エンタープライズサーチに関する3つの誤解

吉田健一(Kenichi Yoshida) 2006-09-26 22:43:13

 お騒がせしましたが、一昨日無事にタイから帰国した。完全に無血革命だったようで、ホテルでも「日焼けに注意」くらいしか警告がなくいたって平穏無事に過ごせた。

 さて、そろそろ頭をビジネスモードに頭を切り替えよう。これから数回にわたり、最近のホットトピックであるエンタープライズサーチについて書いてみたい。

WebとEnterpriseの潮の目:エンタープライズサーチ

 Googleの本格参入、それに対抗するOracle、IBM、Microsoft。ニュースに事欠かないエンタープライズサーチだが、ZDNetさん主催のエンタープライズサーチカンファレンスも今月で第二回を向かえ、その加熱ぶりは相当なものだ。インターネットを2.0に牽引したのがサーチであったのと同様に、エンタープライズの世界でもサーチが「潮の目」であることは間違いない。

 エンタープライズサーチに関する考察は、アイティーアール上村さんの記事に詳しいのでぜひご一読を。私からは、お客様企業におけるサーチに関する肌感覚について語ってみたい。

ポータルは死んだ?

 ここ1〜2年、エンタープライズにおける大きな潮流の変化として「ポータルからサーチへのシフト」がある。これまで情報共有というとポータルプロジェクトが多かった。しかし、ここ最近プロジェクトで議論になるのは「ポータルのページデザイン」ではなく「検索結果ページのデザイン」なのだ。

 ある大手メーカーでGoogle Applianceを導入したのだが、この企業では「我々はポータルはいらない」と言い切る。イントラネットで社員に提供するのはGoogleの検索窓一つ。社員はこの検索窓に知りたいキーワードを打ち込む。検索結果画面ではキーワードにマッチしたコンテンツがリストされるのはもちろんだが、それに加えてAdwords広告(Google検索結果の右側に出てくる広告)のように、会社として見せたいコンテンツを表示する。例えば「出張 申請」で検索すると、Adwords広告がでている検索結果の右側の場所に「出張申請ワークフロー」「出張申請FAQ」などの「出張申請」に関わる会社として提供したいコンテンツへのリンクが表示される。

 ポータルでワークフローを整理して下手なリンク集を作るより、特定の情報を探したいユーザーに対して検索結果画面で必要な情報を整理して提供する方が、トータルでの情報アクセスが向上されるというわけだ。

 この会社は極端な「検索中心主義」かもしれないが、あまり笑ってもいられない。こうした「ポータルからサーチへ」の流れは、インターネットの世界でYahoo等のポータルサイトからGoogleへとと移っていったWeb2.0の歴史を彷彿とさせる。この大きな流れは、たぶん誰にも止めることはできない。

 「じゃあ、早速わが社でも検索エンジンを入れよう」と思われるかもしれないが、残念ながらそうは簡単にはいかない。インターネットのイメージでエンタープライズサーチに拙速に取り組むと痛い目にあう。これから、私が良くお目にかかるエンタープライズサーチに関する誤解を3つ紹介したい。

誤解1:検索エンジンを入れれば欲しいコンテンツが見つかる

 これが最も良くある誤解だ。インターネットでは、Googleのような優れた検索エンジンがあれば欲しいコンテンツが見つかる。しかしエンタープライズではそうは簡単にいかない。それはエンタープライズのコンテンツが全く異なる形だからである。

 インターネットのコンテンツは全てHTMLだ。そのHTML同士は「階層構造」と「リンク」という極めて構造化(Structured)された形で蓄積されている。InfoseekやAltavistaなどの1.0時代の検索に対し、Googleが圧勝した理由は「Page Rank」という仕組みにあると言われている。「Page Rank」とは、「良くリンクされているコンテンツは価値のあるサイトだ」という定義に基づき、あまりリンクされていないサイトを検索結果からばっさりはずすことにより、本当に探したいサイトだけが検索結果に残るようになった。こうして、Googleは、他の検索エンジンではマネのできない検索精度を実現した。

 一方、エンタープライズのコンテンツは、メール、PC上のファイル、ファイルサーバー、Notes、イントラネット、業務システムと多岐にわたる。そのうち、80%のコンテンツは非構造化(Unstructured)データであり、コンテンツ同士の関連性や重要度や親子関係などは全く分からない。無論「Page Rank」のような仕組みは実現できない。一般的に共有ファイルサーバーに入っているファイルの半分は同一ファイルのコピー(!)だといわれている。そして同一ファイルで無いにしても大半が古いファイルか、価値の無いファイルである。つまり検索をするといくつも同じようなゴミファイルが引っかかってきてしまうということだ。

 すなわち、単純に検索エンジンをいれただけでは「ゴミ箱を検索してもゴミしか出てこない」結果となり失敗してしまうのだ。そのため、如何に「ゴミ箱から宝石を探し出すか」がエンタープライズサーチのポイントとなる。

誤解2:検索とはキーワードサーチだ

 検索というとキーワードサーチを思い浮かべることが多いが、これは検索の1つの形態に過ぎない。ユーザーは欲しい情報にたどり着ければよいわけで、それには幾つかのやり方がある。

 インターネットでは無限の情報の海から未知の情報を探すためにキーワードサーチを使う。しかし、エンタープライズの情報は有限である。そして、サーチの80%は以前に見たことのある既知の情報のありかを再び探すためであるという。例えば、「確か、職務管理規程ってどこかにあったよな」と、目的のコンテンツの存在や内容はある程度知っていていて、それにたどり着きたいというケースが多いということだ。これがインターネットとエンタープライズの大きな違いである。

 こうした場合、キーワードサーチよりもカテゴリや分類体系からのナビゲーションのほうが早くたどり着けることが多い。「職務管理規程」とキーワードを打ち込んで膨大なコンテンツの海をさまようよりは、「人事部のページの、規程集一覧の、管理者向け規程の...」とドリルダウンしていったほうが早くコンテンツにたどり着けるケースもあるのだ。

 キーワードサーチだけでない、カテゴリや分類によるナビゲーションの併用が求められることも、エンタープライズサーチの特徴だ。

誤解3:ユーザーは検索でコンテンツを見つけたい 

 検索でユーザーが本当にやりたいことはなんだろうか?例えば「職務管理規程」を検索した人は、「職務管理規程」のPDFファイルを見つけたいのだろうか?たぶんそうではない。「自分の権限でこの金額の決済をして良いかの確認を取りたい」というのがユーザーのニーズであり、もしかしたら職務管理規程を作った人事部の担当者に電話したら解決するかもしれないし、隣にいる同僚と会話をすれば済む話かもしれないのだ。

 つまり、エンタープライズサーチではコンテンツを見つける以外にも、人や組織を見つけることも解決策になりうることが多い。そのため、コンテンツの裏に紐づく作成者・作成部門が重要になってくる。場合によっては、コンテンツではなく作成者・作成部門そのものも検索で見つかった方がよい場合もある。コンテンツだけでなく、人や組織も同列に扱うことが、エンタープライズサーチの特徴である。

 

以上、エンタープライズサーチの特徴を3つの誤解という形でまとめてみたのだが、この中で記述したインターネットサーチとエンタープライズサーチの違いをまとめると次のようになる。

search.gif

 インターネットの世界ではGoogleがサーチを武器に1.0から2.0へと導いた。それでは、エンタープライズでは、誰がこのエンタープライズならではの3つの特徴をうまく捉え、サーチの世界を制するのか?次回、各社の戦略と取り組みについて述べたい。

(吉田健一@リアルコム

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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