セブ島でオープンソース・サミット開催される

若井 直樹(Naoki Wakai) 2008-07-02 17:15:19

 6月23日、24日の2日間にわたり、セブ島のマンダウエ市にあるCICC(Cebu International Convention Center)において、Philippines Open Source Summit(OSS)が開催された。私は休暇をかねて20日金曜日の早朝にセブのマクタン島に入り、アイランドホッピングやボホール島ツアーに参加しようと、意気揚々と準備をしていた。ところが、マクタン空港に到着する直前に飛行機の窓に激しい雨がぶち当たってくるのを見て、もろくも私の野望は崩れ去ってしまった。

 初日宿をとったのは、マクタン島のヒルトンホテルから数分のところにある「ヒノデビーチ」という民宿だ。オーナーは日本人でなんと私と同郷の京都出身だそうだ。京都では長年ソフト開発会社を経営されており、数年前に若手に経営を譲ってセブ島に本格的に腰を落ち着けたそうだ。ギリシャにある地中海を見下ろす丘に作られた家々を想わす真っ白な建物で、日本人好みの浴室とトイレを分離した部屋となっている。目の前はすぐに海岸でもし晴れた日であれば、真っ青な海を一望できたであろう最高のロケーションといえる。このロケーションでこの価格なら全く申し分はない。もちろんセブのマクタン島には、1泊600ドル近くもする高級な・リゾートホテルが何件も軒を連ねているのはご存じの通りだ。しかし、リーズナブルな費用でひっそりと最高の海を望みながら過ごしたいのなら、「ヒノデビーチ」を是非おすすめしたい。料理してもらった魚介類の刺身も本当においしかった。奇麗な海を望む場所で、食事もいただける。

 ところが当日台風がセブ島を直撃し、悪いことに「ヒノデビーチ」にはジェネレーターが設置されておらず、心を癒してくれるはずの海の風景は、一変して恐怖の海に変わってしまった。こうしてまるまる一夜を蝋燭の明かりで過ごすことになった。翌日のことだ。「この強い台風6号の影響で850人以上が乗ったフェリーがフィリピン中部シブヤン島沖で沈没した。海軍当局は24日、転覆した船内で「多数の遺体」を発見したことを明らかにした。700人以上とされる行方不明者の生存は絶望的とみられる。台風による洪水などの死者も290人を超え、最終的な台風の犠牲者は1000人近くに達する恐れも出てきた。」との報道があり、信じられない事故を耳にすることとなった。

 さて23日月曜日、台風はマニラへ北上し、ここセブの天候は曇り。早朝、CICCへ向かった。メイン会場では、開会式が開催されている。予想以上に多くの来場者が集まっていた。以前にも書いたが、フィリピンでは、政府から企業まで、様々な理由からオープンソースを積極的に活用している。

今回のOSSでは大きく分けて4つのテーマが取り上げられた。

1) 政府や各民間企業がどのようにオープンソースを位置づけ取り入れているのか、

2) IBM、マイクロソフト、サンマイクロシステムなど大手ITベンダーの取り組み

3) Mysql、Eclipsなどメジャーなオープンソース・プロバイダーの技術情報

4) Morph LabsやExist Globalなど国内オープンソース開発会社の活動紹介

 若いアントレプレナーやエンジニアも盛んに議論に参加し、活発な討論が展開された。その話題は、収益モデルからプログラミング言語の選定まで様々で、多くの人がオープンソースの技術やビジネスに期待寄せていることがよく分かる。ピンにおけるオープンソースの普及が及ぼす社会的影響に関しては、賛否両論、盛んに議論されてきた。オープンソースに関心が集まる背景には、ソフトウェア・ライセンス費が多くの組織にとって高価であることは事実だ。またCIOおとびMISマネジャーの多くは、「購入コスト」に目がいきがちで、構築されたシステムが顧客やユーザーにどの程度のサービスを提供できているかまたはすべきかの視点が欠落しがちであることは否定しがたい。しかし、容易に資金の少ないアントレプレナーやプログラマーが、ITの世界でその腕を発揮する良い環境を提供していることもまた事実なのだ。実に裾野の広い世界を形成している。「I love you」ウィルスは、その象徴的な産物かもしれない。

 後援組織の中には、日本のJETROも名を連ねている。更に日本のIPA(情報処理推進機構)やJISA(日本情報サービス産業協会)などと連携を模索しているPSIA(Philippines Software Industry Association http://www.psia.org.ph/ )のメンバーには、日本人が経営するソフトウェア企業も加盟しており、すでに日本企業との取引にこぎ着けた会社もまた、また、フィリピンでは、JICAの後援でソフトウェア・エンジニアの日本語教育にも力を入れている。実際、日本語のOS環境でソフトウェア開発をしているエンジニアも多数存在することをご存じだろうか。

 IBMが行った講演では、調査結果をもとにフィリピン人の英語能力の高さとネイティブに近い発音、それにプログラミング能力のレベルと給与水準からみて、インドと同等以上の可能性があると絶えず強調している。日本企業との取引を考えると、むしろ日本側の英語能力(特にエンジニアやプロマネ)と世界に積極的に関わっていく姿勢があるかどうかという点に問題があるように想われる。「日本をあがめたてて向こうから来てくれるはずだ」などと考えているのなら、きっと世界からとり残されることになるだろう。こそこそと、日本語ができる相手を探しているのなら、それもどうかと思う。

 フィリピンのIT企業の優位点は、IBM が強調するように英語能力とその発音がネイティブに近いということ、それをいかして早くから欧米の多くのプロジェクトに参画し様々な出身地のメンバーと共同作業することにたけていること。さらに、早くからオープンソースを活用した開発を手がけており、新技術に果敢に立ち向かう優秀なプログラマーが多数いることだろう。実際に多数の優秀なプログラマーが米国企業に引き抜かれ海を渡っている。もちろん基本的なワークスタイルは日本人とは異なっている(私自信はこちらのワークスタイル方が肌に合っているが)。しかし、異なった環境に適応していくことができるのも、また一つの特徴だ。

 対岸から眺めているのではなく、実際にこちらに来られること、そしてフィリピンの可能性を日本のIT産業のために積極的に生かして欲しいと切に願う。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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