「IT Doesn't Matter」で物議を醸したニコラス・カー、再び論争の主役に(2/2)

soa 2006-02-03 15:26:27

 ITによる革新は、ただテクノロジーを利用していれば実現できるというものではなく、導入したテクノロジーを活用することで可能になる。例えば今日では、だれもがビデオカメラや編集ソフトウェアを持っており、映画会社レベルの長大な作品を制作することができるが、第二のSteven SpielbergやSpike Leeが出てきたという話しは耳にしていない。

 ITが企業の成功を約束するわけではないというCarrの主張は的を射ている。だが、企業の命運を決定づけるものが唯一ITだけであるのかどうかは、まだだれも経験したことがないのでわからないのだ。適切なITツールの利用に裏付けられた、巧妙で進取の気性に富んだ事業運営は、確実に差を生む。見識のあるマネジメント戦略を打ち立て、新しく創造的な方法でITを賢明かつ上手に利用する企業は、一頭地を抜くことができるだろう。Carrは、Wal-Martが成功を収めたのはITそのもののおかげではなく、ITを「複雑で緊密に統合し、プロセスや機能をほかにはまねのできない方法で組み合わせた」結果だと指摘している。同様に、DellはITを注文製造戦略を進めるために活用したが、同社が成功したのは、従来の流通経路に縛られない効率的で巧みなビジネスを考案したためである。

 こうした考えは、適切なツールを自由に使うことのできる環境にいる指導者や経営者を刺激し、優位の獲得へ導くものだ。SOAの可能性を最大限に引き出すよう活用し、新たな問題を解決したり、ビジネスを推進する新たなアイディアを生み出したりするビジネスインテリジェンスシステムを構築した企業は、まだほとんど存在していない。企業は、現在よりはるかに低いコストでの開発や業務処理を実現する手法や技術--SOAもその一部である--の模索を、ようやく始めたところなのだ。こうした手法や技術を採用することで、生産性を確実に向上させ、ビジネスをさらに進化させることができる。

 また今日では、経済における企業精神も育っている。ここ20年ほどのITサービスやソフトウェア、ハードウェアの躍進は、かつては見られなかったものだ。地方に点在し、パートナー起業や契約企業のネットワークに接続する形で操業している、数人の従業員しかいない極めて小規模な企業でも、ITを活用して、世界的な経済に影響を与える巨大企業と競合していくことが、今では全産業を通じて可能になった。Carrは、これこそITによる企業活動の均質化だと述べているが、同時に、IT運用における競争力に関して大企業が抱える諸問題の原因ともなっている。大企業はしばしば、単に他社に遅れを取らないようにするためだけに、ITを利用している。

 Nicholas Carrの問題提起は、今も重要な意味を持っている。ただ、初期のITが日用品化しているという点ではCarrは正しいかもしれないが、次世代技術がわれわれをどのような方向へ導いてくれるのかについては、まだ明らかになっていないのである。

(Joe McKendrick)

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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