エンタープライズマッシュアップとSOAの似て非なる関係

吉田健一(Kenichi Yoshida) 2007-01-19 23:26:35

 今日は、2007年展望で述べたもう一つのテーマ、エンタープライズマッシュアップについて書きたい。

■そもそもマッシュアップとは何か?

 まずおさらいから始めよう。そもそもマッシュアップとは何だろうか?

 マッシュアップはWeb2.0を形作る上で極めて重要な技術的な考え方である。Webという究極の分散システムをあたかも1つのシステムかのように扱うためにはシステム間の相互連携が必須となる。相互連携はWeb APIを介して行うのだが、このとき集中管理すべきマスターデータは統一された1つのWebシステムで管理され、他のWebシステムはそのマスタデータを参照する。これがマッシュアップである。

 書籍マスターデータベースはamazon、地図マスターデータベースはGoogle Mapsというように、世界で1つのユニークなマスターデータを持つWebシステムがデータをマッシュアップする。世界中のWebシステムはそれらのマスターデータを参照し、あたかも自分のシステムでそのデータを持っているかのように活用する。

 各Webシステムにとってみれば、世界で最も優れた書籍データベースや地図データベースを低コスト・スピーディで活用出来るというメリットがあるという一方で、マッシュアップする側はマスターデータを管理することで、大きなビジネスチャンスを手に入れることができるわけである。

■似て非なる関係:エンタープライズマッシュアップとSOA

 さてこのマッシュアップ、エンタープライズにも適応できるだろうか?

 システム間の相互連携性。

 古くて新しいこのテーマは、80年代にはオブジェクト指向、90年代にはEAI(Enterprise Application Integratiton)、2000年に入るとSOAと名を変えて、エンタープライズの永遠のテーマとして、繰り返し議論されてきている。特に最近のSOAブームは留まるところを知らない。エンタープライズシステムに携わる人は「マッシュアップ?ああ、SOAをWeb2.0っぽく言ったのね。」と思うかもしれない。

しかし、実はマッシュアップとSOA、似て非なるものである。この図を見て欲しい。

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 まず、SOAはあくまで業務系システムを対象にしたシステム相互連携性のことをさしていることが多い。一方、マッシュアップで議論されるのは主に情報共有やコラボレーションなどの情報系システムである。情報系の分野で相互連携性の議論が行われるようになったところが、これまでの議論と大きく異なるポイントである。

 もう一つ、SOAはあくまで企業のファイヤーウォールの内側=イントラネットで行われることが多いが、マッシュアップはファイヤーウォールの内側と外側、すなわちイントラネットとインターネットの区別なくシステム相互連携が行われる。そういう意味では、業務系でいうところのEDIと近いイメージもある。つまり、エンタープライズマッシュアップは「情報系のSOA/EAI+EDI」と言っても良いかもしれない。

■スイートからマッシュアップへの相互連携性への道のり

 情報系システムの分野でシステム相互連携性(インターオペラビリティ)の議論がなぜされてこなかったのか。情報系分野の歴史をまとめてみるとその理由が明らかになる。

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 まず90年代は「スイート」の時代であった。マイクロソフトExchangeやLotus Notesに代表されるグループウェア・スイートを導入することで、情報系の全てのニーズを満たすことができた。企業内の情報系システムは極めて統一・統合された環境であった。

 しかし、2000年頃からインターネットブームの影響を受けて、企業内でもイントラネットが盛んに構築されるようになった。結果、社内にウェブサイトやナレッジマネジメントシステム等の様々な情報系システムが乱立するようになった。1つのスイートでは全ての情報系システムニーズを満たさなくなってきたのである。

 そこで次に訪れたブームがポータルである。分散したシステムを表示レイヤで統合するために、システムの玄関=ポータルを構築しようという動きだ。ポータルに加えて、サーチによる統合という流れも出てきた。

 しかし、単なる表示レイヤの統合では、真の連携は実現できず、利用者の利便性が高まらない。Webの世界でも、Web1.0ではポータルやサーチで表面的な連携をしていたものが、Web2.0ではコアデータがマッシュアップされることでことで、ユーザーのエクスペリエンスが圧倒的に高まったという経緯がある。表示レイヤだけでなく、データレイヤのが真の相互連携性を高めるのである。

 こうして、エンタープライズ環境でも表示レイヤの統合から一歩進み、データレイヤにおける連携、すなわちコアデータのマッシュアップの機運が高まりつつある。これがエンタープライズマッシュアップである。

 とまあ、概念的名位置づけを述べたが、「じゃあ、企業内でどのようなデータがマッシュアップされるべきなの?」という疑問が浮かんでくるはずである。これについては次回、じっくり議論しよう。

 


 

吉田健一@リアルコム

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