市場原理はメール洪水を防ぐか?

吉田健一(Kenichi Yoshida) 2008-10-17 13:00:00

お久しぶりです。

半年ほどブログを中断していたが、この度タイトルを「組織を進化に導くIT羅針盤」と変えて新装開店することにした。エンタープライズ2.0もコンセプトから実践へと移りつつあるので、エンタープライズ2.0の本来の目的である「組織の進化」をテーマにITがどのような役割を果たしていくかを皆さんと一緒に考えていきたいと思う。

■メール洪水に溺れて

さて新規オープン第一弾は、メール洪水だ。
皆さんは1日何通のメールを読んでいるだろうか?

Radicati Groupの調査によれば平均的ビジネスパーソンは1日に126通のメールを受信しているという。1通のメールを読むのに1分かかるとすると、8時間の労働時間のうち25%をメールに費やしていることになる。そしてこの勢いでメールの量が増えていくと2009年には業務時間の41%(!)をメールの処理に追われることになるだろうとのこと。

日本の一般企業の感覚からすると少々大げさな気がするが、皆さんにも1日数十通のメールが来ていると思う。そのうち多くが全社宛メールやCCでおくられてくる同報メールで、自分が必ずしも読む必要がないものが大半であるに違いない。

多くの時間がメールを読むことにかかっているという非効率はもちろんのこと、メールを読んでいるだけでなんとなく仕事をした気になってしまっているのがメール洪水の恐ろしいところだ。

■市場原理でメールを最適化する「Attent」

そんなメール洪水を市場原理で解決してしまおうという面白いソリューションがSeriosity社の「Attent」だ。このソリューションではメールを送付する時に仮想通貨「Serios」を添付して「送金」できる。読んでもらいたいメールには多額の「Serios」を添付すると忙しいマネージャーでも読んでもらえるというわけだ。これは無制限につけられる「重要!」フラグとは異なり、有限の通貨なので本当に読んでもらいたいメールにしか添付できない。

忙しいマネージャーが部下から来るたくさんのメールの中から本当に読むべきものを「Serios」で優先順位付けしたり、新商品のアイデア出しのブレーンストーミングをメールで行う時に優れたアイデアには多額の「Serios」を送るなどの使い方があるという。

こちらはメールを送る画面。右上にSeriosを添付する機能がある。

こちらがOutlookのメール受信画面。中央にメール毎のSeriosの額が確認できる。

このSeriosity社は、World of WarCraft(WoW)のようなオンラインゲーム内の貨幣経済(WoW内の収入だけで生活を営んでいる人がいる!)に発想を得てこのサービスを開発した。

■市場原理は企業に活用できるか?

正直、実際の業務で使うのはまだまだ厳しそうであるが、市場原理を企業内に持ち込むという着眼点は非常に面白い。

メールの優位点であり同時に問題点なのは、シンプルすぎることだ。メールはそのシンプルさゆえにここまで広まったわけだが、その反面「送り手に絶対的な権限がある」「何通誰に送っても無料」「記載内容が自由で何を書いても良い」など送り手のレベルに完全に依存してしまうという弊害がある。「Attent」はこうした自由なメールの世界にマーケットメカニズムを持ち込むことで、問題を解決しようとしている。

以前、ある商社のIT部門の方がこう言っていたのを思い出す。

 「テレックスは文字数で価格が決まっていたから、みんな必死になって1通1通わかりやすい文章を書いたものだ。メールは無料だから無駄なメールをだらだらと長く書くから困る。」

 このイメージと近いかもしれない。

昨今「Prediction Market(予測市場)」が注目されているが、市場原理の企業内への適応は最先端の研究テーマである。メールに仮想通貨を添付するのも良いが、

  • 社内ポータルに広告枠をもうけ、情報を出したい部署から広告費を取る
  • 社内検索システムの検索結果画面に社内Adwords広告のような形で関連リンクを出して1クリックいくらでチャージする

といった形の方が、今の企業の情報洪水の課題を解決するかもしれない。もしくはリッツカールトンのFirst Class Cardのような「社内ありがとう運動」と連動してありがとうメールにポイントをつけるのも面白いだろう。

情報流通を市場ととらえると、市場に参入するルールは誰が作るのか?市場の番人(日銀や証券取引委員会)は誰がやるか?など発想が広がる。この分野少し深堀してみたい。

 


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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

3件のコメント
  • ありがとうございます

    ueさん、ありがとうございます。作成資料に作成コストを明記するのは是非やってみたいですね。
    MS Officeファイルには作成時間というデータがあるのですが、これをうまく集計して生産性向上に役立てると面白いですね。

    2008年10月26日

  • ue

    続きです
    メールには課金して、公開掲示には課金しないとか

    2008年10月19日

  • ue

    投稿再開歓迎します。
    10月17日のプレス発表を見てやってきました。
    各人のメールのバイト数とアウトプットを指標としても面白いのではとか、
    作成資料(含むメール)に作成コストを明記するなど効率化を促す方法はありそうですね。
    KMは定着させることが命と信じて止みません。
    より一層のご活躍を!!

    コメントウインドウが2行しかありません。
    書き辛いです。

    2008年10月19日

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