シリコンバレーの住宅事情と起業家の対応?成功する起業家は世界中のリソースを活用

徳田浩司(Koji Tokuda) 2006-09-03 09:32:49

シリコンバレーの高い住宅費は脅威(?)

シリコンバレーの新聞であるサンノゼマーキュリーニュースのある記事に目がとまった。

Scott Duke Harris氏の「HIGH HOUSING COSTS ARE A THREAT, STUDY SAYS」(シリコンバレーの高い住宅費は脅威)という記事である。自分自身の生活にも非常に密接に関連したものでありご紹介したいと思った。

要約すると、「シリコンバレーはベンチャーキャピタル投資で世界一の資金を集めるハイテクセンターであるが、一方で、高い住宅費のため、その地位は今後脅かされる可能性がある」ということだ。

このニュースで示された「購入可能住宅インデックス」(年収の3分の1をローン返済にあてた時に買える家)によると、平均的収入の家庭で買える家が、2006年に売買された住宅のわずか14.9%しかなかったそうだ。2005年は19.5%、2004年は32.6%であったのに比べ急激に低下している。シリコンバレーでは、2000年のITバブル前後、住宅不足は深刻になり住宅費が高騰したのであるが、その後、2001年9月11日のテロ以降バブルがはじけ、就業人口が大幅に激減した。そのため、住宅費も低下して落ち着いてくるはずであった。ところが2000年以降、低金利を背景として、全米で不動産投資が活発化し、大幅に価格が上昇を続けてきたのである。

最近自宅を売却した人の話では、4年前に購入した一戸建てが、わずか4年でなんと50%の上昇で売却できたということである。また、ある人は、2000年ころ1億円で購入した家が、2億数千万円で売却できたという話であった。普通の3ベッドルームの家が、現在では軽く1億円を超えてしまうのである。バブルが到来する前の90年代前半は、他の地域と同じく普通の2000-3000万円で買える一戸建ても少なくなかったので、10年ぐらいで4倍以上に上昇したことになる。私自身も自分が住む賃貸物件の契約更新で、大幅な家賃の上昇となって大変な思いをしている。

自宅を持つものの中には早々とリタイヤし、自宅を売却してネバダ州など物価が非常に安い州に移り住み、余生を楽しむ人も増えている。例えば、シリコンバレーから近いところでは、レイクタホというリゾート地がある。カリフォルニア州とネバダ州にまたがり、その周辺に移り住むケースがあって、その地には不動産業者が多数いる。アウトドア派には、夏は湖でウオータースポーツ、冬はスキー、春、秋はキャンプ・ハイキング・釣りと年中いろいろなスポーツが楽しめるところである。更には、ご存知の通りネバダ州はラスベガスが有名であるようにギャンブル公認の州で、インドア派にはナイトショーとカジノが年中楽しめるのである。しかも、サンフランシスコからそう遠くないので、4、5時間車をとばせば、好きなときに都会の雑踏も味わえる。こんないい生活はそうないだろう。

次第に金利が上がってきているので不動産価格もそろそろ天井の感もあるが、一方、こんなに高くなっても不動産を購入する人はいる。いろいろ聞いていると、台湾系住人が不動産投資に意欲があるようである。1億円を超える物件の場合だが、共働きのサラリーマンが30年のローンを組んだが、月額70万円もの支払いになったという話だ。これはいくら高給取りだから、とは言っても異常である。最近の国勢調査では、シリコンバレーの最大の都市であるサンノゼ市において、平均年収が70,921ドル(約8百万円)となり、全米2位にランクしているそうだが、表面的によい年収に比べて、住宅コストは非常に大きく、大変な問題になっている。

この状態がとても長く続くとは思えない。不動産価格の調整はいずれ来るだろう。

世界のリソースを活用し成長を続けるシリコンバレーベンチャー

冒頭の記事を書いたScott Duke Harris氏だが、彼は、こんな状態が続けばシリコンバレーの地位が脅かされるとしている。しかし、私は少し意見が異なる。賢い起業家は、既に次の手を打ち始めているのだ。アウトソーシングおよび、地方・他国へのオフィスの分散化である。

あるベンチャー企業では、売上計画の未達成による資金不足に悩んでいた。追加のVC投資もあまり期待できないので、思い切って開発人員を大幅にレイオフし、社員数を半分以下とした。オフィスも大きなフロアーが不要になったので、小さいところに引っ越した。それでは成長するどころか、維持もできないと思っていたのであるが、そこは世界のITのハブであるシリコンバレーのすごさである。インドのネットワークをフルに使って、レイオフした以上の開発要員をインドで採用する(コストは米国の4分の1以下)ことで、大幅なキャッシュフローの改善と、開発能力の向上という、一見矛盾する2つの結果をもたらしたのである。

また別のソフトウエア会社では、米国ではビジネスがなかなか立ち上がらなかったのであるが、中国人CEOを招聘し、開発を中国にシフトし資金の温存を図っていた。その間に、中国でのビジネスが一気に立ち上がって来て、非常に業績が好調となったということであった。

ビジネスと技術のアイディアおよび起業はシリコンバレーであっても、リソースは世界中の最も有利なところから得て、リスクも分散しているのである。VC資金は米国や欧州から(その投資家は世界中)。シリコンバレーの人件費と住宅費が高騰であるならば、開発はインドや中国にシフト。米国で市場が立ち上がらなくても、日本を含むアジアとヨーロッパに市場を求める。米国ナスダックで公開できなければロンドンでの上場。というふうに世界規模で勝負を行っている。

日本のソフトウエア産業はどうだろうか。全ての要素は日本にクローズしている。非常に優秀な人材を誇る日本企業であるが、ますます世界的な競争が進んでいる中で、果たして勝ち目はあるのだろうか。以前のブログでお話したように、人口減少によって国内市場の伸びが期待できない中、海外への市場を求める必要があると思われるが、そもそも世界の舞台で勝負をしているソフトウエア企業は非常に少ないのである。もっと目を世界に転じるべきではなかろうか。

シリコンバレーの高い住宅費は脅威であるが、投資家は企業家に対し、厳しく費用対効果を見直すことを促し、より筋肉質のシリコンバレーベンチャーを生んでいるのである。優秀なシリコンバレーはしぶとくサバイブしているのである。

(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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