think ASEAN - 情報セキュリティーの実態 (その2)

若井 直樹(Naoki Wakai) 2009-03-31 11:26:53



 前回、日本現地法人は何よりも違法コピーされたソフトウェア(違法ライセンス)の管理に頭を悩ましていることを述べた。この国では、モールや市場へ行けばたやすく違法ライセンスを購入することができる。平均的な労働者の賃金を考えれば、ソフトウェア・ライセンスはとても手の届く代物ではないことが容易に理解できる。ハードウェアには中古品市場があり、レスポンスの悪さや、数か月で動かなくなるかもしれないというリスクさえ我慢すれば、非常に安く手に入れることが可能だ。

WindowsXPOEM版の価格が、マカティ市の最低賃金で働く正規雇用労働者の半月分の給与に相当する(約4000ペソ)。それに対して、違法ライセンスであれば、100ペソ前後で手に入れることができる。個人ユーザーのほとんどは違法ライセンスを使用しているといっても過言ではない。特に、Windows OS、アドビ社の製品、そしてAutoCADが違法ライセンスの代表格。最近Macユーザーも増加しているために、iLifeiWork、そしてVMWareなども出回っている。Mac用ソフトの違法ライセンスは、Windows版の2倍の価格で販売されている。ここでもMacユーザーは、セリブリティ扱いなのだ、

少し余談になるが、これは映画や音楽ソフトの領域でも同調である。それらの違法ライセンスは、1枚のCD-ROMが50ペソ前後で購入できる。正規に販売されているCD-ROM10分の1以下に相当する。正規販売店はたまったものではない。盛んにバーゲンセールで在庫をさばこうとする。値下げをしてもせいぜい150ペソで、違法ライセンスの3倍はする。しかも、違法ライセンスが市場に出回るのは非常に早い。たとえば私の好きな「マダガスカル」などは、続編が上映されている最中にその違法ライセンスもののDVDが市場に出回る。正規品はその数ヶ月後登場するといった具合だ。

ここで話を元に戻すと、個人ユーザーのなかでも特にPCを使いこなすユーザーが、自宅で利用しているソフトウェア(違法ライセンス)をUSBメモリーなどを利用して、会社のPCにコピーして使っていることが多々ある。会社のポリシーとしては持ち込み禁止としているが、実際には密かにインストールして使っている社員がいる。なぜこんなことになっているのか?

いくつかの例外を除けば、社長および管理部門、そして製造部門のトップマネジメント以外はそのほとんどが現地で採用したスタッフというのが一般的な人事構成で、ITを管理しているMIS部門は100%が現地スタッフで構成されている。優秀なITシステム管理者を採用することは、日本法人にとって容易ではない。企業運営の核となるアプリケーションは、日本本社のIT部門の指示で選定され現地で購入するのが通常のやり方だ。

社内ルールに従って、定期的に状況報告がトップ管理者に行われるが、ITの専門家ではないために理解できないことも多いようだ。しかも、担当者がサボタージュしていることも珍しいことではない。たとえば、一般従業員が禁止されているソフトやデータを持ち込んだUSBからダウンロードするのを、「フィリピン人同士なんだからいいじゃないか」といってIT管理者が内緒で許可するとか、禁止されているメッセンジャーによる外部とのチャットなどを許可することが日常茶飯事のように行われている。

監視の目が届かないところで、ことが進行しているというわけだ。また、レイオフされた従業員が腹いせや小遣い目当てで、友達の従業員がコピーした違法ライセンスの所在を、マイクロソフトなどのライセンサーで組織されている監視組織に摘発したりする。前回も書いたが、最悪の場合、摘発された企業は国外退去を命ぜられる場合もある。

従業員のPCで日常何が起こっているのか、サーバにどのようなアクセスがあるのか、それらを監視しロギングでもしないと大変なことになりかねない。そして本社IT部門が定期的に監視したり状況を把握するなどの措置をとらないと、現地の日本人管理者には荷が重すぎる。現地の日本人管理者は、いったい誰に相談すればよいか困惑しているのが実情だ。

この点の改善が早急に必要だと思う。本社および政府機関が何らかの対策をとるべきではないだろうか?少なくとも、気軽に相談に乗ってくれる日本人で構成された、相談窓口の設置は急務といえる。Asean地域の日本法人に共通する問題の一つだろう。IT 関連の業務に従事する人材にも地域によって傾向がある。またマインドもことなる。かといって、ITを放棄して今やビジネスが成り立つわけはない。日本本社のCIOは、この点をふまえた施策作りが必須の課題となるだろう。

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1件のコメント
  • 誤字、言い回しの不自然さが目立つ記事ですね

    2009年03月31日