J-SOX対応は本当に大丈夫か?(4)

徳田浩司(Koji Tokuda) 2006-05-12 20:44:04

大手監査法人の業務停止

とうとう恐れていたことが起こった。4大監査法人の1つである中央青山監査法人が業務停止されることになった。カネボウの粉飾決算を手助けしたことへの制裁である。1?2ヶ月程度の業務停止だが、実際の影響は非常に大きい。停止処分を受けると、監査契約を結んでいる企業との契約を解約しなければならないからだ。いったん解約した企業が、制裁を受けた監査法人に、再契約を依頼する企業はどれほどあるだろうか?J-SOX準備にも影響が出てくることは必至である。

アーサーアンダーセンの悪夢の再来か?

再契約をせずに他の監査法人に切り替える企業が多ければ、中央青山の経営に重大な影響を及ぼす恐れも出てくる。エンロン事件の片棒を担いだ、アーサーアンダーセンの解体と同じことが起こるのだろうか?中央青山と提携関係にある米国プライスウオーターハウスは、受け皿を作ることをすでに表明しているという話である。

SOX法に関して、監査法人に対しては、もともと厳しい批判がある。SOX法が成立したのは、上場企業の財務データの情報開示に対する不信感がきっかけであったが、それを監査するべき立場の監査法人に対する不信感でもあった。その結果、厳しく監視しようということになったが、逆に監査法人の仕事を増やすことになり、結果的に監査法人が潤うことになったのである。焼け太りではないかという話で、何とも皮肉な話である。

上場監査まで手が回らない大手監査法人

また私が直接聞いた話でもこうだった。かつてシリコンバレーの監査法人は、取引先の株式公開準備で大変忙しかった。株式公開には、公開企業としてふさわしいか会計の立場から監査を行う必要がある。90年代後半、米国ナスダック市場への公開社数は、年間200社から400社と数多くあり、準備段階の未公開企業を含めると何倍にも上り、監査法人は大変忙しかった。ところがバブル崩壊の2001年以降、その数が10分の1の20社から40社程度に激減した。その結果、上場に必要な専門家の仕事は激減し、公開サポートに強かったシリコンバレーの大手の弁護士事務所はリストラを余儀なくされた。同様に、監査法人も仕事は激減し、さぞかし、監査法人は大変なのだろうと思っていた。しかし、実際には、バブルがはじけたあとちょうど2002年にSOX法が制定され、その対策という仕事が出てきて、むしろ大変に忙しくなったという話である。シリコンバレーのベンチャーに、監査法人はどこか?と聞いてまわったことがあるが、4大監査法人を上げるものは少なく、地場の中堅の監査法人が大半であった。大手はフィーが高いとみな嘆いていた。大手はSOX法対応で忙しすぎて、ベンチャー向けにはフィーを非常に高くして仕事を断っているのであろう。NASDAQへの上場数がなかなか復活しないのも、監査法人の手が回らないことも影響しているだろう。

「J-SOX対応は本当に大丈夫か?(3)」で書いたように、米国SOX 法対策として最初の1 年間に要したコストの平均は約436 万ドル(平均5億円)だった。そのうち、外部コンサルが34%、内部稼動が31%、監査が30%である。ということは、J-SOX対応の業務の3割を監査法人が担当しており、監査法人は非常に重要なパートナーである。しかも、コンサル業務の中にも監査法人が対応しているケースも少なくなく、全体の半分ぐらいの業務は監査法人が担っているということであろう。その重要な役割を担っている監査法人のうち、大手4社の1つが今回の事態になった。

6割もの上場企業がJSOX対応未着手

そもそもJ-SOX対応のため、監査法人が忙しくなっており、確保するのはだんだんとタイトな状況になっているという話である。経験のある外部コンサルも少なくなってきた。それに追い討ちで今回の中央青山の事態が発生した。J-SOX対応でなんらかのアクションを行っている上場企業は全体の4割という報告がある。反対に、6割もの企業が何もやっていないということだ。これら企業はいよいよ危なくなってきた。

(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz

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