Web2.0に買収されるEnterprise2.0

吉田健一(Kenichi Yoshida) 2006-11-10 10:53:02

 先週、JotspotがGoogleに買収された(最近、Enterprise2.0関連の動きが早すぎて、ブログのエントリーが追いつかない!ちなみに先日、StellentもOracleに買収された。これも書きたいんだけど...)。

 Jotspotという企業は聞いた事がないかもしれないが、U.S.でEnterprise2.0成功事例というと、JotspotかSocialTextか、といわれるくらい有名な企業だ。JotspotはEnterprise向けにWikiのASPサービスを有料で提供している。Wiki以外にもカレンダーや写真共有など様々なチームコラボレーション機能を提供しており、そのソフトウェアのレベルの高さには定評がある。既に2,000社以上に導入して利用料による収益を生み出しており、最も成功したEnterprise2.0の企業と言われている。

 その企業がGoogleに買収されるというのは、Enterprise2.0を考える上で、YouTube買収以上に大きな事件なのだ。

■GoogleのJotspot買収の与える意義

 このニュースは「Googleのオフィス戦略で弱かった部分が補完された」「Googleが自社でWikiを作ることができるが買収した方が早い」といったトーンで報道されることが多い。しかし、Enterprise2.0の視点からみると、この買収はもっと大きな意義を持っている。

 GoogleはJotspotのサービスの統合が完了し次第、無料にすると発表している。すなわち、GoogleはこれまでソフトウェアライセンスビジネスだったJotspotを、広告ビジネスに転換しようとしているわけだ。いわば、Enterprise2.0のビジネスモデルが、Web2.0のビジネスモデルに飲み込まれたことになる。

 今日、優れたソフトウェアを作って頑張ってライセンス販売やASPで展開しても、それでビジネスをして儲けるのはとても難しい。Web2.0的なテクノロジーのASPモデルで最も成功したといわれているJotspotですら、Googleという世界最大の広告代理店の門下に下り広告ビジネスに乗り換えた。それだけ広告ビジネスが儲かるようになったわけだ。Googleのお陰で。

■IT予算 vs マーケティング予算

 「じゃあ、近いうちにマイクロソフトもGoogleに買収されるのか?」というと、多分そうはならない。企業にIT予算がある限り、EnterpriseはEnterpriseとして残る。EnterpriseとWebの戦いは、すなわち「IT予算 vs マーケティング予算」の戦いでもある。

 例えば、Web2.0の代表格であるブログ。このブログのソフトウェアを開発しているSix Apartドリコムが急成長している。しかし、その多くはIT予算ではなくマーケティング予算で購入されている。すなわち、企業のマーケティング活動として、顧客向けインターネットサイトにブログを活用しているのだ。IT部門のIT予算でブログを購入しているEnterpriseのケースはまだまだ少ない。

 マーケティング予算により発展してきたWeb2.0のテクノロジーは、IT部門のIT予算にどう影響を与えるのか。Jotspotを使っていた企業は、今後はIT予算を一切かけずに、無料で同じソフトウェアを使うことができるようになる。その一方でGoogleは広告主のマーケティング予算からAdwords広告料をもらう。IT予算からマーケ予算へのシフトが進んでいくのは、逃れられない大きな流れである。

 なんとなくWikiの話になったので、次回はEnterprise2.0の本丸、集合知について書きたい。

吉田健一@リアルコム

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