クラウドコンピューティングからシンクライアントを考える その(3)

若井 直樹(Naoki Wakai) 2008-11-04 17:21:36



前回、シンクライアントを、「データの所在」および「ソフトウェアの構成・配置」の両側面でとらえることによって、「シンクライアント」と「クラウドコンピューティング」の関係が射程に入ってくる、と述べた。米国時間で1027日、マイクロソフトは「Windows
Azure
」を発表したことはご存じだろうか?
報道によれば、ガートナーのアナリストが「非常に先見性のある、現実的なアイデアだと思う」と述べたようだ。それに先立ってGoogleAmazon.comが。「クラウド・プラットフォーム・サービス」を提供していることは周知のことだ。それぞれにプラットフォームの特徴やサービスには、それぞれ異なった独自性がある。その詳細についての議論は別の機会に譲る。

クラウドコンピューティングに関して、さまざまなブログで「定義が明確でない」あるいは「バズワードだ」として警告をするものが多い。確かに現状はそのように見受けられても仕方がないが、専門家の努力によってその定義は明確化されていく途上にある。まずは主要なよそ技術やコンポーネントを定義することが重要だ。ガートナーでは、20081月ころから担当のアナリストを集め、それまで見解が分かれていたクラウドコンピューティングの定義について議論を交わしたとい
う。そこで決まったのが、「膨大なまでに拡大できる、ITによって可能になる能力が、インターネット技術を使って外部の顧客にサービスとして提供されると いうコンピューティング・スタイル(A style of computing where massively scalable IT-enabled
capabilities are delivered as a service to external customers using Internet
technologies
)」という定義だった。「アナリスト個人の見解ではまだ細かな相違があるが、この定義にひとまず決まった」とアナリストはコメントしている。

リーマンブラザーズの倒産を機に拡大している経済危機は、CIOMISマネージャのみならずすべての経営陣に、「IT投資の負担軽減」を検討する契機となっている。拡大し続けるデータセンターの維持コストは、すでに地球規模のエネルギー問題にまで発展し始めている。またそのことが、IT産業におけるほぼすべてのメジャー・プレーヤーが、オルターナティブを提案せざるを得ない強い動機となっていることは間違いない。その象徴は、マイクロソフトのクライアントOSのスリム化とWebベースのOfficeの提供だろう。Web世代企業の象徴であるGoogleのテクノロジーは、巨象マイクロソフトを突き動かしたのだ。まるで、かつてジョブズ率いるピクサーのCG技術が、ディズニーを突き動かしたときのように。しかし、クラウドコンピューティングへ向かう流れは、単なる技術革新以上のものがある。その背景には、エネルギー問題つまり環境問題があることを忘れてはならないだろう。

もはやIT産業のメジャー・プレーヤーは、少なくともクラウドコンピューティングに関する取り組みと展望を、市場に対して説明しなければならなくなった。デルは、先日ビジネス向け新機種の発表の中で、「シンクライアント」をラインアップすると同時に、クラウド・サービスも提供すると示唆している。また、シスコは、この間の買収戦略を見ている限り、プレーヤーがまだ明確ではない分野の一つである「バーチャル・ネットワーク」および「バーチャル・ストレージ」技術を提供するかのように見える。

私にとって最も興味深いのは、「クラウドコンピューティング開発環境」である。マイクロソフトのスリム化されたクライアントOSWebベースのOfficeを前提とするならば(オープンソース陣営にビジネス分野で築いた圧倒的な地位を侵食されないためにもマイクロソフトは懸命に開発環境を提供しようとするだろう)、それは少なくともサーバ・サイドのプログラミング環境になると予想される。クラウドコンピューティングにおいて、シンクライアントが標準アクセス端末であると特定されたわけではないが、おそらく開発環境はそれが前提となるだろう。とすれば、初めてサーバ・ベース・コンピューティングの開発環境が出現することになる。既存のアプリケーションがサーバ・ベース・コンピューティング環境で稼働可能かどうかに多くの時間とコストを費やした企業もあるだろう。2000年問題と同様にシステム・アーキテクトからプログラマーまでの作法が問題だった。

まだ、長い道のりが必要だが、間違いなくクラウドコンピューティングに収斂するだろう。そして、同時により進化した、PCアーキテクチャのままではないシンクライアント端末が出現し、ユーザーがクラウドコンピューティングを最高にエンジョイする日が遠からず来ると思う。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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