俺に話題を切り返した。

「あなたは企業…会社としてセカンドライフに参入したいのよね?」

ケリーは昨日俺が話したように、早速店舗展開を説いてくれるようだ。俺はその参入の前にこのSLと言う世界を少し覗き見しようとした事を伝える。

「それは正解ね」

ケリーはそういって、言葉を続ける。

「よく……企業として参入してきた人が、少しの触りだけ体験して撤退するの。でもね、これだけは覚えておいた方がいいと思うわ。クリエイターは企業とか、なんとかなんて、関係ないの。ただ単純に楽しいからいるだけ。そこで例えば、就職活動をしようとか、何かをしようとは思ってないわ。今はね」

「………?」

俺はケリーの言葉の意図するもの分からなかった。今から参入しようとする俺を前になんて釘を

刺すのだろう。ケリーは俺の心うちを察したのか、突然と話題を変える。

「この服、どう思う?」

「……素敵だ。清楚な感じが良く出ている。 服一つで別人のようだよ」

「有難う。これも私の作品なの。私は…このSLはただ単に誘われて始めたんだけどけっこう面白くて、でもそれは単純にものづくりが楽しいからなのよ。つまり……それは企業だ何だなんて関係なくて、クリエイターとしての充実って言うか」

なるほど。と、俺はやっとケリーの意図が理解できた。

今まで俺は彼女みたいなクリエイターのような人には会ってこなかった。

そして、外からセカンドライフのビジネスの可能性を探ってきたけど、本当のところ、中にいるアバター達の現状はそんな感覚なのかも知れない。

「じゃあ、たとえば今、アメリカがSLから撤退し始めているって噂は、どう思う?」

俺は逆にケリーに問う。

これから展開しようとしている俺にとって、それはなによりも、聞きたい質問だった。

俺は彼女の作られた、しかし美しいアバターの顔を覗きこみ、次の言葉を待った。。。

(このブログの著者でもある大槻透世二さんがSecond Lifeでの「ものづくり」を紹介する「Second Life 新世界的ものづくりのススメ」。第31回は、『パーティクル5』。こちらもご覧ください)

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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