クライアントソフトがなくなる日〜Google Gearがエンタープライズに投げかけるもの

吉田健一(Kenichi Yoshida) 2007-06-01 21:23:38

 昨日はBusiness Blog&SNS WorldのCNet西田さんのセッションで、アジャイルメディアネットワーク徳力さんと一緒にパネリストをやらせていただきました。午前中セッションにも関わらず大入りで、45分間大変面白い議論をさせていただきました。西田さん、徳力さん、どうもありがとうございました!

 さてその時も話題になったのだが、Google Devepoler Dayで発表されたGoogle Gears。今のところ淡々とした反応しか無いように見えるのだが、エンタープライズの観点から見るととても大きなインパクトを秘めている。今日はGoogle Gearsがエンタープライズに与える衝撃について述べてみたい。

■SaaSがイマイチ普及しないワケ

 Google Appsの企業向けエディションがリリースされたり、Salesforceが郵政公社に導入されたりと話題に事欠かないSaaS。ただ、イマイチ本格的な展開はまだまだという感が否めない。そのハードルになっているのがオフライン利用である。

 リアルコムではGoogle Appsを全社導入している。皆さんご存知の通り、GmailやGoogle Spreadsheetは大変使い勝手が良いツールなのだが、実際業務で使おうとするとオフライン利用できない事が大きな制約になる。客先からPHSでアクセスしたり、新幹線の中で仕事がしたいユーザーからすると、オンラインでないと使えないGmailやSpreadsheetには限界がある。結果、ついついOutlookとExcelを使ってしまうことが多い。つまり、オフライン利用ができないことが理由で、Google Appsの利用が限定的になっており、引き続きマイクロソフトオフィスをつかわざろうを得ない状況なのである。

■オフライン利用はエンタープライズの虎の子

 実はこうしたオフライン利用の機能は、エンタープライズが昔から強い分野であった。Lotus Notesにはレプリカと呼ばれる機能がある。レプリカとは、NotesクライアントのデータとDominoサーバーのデータをシンクロさせる機能であり、一旦レプリカでしまえばオフラインのNotesクライアント上で仕事ができる。レプリカをしたデータをノートPCに入れて客先に行ったり、出張先のホテルでシャワーを浴びている間にレプリカしたり、といったことがエンタープライズでは日常茶飯事に行われていた。

 こうしたオフライン利用はエンタープライズでは欠かせない機能であり、マイクロソフトSharepoint Server2007でもレプリカ機能が実装されている。オフライン利用が必要であるがゆえにLotus Notesやマイクロソフトオフィスのようなクライアントソフトが必須なのであった。

 ところが。Google GearでWebアプリでもオフライン利用ができてしまうとなると、話は大きく変わってくる。GmailやGoogle Docs&Spreadsheetでもオフライン利用ができるとなると、エンタープライズでの本格的な利用の可能性も出てくる。あえてマイクロソフトオフィスを入れる意義は薄れていくのである。

■リッチクライアント三つ巴の変遷

 Google Gearはこれまで議論されてきたリッチクライアントの世界図を大きく入れ替える可能性を秘めている。これまでリッチクライアントというと、Ajax、Flash、Eclipseの3陣営があった。AjaxやFlashは元来リッチな表現はできるがオフライン利用はできないWebならではのリッチクライアントであった。3陣営の中で唯一EclipseベースのLotus Expeditorがオフライン利用が可能なリッチクライアントであり、エンタープライズ向けのリッチクライアントとして有望視されていた。

 ところが、ここにGoogle Gearが出てきたことで、Ajaxもオフライン利用ができるリッチクライアントとしてエンタープライズに本格的に適応できる可能性が出てきた。Flash陣営からはApolloがオフライン利用ができると打ち出されており、これまで劣勢だったAjax、Flashが本格的にリッチクライアントの可能性を持ち始めたのである。

 全てのクライアントソフトがWebサービスになる日はそう遠くないかもしれない。

 


 

吉田健一@リアルコム

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