エンタープライズ2.0は幻想か?

吉田健一(Kenichi Yoshida) 2006-09-11 08:40:49

 みなさん、初めまして。

 この度、ご縁あってZDNetでブログを書くことになったリアルコムの吉田です。まずは軽く自己紹介を。

 私は情報共有・コンテンツマネジメントソリューションを提供するリアルコムのコンサルタントである。大手企業の情報戦略立案や情報基盤構築、ITを活用した企業変革のプロジェクトに関わっている。

 もともとは戦略コンサルティング会社でコンサルティングに従事していたのだが、2000年のドットコムバブル時に当時の先輩だった谷本(現リアルコム社長)と一緒にリアルコムを立ち上げた。

 最初に手がけたのはコンシュマー向け知識の交換サイト「Kスクエア」。当時、AmazonやEBayがドットコム企業として時代の寵児になっていたのだが、「インターネットで交換すべきなのは本や雑貨ではなく知識なのではないか?」というコンセプトのもとで、知識のオークションサイトを作った。無料で質の低い2chのような掲示板ではなく、質の高い知識を交換する「知識のマーケット」を作るところがミソだった。

 ただ、少し時代に早かった。知識の売買手数料で会社を養う程にはビジネスは大きくならなかった。

 ところがこの「Kスクエア」をみていたある総合商社のIT企画部長が「面白い。現場同士の知識の交換が商社にとって不可欠だ。この仕組みをウチの会社の中で使えないか?」と目をつけたのが全ての始まりだった。

 その後、リアルコムはエンタープライズに大きく舵を切り、企業向けにナレッジマネジメントのソフトウェアとコンサルティングを提供しはじめた。現在、設立7年目を迎え、情報共有・コンテンツマネジメント分野のリーディング企業として100社以上のお客様とお付き合いをさせていただいている。

エンタープライズ2.0とは

 さて、自己紹介はこれくらいにして、そろそろ本題に戻ろう。本ブログのテーマは「エンタープライズ2.0」である。巷をにぎわすWeb2.0のテクノロジーやコンセプトがエンタープライズの情報基盤をも「2.0」に変えてしまう---これが「エンタープライズ2.0」だ。

 イントラブログや企業内SNSの取り組みを始めている会社も多いだろう。JotSpotSocialTextといったBusiness Wikiベンダーや、ZimbraなどのAJAXを使ったASPソリューションも「エンタープライズ2.0」企業として注目を集めている。

 Web2.0の波は本当にエンタープライズをも飲み込んでしまうのだろうか?社内の情報共有は全てブログやWikiで行われるようになるのだろうか?GoogleはMicrosoftを打ち負かしエンタープライズの覇者になるのだろうか?

 エンタープライズはそんなに甘くない。

 これまでインターネットで発祥したテクノロジーやコンセプトを企業に定着させる仕事に関わってきたが、エンタープライズとインターネットは本質が違う。エンタープライズビジネスには目標があり、ITはそれを達成するための手段なのだ。企業から広告媒体または販売チャネルとして無料で提供され、ユーザーが自発的に利用するインターネットとは違う。

エンタープライズとは

  • 全ての活動は業務遂行のため。楽しい、便利、無料は二の次。

     

     

  • エンドユーザーにはメールも見れない役員もいれば、Winnyを入れてしまう新人もいる。ロングテールではなく80%マジョリティが大事。

     

     

  • セキュリティやコンプライアンスが大事。SOX法にも対応しなければいけない。

     

     

  • ITインフラの提供と活用促進はIT部門の業務。エンドユーザーに対してある程度の強制が効く。

...そんな環境なのだ。

 

 Web2.0から発祥したテクノロジー、例えばブログやWikiはエンタープライズでも活用できるだろう。しかし、イントラブログやBusiness Wikiのブームを見ていると「2000年の掲示板ブームでも同じような議論があったな」と思ってしまう。ブログやWikiを社内で活用することはできるし成果を生むかもしれないが、それだけでエンタープライズの本質が変わるわけではない。

Web2.0とエンタープライズの狭間で

 じゃあ、「Web2.0はエンタープライズには関係ないの?」というと、そんなことはない。Web2.0のテクノロジーやコンセプトはエンタープライズに大きなインパクトを与える可能性を秘めている。ただ、そのインパクトはインターネットの世界とは全く異なったものになる可能性が高い。

 本ブログではWeb2.0とエンタープライズはあくまで本質が異なるという前提に立ちながら、Web2.0がエンタープライズにどのようなインパクトを与えるのかというテーマを扱ってみたい。いわば、下の図のようにWeb2.0とエンタープライズの「狭間」を漂う中で、エンタープライズの将来を垣間見ていくイメージだ。

domain.gif

 これから本ブログでWeb2.0のテクノロジーやコンセプトを紹介していくが、単にそれらを喧伝するのではなく、CIOやIT部門の視点で地に足が着いた議論をしていきたい。こうした議論を通じ、Web2.0が企業経営やIT戦略にどのようなインパクトを与えるのか、どんな経営課題を解決するのか、結果として情報基盤はどういう方向にむかっていくのかについての示唆を感じていただければ幸いである。

 まずは次回から、幾つかのケーススタディを通じてエンタープライズ2.0の本質は何か、という議論をしていこう。

(吉田健一@リアルコム

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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