クラウドコンピューティングからシンクライアントを考える その(2)

若井 直樹(Naoki Wakai) 2008-10-03 11:46:41

 前回、日本でシンクライアント・ハードウェアの普及のきっかけとなったのが、「個人情報保護法」の施行と「Windows XP Embedded」であることについて述べた。上記の2点がシンクライアント普及の背景にあったために、シンクライアントについて語る場合、「データ」をローカルストレージに記憶させるのではなく、サーバ側にあるストレージに記憶させるという点にフォーカスされるようになったことにもふれた。「個人情報保護法」の施行は、各企業に対して早急に個人データの保護を求めた。そして情報漏洩の多くがPCのハードディスクから漏洩していることもあって、証券会社や保険会社のなかには、緊急措置としてクライアントPCのハードディスクを使用できないようにロックするためのソリューションを購入する企業もでてきた。

 注目したいのは、なぜ「Windows XP Embedded」の登場がシンクライアント・ハードウェアの普及に一役買うことになったのか、ということである。もともとのシンクライアントの定義からすれば、もっともピュアなシンクライアント環境とは、「ホスト―端末システム」、つまりダム端末によって構成される環境である。ではなぜ「Windows XP Embedded」が、つまり構成変更可能な「Windows XP Professional」が必要だったのだろうか?もちろんその理由は一つではない。中でも重要な理由は、レガシー・システムをシンクライアント環境にマイグレーションしなければならないという点と、クライアントOSとしてWindows以外のOSにたいする信頼や認知が低いという点にあったといえよう。たとえば、Windows PCでカードリーダーによるユーザー認証をしている企業が、他のOSで同じことを実現しようとしても、デバイス・ドライバーが提供されていない場合が多い。また、端末側にクライアント・アプリケーションをどうしても必要とする場合も然りである。

 こうなると、クライアント端末側にOS以外のソフトウェアが複数動作することになり、Windows OS意外にもその他のソフトウェアのアップデートのために、クライアント端末を年間に何度も変更することを余儀なくされる。そして導入コストとしては、OSとともにターミナルサーバCALライセンスとの両方への投資が必要となる。さらには、「Windows XP Embedded」を稼働させるためには、少なくとも256MB以上のOSをインストールするための媒体と512MB以上のRAM、そしてハイスペックのCPUが必要となり、ハードウェアそのもののコストもLinuxやメーカー独自OSを選択した場合に比べると増大する。結局、シンクライアント環境へのマイグレーション・コストがふくれあがることになる。

 すでに述べたようにシンクライアントを「データの所在」にフォーカスをする傾向が強くならざるを得なかったために、、「Windows XP Embedded」を搭載したシステム環境もシンクライアント環境ととらえることが一般化した。しかし、厳密にはOS以外のアプリケーションあるいはソフトウェアが搭載されている端末は、シンクライアント端末ではなく「Stripped down PC」と呼ぶべきだ。つまり、シンクライアントの定義を、「データの所在」および「ソフトウェアの構成・配置」の両側面でとらえて初めて、全シンクライアント・ベンダーが強調している、強固なセキュリティ(ウィルス被害やデータ漏洩が防げる)とTCOの削減が同時に実現できるのではないだろうか。つまりシンクライアント端末とは、キーボードおよびマウスになどの入力装置の情報をサーバに転送し、同時にサーバ側で生成される画面データを表示装置に展開するための最小限のファームウェアを搭載した、記憶装置を持たない端末と定義すべきだろう。

 シンクライアントをこのように理解すると、次に「シンクライアント」と「クラウド・コンピューティング」の関係が射程に入ってくる。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]