Google Apps for your domainの衝撃

吉田健一(Kenichi Yoshida) 2006-09-13 20:27:43

激戦区・エンタープライズコンテンツマネジメント

 昨日、リアルコムの戦略発表会があった。ZDNetさんにも詳しい記事を書いていただいたのだが、テーマはエンタープライズコンテンツマネジメント(ECM)だ。今後、エンタープライズの激戦区はECM市場であり、リアルコムはECM市場でグローバルリーダーになるという発表を行った。

 先ほど、オーシャンブリッジ高山さんのブログを拝見していたら、ちょうどコンテンツマネジメントについて書かれており、やはりECMが渦の中心にあるのだと再確認した。エンタープライズ2.0の一つの大きなテーマがECMであるということについては、沢山書きたいことがあるので、後ほど時間を取ってじっくり取り上げたい。

衝撃のGoogle新サービス

 さて、話を戻そう。前回はエンタープライズ2.0に否定的な内容だったので、今回はその可能性を示唆する事例を1つ紹介しよう。

 とある超巨大企業A社の話。

 A社はカンパニー制で事業はカンパニー毎に独立して行われている。しかし、ITインフラは全社共通基盤として提供されており、利用コストはカンパニーの利用人数に応じて配賦課金されていた。ところがその課金のコストがとても高く、メール1人あたり毎月5000円ものコスト負担を余儀なくされていた。3000人のカンパニーだと年1.8億円の利益が吹き飛ぶ。

 A社のカンパニーのIT担当者と話をしていたら「正直メールなんてコモディティなんだから毎年1.8億払うなんて馬鹿らしいよね。やめてみんなでGmailにしてその分ボーナス増やした方がいいよね。ははは。」と冗談でおっしゃっていた。

ところが、衝撃のサービスがGoogleからリリースされた。Google Apps for your domainである。

 このサービスでは、2GBのメールボックスを持つWebメール「Gmail」、オンラインスケジューラー「Google Calender」、インスタントメッセージングサービス「Google Talk」、100MBまでのWebページが作成できるコンテンツ管理ツール「Google Page Creator」などの様々なサービスを自社ドメインで利用できる。当社であれば、realcom.co.jpというアドレスでGmailを使い、realcom.co.jpというドメインでホームページが作れるというわけだ。管理者はウェブベースの管理パネルにアクセスし、ユーザーアカウントリストを管理したり、エイリアスや配信リストを設定したりもできる。

 現在まだβ版であるが、もちろん無料。そのかわりAdwords広告が出る。テクニカルサポートやストレージ容量を追加した有料のプレミアムサービスも近日中にリリース予定とのことだ。

 このニュースを見た時に、冗談をいっていたA社のIT担当者の顔が浮かんだ。

 もちろん大企業でこうしたサービスが一気に導入されるケースは少ないだろう。しかし、中小企業・ベンチャー企業はどうだろうか?企業の壁を超えたバーチャル組織やプロジェクトではどうだろうか?学校などの非営利法人ではどうだろうか?

Web2.0がエンタープライズに投げかける論点

 実はこのサービス、8月末にリリースされて以来あまり騒がれていないのだが、このサービスがエンタープライズに投げかけた論点は、イントラブログやBusiness Wikiとは比べ物にならないくらい大きいと考えている。

 なぜなら、ビジネスモデルが違うからである。メールサーバー製品Microsoft Exchangeはソフトウェアビジネスだ。Microsoftは企業のIT部門にソフトウェアライセンスを販売し利益を得る。ところが、Google Apps for your domainは広告ビジネスなのだ。企業のIT部門は顧客ではない。Gmailを企業ユーザーに無料で使わせるかわりにAdwords広告を出す。そして、広告主から1クリック何円という単位で広告料をロングテールに集めて利益をあげる。全くビジネスモデルが違う。

 そしてこのモデルができるのは、世界随一のインターネット媒体と広告主網を持つ広告代理店Googleだけなのだ。Microsoftがマネをしようと思っても絶対にできない。

 イントラブログやBusiness Wikiはエンタープライズ2.0の序章に過ぎない。Web2.0を切り開いたのもGoogleだが、エンタープライズ2.0を切り開くのもGoogleだ。エンタープライズ2.0の中核となるGoogleのエンタープライズ戦略についてはまた別の機会に取り上げたい。

 ちなみにこのサービスのドメイン登録は先着順なので、まだ未登録のIT部門の方は早めにご登録を!

(吉田健一@リアルコム

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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