Google、Android携帯の次はChrome端末か?

若井 直樹(Naoki Wakai)

2008-09-05 15:52

 昨年GoogleがシンガポールにR&Dセンターを設置する計画を発表したことは、多くの読者にとっては既知のことだろう。ZDNetやCNETでも、毎日のようにGoogleのアクティビティが報道されている。また、他の媒体でもGoogleをウォッチする連載を展開しているようだ。「Google Apps」、「Google Chrome」、「Android」と、紙面をにぎわす話題には事欠かない。

 さて、昨年8月のComputerworld誌に、Google の国際オペレーション担当ディレクター、カンナン・パシュパシー氏がR&Dセンターの国際センター構想について意欲的に語っていたのをご存じだろうか?Googleはこの動きを加速させているようだ。カンナン氏は、この任務を成し遂げるために、世界中を巡って各国の最新事情を収集している。

 先日、彼はフィリピンにやってきた。いったい誰とあるはどういった組織と対話したのかは定かではない。彼がスタンフォード大学関連の知り合いをたどっていたときに、私が身を寄せているオフィスの代表に連絡がはいった。そこで私も引きづり出されることになった。

 話題はもちろん携帯電話やネットワーク・インフラの現状、この2年間でどの程度コンピュータ・サイエンスの教育レベルが向上したか、IT 関連技術者の給与はどうかといったことに集中した。その中で、カンナン氏がこんな質問をした。「アフリカ諸国で南アフリカよりもIT技術者の平均給与の高い国があるのをご存じですか?」と。なんとナイジェリアやガーナだそうだ。いまや、東ヨーロッパの旧社会主義諸国の給与水準もインドやフィリピンに比べると、そうとう高いらしい。私は、驚いた。というのも、Googleが世界の隅々にまでおよぶ調査をしていることを、全く想像していなかったからだ。

 Googleがどのような技術をもってどのような世界像を描こうとしているのかという点に私個人の関心があったので、話の流れを変えるタイミングを計っていた。そしてやっと発言の機会を見つけ質問してみた。「フィリピンは、とてもコストコンシャスな国で、企業といえどもOpenofficeに代表されるオープンソースを積極敵に活用している。また、PCに関しては何度もボックスを開けてホコリをかき出しながら、本当に使えなくなるまで使っている。またPCなどのIT関連機器の市場浸透度はまだまだ低い。」「誰もがブラウン管テレビとキーボードがあれば、Googleで検索した情報に簡単にアクセスでき、またそこで提供されている豊富なアプリケーションを自由に使えればどれほど良いか、と考えている。」と切り出してみた。「Android携帯ならぬChrome端末、しかも上位のアプリケーション・プラットフォームに最適化された低価格なアクセス機器を考えてみたことはないか。」ときいてみた。カンナン氏は、それは面白いと言ったかともうと、「これはGoogleの正式な計画ではないが」と前置きし様々な「想い」を語ってくれた。

 「Googleは、マイクロソフトなどの既存ベンダーに挑戦状を投げつけるようなことをするつもりはない。ただ、我々はクライアント/サーバの申し子ではなく、Webの世界で生まれ育った企業だ。」とし、ただ忠実に「Webの世界」とその可能性を日々発展させているのだと強調した。ここからGoogleがどんな世界を描こうとしているか、読者はどうお考えになるだろうか?

 ユーザーにはアプリケーションや情報を活用して「やりたいこと」があるだけで、そこにどんなOS が搭載されているか、どんなチップセットが搭載されているかはどうでも良いこと。ただ、使いやすくストレスがないことを望んでいる。しかも、面倒なメンテナンス作業に時間をとられたり、頭を悩ませたりしたくない。そのためにはOSまで含めた「クラウド:コンピューティング」は良い提案だ。アクセス機器にまで及べば最適だ。この会議(集いといったほうが適切か)にはISPも参加していた。Google にとってインフラ中のインフラを提供しているのは彼らISPである。もちろん彼らが、堅牢で低価格なネット環境を提供することが前提ではあるが。

 ダド・バナタオ(Chips & Technology社のファウンダー)氏や先日5日に他界されたピーダー・バルデス(Tivoliのコ・ファウンダー)氏がフィリピン人であることを考えれば、まだまだ知られてはいないが、ITおよびエンジニアリングの分野で優れた人材がいる。この国で創造的な実験が可能ではないか、とカンナン氏に話してみた。彼は「ありがとう」とだけ言い残し、この集いは解散となった。

※このエントリはZDNETブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNET編集部の見解・意向を示すものではありません。

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